トラウマ治療で悪化?!逆効果なカウンセリングスキルとは
幼少期の辛い体験や大人になってから味わった忘れられない辛い経験。
それらがいつまでも頭から離れず、自分の人生に影をおとすことになるのがトラウマ体験ですね。
できることなら、この辛い過去を克服して生きやすい毎日を取り戻したい思いは誰にでもあるかと思います。
ですが、なかなか思うようにもいかず、長年苦しんでいる方は数えきれないほどいらっしゃることでしょう。
トラウマ治療をしたらよけいに悪くなる?!
催眠療法で内面を呼び起こすと・・・
インナーチャイルドの声を聴こうとしたら・・・
怒りを爆発させるセッションを受けたら・・・
有名なカウンセラーのデモセッションは要注意
トラウマセラピーでなによりまず必要なことは
トラウマ治療をしたら症状が悪化?!
世の中にはトラウマのケアに特化したカウンセラーやセラピーやカウンセリングの施術メニューの中でトラウマを扱う療法家もたくさんいます。
心理を扱う資格として、公認心理師という国家資格が誕生しましたが、それまでは臨床心理士が心理の専門家として活躍してきました。
世の中の心理を扱うどの資格も民間資格であり、臨床心理士のように大学院まで通わずとも比較的、短期で取得可能なため、さざざまなカウンセラーが誕生し、活動されています。
取得のための厳しい試験や更新のための研修がないものも多く、それらは心を扱う仕事の質の低下につながってしまいます。
さまざまな心のトラブルの中でも、トラウマは命に直結することもあり、慎重な取り扱いがとても大切になります。
カウンセリングを学んだ延長でセラピストが自己判断してしまい、トラウマを扱ってしまったばっかりに、相談後の方が症状が悪化してしまうことも往々にしてあります。
私自身も過去にそのような失敗の経験があります。
トラウマを扱う施術は大変難しく、体力も根気も必要になります。
そのため、なかには1回のカウンセリングで5万円を請求するカウンセラーも存在し、長期的なケアというよりは、数回の施術により結果を出そうとするために、相談者に無理をさせてしまうケースもあるようです。
世間一般的に、短期間で劇的な変化を起こせるのが腕のある心理療法のように捉えられがちですが、そのようなスタンスでトラウマのケアを行ってしまうことで、以前に増して症状が悪化してしまう事例はとても多くあります。
カウンセリングにおけるよくある失敗事例をご紹介しますので、参考にしていただけたらと思います。
催眠療法で深い部分を扱うと荒れる・・・
催眠療法というのは、テレビなどでタレントを催眠術にかけて好き放題にコントロールといったたぐいのものではなく、(あれはヤラセが多いみたいですね)
自分の潜在意識の部分にアクセスして、本来の気づいていない自身の思いや感情を取り扱うものです。
意識には大きく分けて、顕在意識と潜在意識があるとされます。
顕在意識は普段の生活の中で、意図的に物事を選択して判断する際に使う意識です。
潜在意識は、意図的に思考を使おうとせず、無意識で取捨選択の判断をしているものです。
人間の思考の8割、9割は潜在意識だと言われており、その影響力は絶大ですね。
絶大がゆえに、その手つかずの領域を触ったり、書き換えたりすれば大きな効果や変容が得られるとも考えられていますが、
これらをトラウマケア、とくにケアを始めての初期段階で扱ってしまうのは大変危険です。
相談者さんを催眠状態にして、望ましい行動や意識をインプットすれば大きな変化は生まれるかもしれません。
ですが、そのような劇的な心の施術は、いうならば、メスで身体を切り開く大がかりな外科手術をやるようなものなのです。
これまでなんとか塞いできた心の傷口を、催眠療法で一気に解放してしまうことで、相談者さん自身の感情のコントロールが効かなくなってしまう危険性があります。
良くするつもりでやったことが、結果的に辛い体験までも呼び起こしてしまい、再体験してしまうことにもなってしまいます。
また、自分の内面にある、さまざまなパーツ(さまざまな人格)にとっては脅威であり、大きな抵抗を生み出してしまいます。
催眠療法が一概に悪いというのではなく、効果が出すぎることもあるため、トラウマのケア、特に初期段階ではタブー、まず避けたほうがいいということですね。
インナーチャイルドの声を聴こうとしたら・・・
インナーチャイルド・ワークもトラウマのケアに使われることがあります。
心の奥にいる、小さな、幼い自分に問いかけて、癒していくスキルです。
これもまた、セラピストによっては大きな変化を生みますし、セルフケアとして自分で行っても効果が得られることもあります。
私がカウンセリングで扱う、内的家族システム療法(IFS)やパーツ心理学とも通ずる部分があります。
ただ、ここでも慎重に進めていくことがとても大切です。
特にトラウマ経験をされた方には、傷ついたパーツに二度とそのような目にあわさないように、さまざまなパーツ(人格)が守ろうとします。
それは管理的なパーツであったり、過干渉であったり、攻撃的、あえて消極的にするパーツであったり。
いろいろな人格が、傷つきのパーツを囲って守っているイメージです。
ですので、いきなりやってきたセラピストがそれらのパーツを差し置いて、直接傷ついたチャイルドに会おうとしても大きな反発を生んでしまいます。
また仮に会えたとしても、その際の超慎重な対応ができなければ、さらに傷つきチャイルドを絶望させ、より深い部分に沈んでいってしまうことになります。
そうならないために、時間をかけて慎重に、じっくりと周りのパーツたちとも関係性を築き、安心・安全な場所を確保できるようになってから、傷ついたチャイルドと関わりをもつことができます。
そのような丁寧な段階を踏まずに、ずけずけといってしまうのが世にはびこるインナーチャイルドセラピーであり、結果どうなってしまうのかは想像がつくかと思います。
怒りを爆発させるセッションを受けたら・・・
カウンセリングのスキルでもよく使われている技法です。
ですが、症状の重い方、トラウマ症状のある方に対しては初期段階では使うことはありません。
なぜなら、ダメージが大きく、再体験させてしまうからです。
怒りを爆発させるセッションの内容としては、
過去の辛い経験をした時期に戻り、その相手をぶっ飛ばすイメージをしたり、実際に大きな声で罵ったり、クッションをぶん殴ったりします。
その当時、力で押さえつけられたために生物的反応として、できなかったことを再体験、再学習するというスキルです。
これは脳の単純な構造を利用するのですが、脳は実際に起きていることと、フィクションの違いを厳密には判断できていないと考えられています。
なので、脳の記憶を書き換えるために強烈な印象を与えたり、何度も繰り返し行うことで脳が今起こっていることがあたかも実際に起こっていることであると勘違い、再認識してくれるようになり、それを狙った心理療法なのです。
実際に体験すると、とてもすっきりした気持ちになることがあります。
比較的、心の健康度が高い方にとっては効果が得られるかもしれませんが、トラウマのケアが進んでいない方にとっては、このような行為自体が負担が大きくなります。
また当時のことや登場人物をイメージすることで、再体験したり嫌な体験を思い出すことに繋がってしまうリスクがあります。
過去を想起することは、トラウマの再体験につながるというリスクがあるということを、カウンセラーも肝に銘じておかなければいけません。
有名なカウンセラーのデモセッションは要注意
世の中にはカリスマカウンセラー、カリスマセラピストと呼ばれる方がセミナーなどをしてカウンセラーを養成したりトレーニングしたりしています。
私も昔、4日で25万円のカウンセリングのセミナーに通ったことがあります。
その当時は目を輝かせながら、学んでるー!!て感じで充実していましたが、振り返れば、あれも一つのビジネスだったんだなと思います。
このようなセミナーには、これからカウンセラーを目指す方や現役の臨床心理士さんなども参加されるのですが、
そこで行われる講師による公開デモセッションが意外にも多くの害を生み出していることはあまり知られていないかもしれません。
このような場での公開デモセッションはとにかく、盛大で華やか。
劇的な変化を生み出して、セッションの最後にはクライアント役の方も、会場のセラピストたちも感動で涙することがよくあります。
一種の見世物ですね。
この公開デモセッションの際に、ある程度大げさにやって、セッションの後も見違えるような変化を生み出さないと、その場は盛り上がらないし、なんだかよくわからずに終わってしまったということになってしまいますよね。
なので、結構強めの、それこそトラウマを抱えた方に絶対にやってはいけないようなスキルを使ってカウンセリングを行います。
ここで問題なのが、そのセッションをみたセラピストやカウンセラーはその内容がスタンダードだと勘違いしてしまい、実際の現場でもクライアントさん相手に同じように行ってしまうことなんですよね。
私がトラウマを扱うカウンセリングを本格的に学び始めてから、一番の衝撃だったのは、なにより地味なセッションが大事ということでした。
これまでは真逆の価値観でクライアントさんにカウンセリングを提供してきましたが、とにかく地味に、丁寧にゆっくりと行うことが何よりも大切だということでした。
そんな超重要だけど、基本的なことも世の中ではあまり認知されていないのだろうと思います。
ですから、トラウマカウンセリングを受けて、以前よりも症状が悪化してしまう事例が後を絶たないのだと考えられます。
トラウマセラピーでなによりまず必要なことは
ここまでトラウマカウンセリングによって症状が悪化してしまう心理療法などについて述べてきました。
では、トラウマ治療にはなす術はないのか?といえば当然そんなことはありません。
トラウマ体験を抱えていたとしても、諦めずじっくり時間をかけて丁寧にケアしていけば、心の傷はいずれ癒えるときがきます。
そして、そのためにはまず大切なことはカウンセリングにおいて無理をしないこと。
そしてすぐに変わろう、変えようとしないこと。
これらが大前提です。
そしてトラウマケアで重要になるのは、安心安全の環境の確保であり、リソース(資源)の構築です。
安心安全もリソースに含まれる要素として考えてもよいかと思いますが、簡単に言いますと、リソースとは自分を守ってくれるすべての要素と理解してもよいですね。
苦しみの中で今日までなんとか生き抜いてきた、これもリソースですし、好きなペットに触れると心が落ち着く、これもまたリソースになります。
トラウマ体験により苦しい状態にあると、意識が過覚醒状態で攻撃的になったり、無力感を味わったり、何もできない状態に苦しんだりすることもあります。
その際に、自身の意識を落ち着ける方法であったり、再構築した自己肯定感を味わったり、自分でもこんなことができる!と感じることであったりと、
絶望感の中から自分を引き上げてくれる要素を一つ一つ積み上げていき、本当に心から安全な場所を構築していく、それがトラウマケアにおいての基本であり最重要ポイントになります。
この作業は地味であり、劇的な変化も生みませんが、相談者さんへの負担も少なく、長い目でみれば確実なケアなのです。
ですので、もしトラウマで苦しんでいる方でサポートを受けようか考えてらっしゃるのであれば、これらのことを気をつけていただけたらと思います。
そして、焦らず、じっくり癒していくことで、自身の望む結果は得られるでしょう。
あなたにとってより良い選択をされることを心から祈っています!
最後まで読んでくださりありがとうございました。