授乳の苦労から生まれた、お母さん発の哺乳瓶クッション

Photo by MARIA

台形のクッションに哺乳瓶を固定して使う、ハンズフリーの哺乳瓶用クッション「NEWママ代行ミルク屋さん」をご存じだろうか。授乳をサポートするアイテムで、2005年の発売以来、合計2万個以上を売り上げているロングセラー商品だ。

一見シンプルなつくりだが、さまざまな工夫が施されている。哺乳瓶を支える部分にある滑り止めは、長さや形、太さ、素材にかかわらずどのメーカーの哺乳瓶でも固定することができる。クッションの中身は軽くて触り心地のいいビーズ素材で、変形させることで、赤ちゃんの口元にフィットさせられる。

タオルを重ねて

「NEWママ代行ミルク屋さん」を作ったのは、2人の子どものお母さんである大杉千里さん(46)。長男を産んだとき授乳に苦労した経験が、商品を生み出すヒントになった。

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「少しずつしかミルクを飲めない子で、1回の授乳にかかる時間が30分以上。手や腰が痛くなってくるんです」(大杉さん)。そんな状況をどうにかしなければと、大杉さんはタオルを何枚も重ねてその上に哺乳瓶を置いてミルクを飲ませていたそうだ。

同じように苦労しているお母さんがたくさんいることを知った大杉さんは、自分がタオルでサポートしていたようなアイテムを商品化できたら、と考え付く。「タオルを使うより安定した土台ができないだろうか」と試行錯誤した。

大杉さんの行動力はここから本領を発揮する。工場をいくつか選んで試作品を作ってもらい、いちばんていねいなものづくりをしてくれた会社を選んだ。自分の思いを伝えたところ、「予算が少なく数が限られていても作る」と社長が太鼓判を押してくれたそうだ。

土台の「台形」は事務用品のクリップにヒントを得たという

土台を形作るビーズ素材は、スーパーの寝具コーナーで“発見”した。「とても軽くかつ細かなビーズが流れるように動く。さまざまなサイズのほ乳瓶を支えられると確信しました」(大杉さん)。工場からは、哺乳瓶を固定するための滑り止めに、「赤ちゃん用靴下の裏に使われているアクリル樹脂を使っては」とアドバイスをもらった。

ようやく完成したアイテムだったが、使ってくれるお母さんたちの声を聞いては改良を重ねたという。「特に悩まされたのは、『プラスチックや短い哺乳瓶が滑ってしまう』という声」(大杉さん)。哺乳瓶が触れる部分の生地を二重にして解決したが、このシンプルな改良に辿り着くまで10年かかったそうだ。

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この商品が世に出て10年経つが、今でも月に約200個のペースで売れ続けている。一度に2~3個注文する人や、追加で注文する人も多い。半数近くが、双子や三つ子、もしくは年子など年齢の近いお子さんを育てるお母さんだ。

年子のきょうだいを育てるお母さんから「上の子が動き回って目を離せないときでも、下の子にミルクをあげられて重宝している」と感謝されたこともある。

“背中スイッチ”をオフにする?

そんな大杉さんは、11年にまた一つ、画期的な子育てグッズを世に送り出した。それは、「おやすみたまご」という名のベビーベッド。「いわゆる、“背中スイッチ”が入るという状態をどうにかしたかった」(大杉さん)。

大杉さんが着目したのは赤ちゃんの背中の形。「お母さんの胎内にいたときは背中が丸くなっている状態。赤ちゃんにとってはいちばん気持ちいい姿勢なんです」と、大杉さん。

哺乳瓶クッションと同様、ベッドの素材もビーズクッション。赤ちゃんの背中が「Cカーブ」を描いて丸くなるよう工夫した。前回お世話になった工場に相談し、素材選びから試作品作りまで、使い心地を検証しながら完成させたそうだ。

「おやすみたまご」。大学病院や助産院、保育所などでも使われている

赤ちゃんの深く長い眠りを実現できるというメリットもあり、おやすみたまごは大ヒット。16年には約5000個売れた。現在も月500個以上のペースで売れている。

現在、大杉さんは第三弾となる商品を企画している。「ミルクを飲まなくなった後も、『NEWママ代行ミルク屋さん』をおもちゃとして使う赤ちゃんが多いのです。握ったり、抱いたりできるような新生児用のビーズおもちゃがあればいいな、と」(大杉さん)。

自分の子育ての苦労から商品を開発してきた大杉さんは「子育てで気持ちがいっぱいになってお母さんがイライラすると子どもが不安になる。心と体に余裕をもって育児を楽しんでもらいたい」と話す。母ならではのアイデア商品を生んだ大杉さんのバイタリティから気づかされることはとても多い。

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