インスタ映えする「牛乳瓶」のステンレスボトル

温かさや冷たさが持続するステンレスボトルは、一度使ってみると手放せなくなる。職場やオフィスのほか、スポーツやレジャー、アウトドアのシーンでも役立つ。子どもをもつお母さんは、赤ちゃんとお出かけするときに粉ミルク用のお湯を入れたり、公園に持って行ったりという人も多いのではないだろうか。

マイボトルに飲み物を入れてくれるコーヒーショップが増えたこともあり、ステンレスボトルの出荷台数は年々増えている。2015年には前年比約20%増の2300万本が売れ、5年前に比べると2倍以上の売れ行き。

お出かけには欠かせない存在

この市場を牽引してきたのがサーモスと象印の2大メーカーで、どちらもよく見掛けると思う。そんな中、2015年に現れた、ドウシシャのステンレスボトル「mosh!」シリーズがいま20~30代の女性に人気。牛乳瓶の形をしたカラフルなステンレスボトルだ。

ハッシュタグで拡散

人気の発端となったのは、インスタグラムなどのSNS。女性の心をわしづかみにするキュートなデザインと全11色という豊富なカラーバリエーションに加え、「一見、牛乳瓶だけど、実はステンレスボトル」という意外性も注目され、「#牛乳瓶」「#かわいい」「#レトロ」「#懐かしい」などのハッシュタグで拡散された。

一般的に30万本で大ヒットと言われるステンレスボトル市場において、発売からわずか2年で、シリーズ累計80万本を売り上げ、その勢いは衰えを知らない。SNSを通じて若い女性から火がつき、いまでは、日本のみならず韓国、台湾、香港、シンガポール、イスラエルなど海外でも人気上昇中だ。

「mosh!」は全14色、350mlと450mlの2タイプがある。女性に特に人気なのは350mlのアイボリーやピーチカラー

「正直こんなにも売れるとは思っていませんでした」と話すのは、「mosh!」を企画・販売するドウシシャの青木響さん。「mosh!」はドウシシャがこれまでに企画したステンレスボトルの中でも「断トツの売れ行き」だそうだ。

ドウシシャは、かき氷機など生活関連用品の幅広い分野でユニークなビジネス展開を行っている会社。合言葉は、「ニッチな市場でシェアNo.1を取る」。ステンレスボトル市場に乗り出したのは08年。日本で一番軽い軽量型ボトル「ふわふわAir」を販売し、これまでに累計1000万本を売り上げた。

誰もが懐かしく感じるデザイン

そのノウハウをもって、ファッション感覚で持てる見栄えのいいデザインボトルとして開発したのが「mosh!」だ。

きっかけは開発担当者の「人差し指と中指で引っかけて持ち歩けるボトル」という提案。それを、社内デザイナーの増田郁美さんが「牛乳瓶」の形で表現した。「誰もが懐かしく感じ共感を得られるものは何だろうかと考えたときに、給食に出てくる牛乳瓶を思い付いたのです」(増田さん)。

丸みのある形状を出すのが難しかったという

ただ、牛乳瓶の形を忠実に再現するのは困難を極めたという。よくあるステンレスボトルの底は加工のしやすさからL字型に角張っている。牛乳瓶は丸みがあり、そこにかわいらしさがあるのだが加工が難しい。「工場と11回もやり取りし、ようやく従来とは違うところを溶接することで丸みを帯びた今の形が実現しました」(青木さん)

キャップはデザイン性を重視し、ボトルと同じようにステンレス素材に。キャップの中には断熱材を埋め込む必要があったが、平たく丸い形状だったのでこれも難しかったという。一時はあきらめて四角いフタにすることも考えたそうだが、苦労の末に完成した。

デザインを追求したら機能もよくなった

徹底的にデザイン性を貫いた「mosh!」は、見た目だけでなく「機能面でもうれしい誤算があった」と青木さんは話す。

まず、保温効果。牛乳瓶の形状を再現するにあたり、飲み口を狭くしたため、熱が逃げにくくなった。「一般的なステンレスボトルよりも1~2度保温効力が高い」(青木さん)。

ボトルのカラーは普通だと1~2回塗るだけだが、「mosh!」では3回も色を重ねている。「牛乳瓶のかわいらしさを表現するために、陶器っぽい質感にしたかったのです」(青木さん)。色の塗り重ねも耐久性の強化につながり、誤って落としてもボトルに傷がつきにくくなった。

コルク瓶をイメージした「mosh!ボトル コルク」

17年8月には、落ち着いた雰囲気の木目柄や、コルク瓶をイメージしたキャップの新作を発売した。「これからも、『あっと驚く』デザインボトルを提案していきたい」と青木さん。

インスタとも相性がいい、デザインボトルという新市場。そこでトップを目指すドウシシャの挑戦は始まったばかりだ。

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