いざという時に役立つ“防災ピクニック”って?

公園に集まるのは、背中にリュックを背負った子どもたちとお母さんたち。芝生の上にシートを広げて、何やらわいわい楽しそうだ。友達同士で集まって仲良くピクニック…と思いきや、どうやらただのピクニックではないらしい。

「公園遊びを“防災仕様”にアレンジしたアクティビティ、防災ピクニックです」と、NPO法人・ママプラグの代表・冨川万美さん。

冨川さんらが母親の目線から考える防災の一つとして提案しているのが、この防災ピクニックだ。子どもと一緒に避難ルートを歩いて避難所を確認し、お弁当には非常食を食べてみる。実際に携帯トイレで用を足したりスマホ用の充電器を使ってみたりと防災グッズを使う体験を通し、普段の備えがこれでいいのかどうか再確認する。

ママプラグが主催する防災イベントでは、のべ1万2000人以上が防災ピクニックを体験した。「子どもは水がないとカンパンが食べられないとわかったので、栄養補給ゼリーを常備する」「子どもにとってより安全な集合場所を考え直す」など体験者の気づきは多い。

キャンプのように楽しめる

冨川さんらは、東日本大震災で被災したお母さん800人にインタビューをして出会ったある家族のエピソードから、防災ピクニックを思いついたそうだ。

その一家は、アウトドアが趣味の週末キャンパー。被災した際、お父さんは「電気が通るまでみんなでキャンプをしよう!」と言ったのだそう。同じく被災した近所に住むおじいちゃん、おばあちゃんを呼んで一家でキャンプをして過ごした。カセットコンロを使い、冷蔵庫にあったお野菜と肉を使ってみそ汁を作るなどして、避難生活を乗り切ったそうだ。

Photo by MARIA

「何よりすごいと思ったのが、子どもが避難生活を怖がらず、むしろキャンプとして楽しんでいたということ」と冨川さんは話す。彼らにとってキャンプが日常だったからこそかなったのだろう。

その避難ルートは安全?

防災ピクニックいちばんの目的は、「子どもが自分で自分を守れるようにすること」。「被災者に話を聞くと、親子が別々の場所で被災したり離れ離れになったりと親が守り切れないケースもたくさんあったのです」(冨川さん)。

防災ピクニックを親子で体験してみると、普段とはまったく違う景色が見えてくる。自宅から避難所までの道にある錆びた有刺鉄線や放置された自転車……。いつもは頼りになる信号だって電気が通らなければ止まってしまう。「危険な箇所を確認しておくと、いざというときに子ども自身が注意して避難できます」(冨川さん)。

世代の異なる地域の人も巻き込んで防災ピクニックを行うとさらに効果的。「顔見知りが増えるとより災害に強い地域になるし、先祖代々その地域に根差して暮らしているお年寄りは過去の災害事情に詳しいことも。避難ルートや家族との待ち合わせ場所を決める上で大いに役に立ちます」(冨川さん)。

非常食は口に合う?

防災ピクニックに持参してもらう非常袋にも気づきがある。買って満足する人も多いが「必要なものは人それぞれです」と冨川さんは指摘する。

非常食が口に合わない、幼い子の肺活量ではホイッスルを吹けない、防寒用のアルミシートがさほど温かくない、子どもに排尿用のカップを使わせたら手が汚れてしまった――。さまざまな問題が浮き彫りになる。

Photo by MARIA

特に子どもの食事は被災したお母さんにとって深刻な問題だという。「配ってもらった非常食を子どもが食べられなかった」「哺乳瓶を受け付けてくれなかった」という声はとても多いそうだ。「子どもが食べられるレトルト食品を見つけておく、週に一度は哺乳瓶でミルクを飲む習慣を付けるというのも大切な防災対策です」(冨川さん)。

ママプラグが主催するイベントのように大勢で防災ピクニックを行うとより気づきは多いが、個人でも行うことはできる。「家の中は便利すぎるので、電気も水道もない野外で試してみるといい」と冨川さん。この週末は、家族で防災ピクニックをしてみるのもいいかもしれない。

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