遊びながらプログラミングを学べる、イモムシ型ロボット

華やかな光と音とともにイモムシが動く様子に子どもたちの顔がパッと明るくなる。何とも楽しげなこのおもちゃは、実は教育の最先端を行くロボット玩具なのだ。

2020年から小学校で「プログラミング」が必修になる。習ってこなかった親世代の中には、プログラミングという言葉だけで難しく感じる人もいるかもしれない。

親たちのそんな焦る気持ちをケアしてくれる心強い玩具が「プログラミング・ロボ コード・A・ピラー」。2016年秋、3歳から6歳の子どもを対象にマテル社の玩具ブランド、フィッシャープライスが発売した。イモムシ型のロボットで遊びながら「プログラミング的思考力」を身に付けられる、という優れものだ。

角を曲がるにはどう組み合わせる?

「コード・A・ピラーには、頭部のほかに、直進するパーツ、右に曲がるパーツ、左に曲がるパーツが全部で8つ付いている。パーツのつなげ方を工夫することで、自分がイメージしたコースを走らせることができる。

ボディの各パーツはUSBで接続する

「プログラミングには順序立てて物事を考える思考が大切。この玩具で遊びながら論理的な考え方が自然と身に付きます」とマテル社のブランドマネージャー、窪田美穂さんは言う。

中央にソファーがある部屋の隅から隅までロボットを走らせたければ、コースを想定しながらパーツの順序を工夫する。「ソファーの角を曲がるために、直進と右折を組み合わせよう」と考える論理的思考が、プログラミングをする際にも役立つということだ。

欧米の親がロボット玩具を買う理由

小学校に入学する前の子ども向けにプログラミング玩具が開発された背景には、世界的な教育熱の高まりがあった。

フィンランドでは昨2016年からプログラミングが授業化されているそう。「コード・A・ピラー」が生まれたアメリカでも、数年前にオバマ前大統領がプログラミング教育の必要性を訴えたことで親たちの関心が高まっているのだという。「IT人材の育成は世界共通の課題です。こうしたトレンドが、商品開発につながりました」(窪田さん)。

コード・A・ピラーの受け皿になっているのが親の教育意識の高まり。科学・技術・工学・数学の教育領域を示すSTEMをキーワードに、幼いうちから理系脳を育もうと考える人が増えているそうだ。欧米では、STEM教育に関心の高い親が「コード・A・ピラー」を購入し、着実な売れ行きだという。

プログラミング熱は日本でも高まりつつあるが… Photo by Koichi Imai

日本でもSTEMは教育業界の大きな関心事だ。ただ、「コード・A・ピラー」については、まだ親に魅力を十分理解してもらえていないという。「日本は欧米と比べて『どういう玩具が子供にとっていいか』という知育面からおもちゃを選ぶ人が少ない傾向があります」と窪田さんは分析する。

日本の玩具市場は、キャラクター商品が強い。キャラクターのイラストに親近感を感じる親子が多いのだという。知育玩具で好まれるのは、英語学習など言語に関するおもちゃが多い。「親たちの英語コンプレックスの裏返しかもしれません」(窪田さん)。

マテル社では年に3500人の子供が商品に触れる様子を観察して商品開発を進めている

STEM玩具や知育玩具にもっと伸びしろがある――。そう考えていた窪田さんらの思いを後押しするように、昨年からAmazonが独自に「知育・玩具大賞」をスタートした。STEMや知育玩具にフォーカスし、良質なおもちゃを選定するというもの。コード・A・ピラーは昨年、プログラミング的思考を直観的に学べること、おもちゃとして魅力的なデザインであることが評価され、特別賞を受賞した。

思考力養成を台無しにする親の行動とは…

マテル社は今、売り場や商業施設を地道に回る「草の根運動」を行なっている。より多くの親子にコード・A・ピラーのよさを伝えるには、商品を実際手にとって遊んでもらうのがいちばん。「子どもたちを観察すると、男女の差なく集中して遊んでいます。ゴールに向けてどうやってイモムシを走らせるかを一生懸命考えている様子がうかがえます」(窪田さん)。

子どもたちの姿を見て気付いたのが、「親の口出し」だそう。「商品の目的は、正確に走らせることではなくて、子供の思考を養うということ。親が口や手を出してしまったら何にもならないんです」と窪田さん。

親は口や手を出さず、声を掛けるようにして

ただし、遊びを膨らませる上で、ヒントを与えるのは大事。「ここを進むには右に曲がる? 左に曲がる?」「次は2回曲がって戻ってこようね」など、課題を与えるような声掛けが遊びをどんどん膨らませ、プログラミングの仕組みを体感することにもつながる。

世界中で育つ“プログラマー”の卵たち。日本の子どもが出遅れないためには、親の成長も必要になりそうだ。

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