“服から服を作る”リサイクルはこうして生まれた


ある日の昼下がり。無印良品のとある店舗のカウンターに、袋を持った女性がやってきた。袋の中身は、洋服やタオル、シーツなど、使い古した無印良品の衣料品だ。

無印良品では、店舗で集めた衣料品のうち、まだ着られるものは色を染め直して一部の店舗で再販売している。再利用が難しいものは、衣料品のリサイクル活動「BRINGプロジェクト」(以下、BRING)に送る。

無印良品の店舗では服を通年回収している

日本では、使われなくなった衣料品が毎年100万トン以上廃棄され、その9割が焼却・埋め立てされている。BRINGは衣料品を回収し、新たな資源として再生しようという取り組み。BRINGを運営する日本環境設計は、こうしたリサイクルプロジェクトを2010年頃から実施している。

途上国に服が山積み

衣料品のリサイクルといえば、発展途上国に送るリユース目的のものが多い。「リニア(直線的)エコノミー」と呼ばれるこのリサイクルが、いま問題になっている。

「安く手軽なファストファッションの台頭によって服を買い替える人が多くなり、発展途上国では服が山積みになっているのです」(日本環境設計の沖田愛子さん)。残念なことに、再利用することが難しい衣料品もたくさん集まっているというのだ。

BRINGが目指すのは、「サーキュラー(循環型)エコノミー」と呼ばれる循環型リサイクル。これまでも、使い道のない服をバイオエタノールなどの燃料として再生してきたが、まもなく“服から服を作る”という循環型の取り組みをスタートさせる。

ポリエステルだけを取り出す技術

“服から服を作る”の種明かしはこうだ。衣料品のおよそ6割に使われているというポリエステル繊維を特殊な技術によって溶かしだし、不純物を取り除くことで、無色透明のポリエステル樹脂を製造する。このポリエステル樹脂が糸や生地となることで、新たに服として生まれ変わるというわけだ。

回収した服から、再度服の原料を作り出す

この技術は、石油由来のポリエステルと変わらない品質の「再生ポリエステル」を生産できるという点でとても画期的。特に「不純物を取り除く」ための技術開発には何年もかけたそうだ。

「衣料品にはポリエステルだけでなく、綿などさまざまな繊維が含まれています。不純物が含まれたままだと、新品の服を作るのに支障が出てしまうのです」(沖田さん)。ファスナーなど付属品の付いた服、さまざまな素材の服をまとめてリサイクルすることができるようになった。

リサイクルをワクワクに変える

BRINGは、「楽しくリサイクルすること」を目指している。

「リサイクル活動というと、どうしても“面倒”と考える人が多い」と沖田さん。「“リサイクルが当たり前”の社会になるには、活動そのものが楽しくあるべき」。だからこそ、進んでリサイクルをしたくなるようなエンターテイメント性を含んだ仕掛けをつねに考えている。

15年には服から再生したバイオエタノール燃料を使って、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で描かれた車「デロリアン」を走らせるプロジェクトを仕掛けた。プロジェクトを実施した3カ月間で、1年分にあたる衣料品が集まったそうだ。

リサイクルして再生した燃料で「デロリアン」を走らせた

それからサッカーの競技場に回収箱を設置し、回収した服からユニフォームやレプリカを作るといった試みも検討している。確かに、自分の服からできたユニフォームを選手が着てくれるかもしれないと思ったらリサイクルしたくなりそうだ。

冒頭の無印良品に加え、チャイハネなどアパレルブランドや百貨店、さらには自動車から食材宅配まで、さまざまな業種の会社がBRINGに参加し、2000箇所で服を回収している。

再生ポリエステルを作る工場は、年内にも福岡県の響灘(ひびきなだ)で稼働する。目下、新工場で生まれた糸を使って、どんな企業とどんな商品を“コラボ”するか企画しているところ。

建設中の響灘工場。年内に稼働する

新工場でリサイクルできる服の総量は年間およそ1200トンと、日本で捨てられる衣料品の1/800ほど。割合としては低いけれど、まずはここから循環型エコノミーを始めようとしている。

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