テーマパークに高速道路、待ち時間を簡単に予測するには

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観光地にテーマパーク、人気の飲食店に高速道路。夏休みともなると、出掛けた先々でそこにできる長い人の列にうんざりすることも多い。

並ぶ人の数が3~4人ならなんとか待てる。それは、だいたいの待ち時間を即座に計算できるからだ。一方で、テーマパークなどで長い行列ができているときに、待ち時間の推定をする方法はあるのだろうか。

将来を予測する

「ある法則を使えば行列の分析は可能ですよ」

こう教えてくれたのは、ニッセイ基礎研究所の主任研究員・篠原拓也さんだ。篠原さんはもともと生命保険会社のアクチュアリー。アクチュアリーとは、「確率・統計などの手法を用いて不確定な事象を扱う数理のプロフェッショナル」のことだ。

生命保険であれば、将来のリスクを予測して死亡率や病気の発生率を解析し、一定の保険料などを算出・評価するのがアクチュアリーの仕事。「リスク管理には将来を予測することが欠かせません。行列の分析も有名な予測手法の一つ、『リトルの法則』を使ってできるんです」(篠原さん)。

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リトルの法則とは、米マサチューセッツ工科大学のジョン・リトル教授が、ケース・ウェスタン・リザーブ大学に勤務していたときに初めて発表したもの。今から50年以上も前のことだ。

この法則では、まず自分の前に何人の人が並んでいるかを見積もる。そして、自分が行列に並んでから1分間に何人が自分の後ろに並んだかを数えてみる。自分の前に並んでいる人数を、1分間に自分の後ろに並んだ人数で割ると、それが待ち時間の推定結果だ。

アトラクションの待ち時間

まずは、テーマパークで人気のアトラクションに乗るための行列を考えてみよう。

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アトラクションの前には1列当たり20人の行列が5重につづら折りになっていた。つまり、自分の前には100人が並んでいるということになる。そして、自分が並んでから1分間に、自分の後ろには5人が行列に加わった。この場合、100人を5人で割って、待ち時間は20分と推定できる。

難しくなるかもしれないけれど、数式を用いて表すとこうなる。

1人当たりの待ち時間(分)=X
行列に並んでいる人数=Y
1分間に用を済ませる人数(=1分間に行列に加わる人数)=Z

X=Y/Z

ただし、このリトルの法則を使う際には注意点がある。それは、行列の条件として、1分間に用を済ませる人数と行列に加わる人数が同じでなければならないということ。つまり、行列の長さがつねに一定でないとこの法則は当てはめられない。

事故を防ぐためにも

リトルの法則は、実は社会のさまざまな場面で応用されている。

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たとえば、米ボストンの高速道路の料金所。ここでは、ゲートの数をいくつ開けるかを決めるのにリトルの法則が使われている。料金所の渋滞を予防すれば、ドライバーのイライラが抑えられて事故も防げる。

この料金所では、毎秒1台の自動車が新たに行列に加わると考えて、各ゲートの前に並ぶ自動車を20台以内にとどめるようにしていた。20台を超えそうになると、新たにゲートを開ける。ドライバーの待ち時間は最大でも20秒に抑えられる。

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また、ある米ファストフードチェーンでは、店舗間の販売効率を比較するために使われていた。

A店は12人の客が並んでいて、1人の待ち時間は3分だった。B店は10人の客が並んでいて、1人の待ち時間は2分だった。このとき、A店では1分間に4人の客が行列に加わり、B店では1分間に5人の客が行列に加わっていることになる。

行列の長さだけを見ると、A店のほうが多くの客がいるように見えるけれど、販売効率を考えてみるとB店のほうがより多くの客に販売できているということになる。

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分野が異なるけれど、行列に見立てればこんな例にもリトルの法則は使える。

メールの返信に何日?

Cさんは毎日50通のeメールを受け取っているとする(そのすべてに返信しなければいけない)。返信を済ませるとそれは自動的に「受信ボックス」から「送信済みボックス」に移動するが、彼女の受信ボックスにはつねに150通のメールがたまっている。Cさんは1通のメールに返信するまでに何日かかっているのだろうか。

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この例では、返信という処理がされるまでメールが行列に並んで待っていると見立てればわかりやすい。

X=返信されるまでの待ち時間
Y=受信ボックスで順番待ちをしているメールの数
Z=1日に返信されるメールの数(=1日に受け取るメールの数)

前出の数式「X=Y/Z」に当てはめると、X=3。つまりCさんは1通のメールの返信に3日かかっていると計算できるというわけだ。

長い行列に並んで待たされるのは苦痛なことだけれど、こんなふうに頭を使っていると、長い待ち時間もあっという間に過ぎていくかもしれない。

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