知られざる「ル・クルーゼ」の秘密


「ル・クルーゼ」の鍋に憧れ続けている。料理がおいしくできそうだし、何より色がかわいい。けれど、「1個あたり2~3万円から」という値段が気になって、なかなか購入に踏み切れずにいた。近所の直営店の前を通ると、シーズンごとに新商品が出て、いつもお客さんを惹きつけている。鋳物にエナメル加工を施した鋳物ホーロー鍋は他社ブランドからも多く出ているが、なぜル・クルーゼは売れ続けているのだろう。

フランスの小さな村から

ル・クルーゼは1925年、北フランスの小さな村で誕生したブランド。創業者の2人は「鋳物」と「ホーロー加工」のスペシャリストで、それぞれの分野の技術を発揮しながら、ずっと自社で開発・製造してきた。

かつての工場内部の様子

「すべての鍋が今もこの村で作られていることは、意外に知られていないのです」と、ル・クルーゼ ジャポンの堀内亜矢子さん。ほかの国で作る方がコストは抑えられるが、90年以上続いてきた技や思いを伝承していくには、この村で作る以外の方法が考えつかないのだという。

ル・クルーゼが日本へ進出したのは91年。カラフルな鋳物ホーロー鍋は目新しく、すぐに話題となった。高品質な鍋としてのイメージが定着し、その後も多くの人にとって憧れのブランドとなっていく。

「カトレア」は日本発

現在、ル・クルーゼは世界70か国以上で展開しているが、日本での販売額はアメリカに次いで世界2位。日本で企画・開発した商品が、海外で人気を呼ぶこともある。

カラーバリエーションの豊富さには秘密があった。フランスの本社にはカラーラボがあり、専門の研究者が日々、色の改良を重ねている。定番の7色に加え、シーズンごとに新色を投入。日本からも年に数回、商品開発担当者が新しい色の開発依頼をする。今年2月から期間限定で発売した「フラワーコレクション」では、ティーポットなどのストーンウェアに日本発の新色「カトレア」が登場した。

日本発の新色、「カトレア」

カラフルな色に加え、ブラックも人気がある。12年に男性に向けて発売したブラックだが、シンプルを好む女性からも注目されるように。アウトドアブームもあり、屋外で使うニーズも高まっている。

科学的な実証も

創業当時から作り続けている鍋「ココット・ロンド」は一見、変わらない定番商品だが、実は改良に改良が重ねられているという。

昨年8月に発売したシグニチャーモデルは、持ち手を従来品より45%大きく設計し、持ちあげやすいつくりに改良。エナメル加工もより高品質にして、耐久性を高めた。熱伝導や保温性などは従来と変わりないものの、側面は3㎜と極限まで薄いため、重さは直径22cmで重さ3.7kgと「鋳物ホーロー鍋としては軽いほう」(堀内さん)。奇抜なデザインチェンジで惹きつけるのではなく、より使いやすくなるよう、地道なモデルチェンジをしている。

ル・クルーゼの工場

ル・クルーゼの鍋なら、おいしく料理ができそうだ、とは多くの人がイメージとして持っている。しかし、なぜそうなのか、という明確な理由を知る人は少ないだろう。他社ブランドの鋳物ホーロー鍋と比較されることも多くなり、「デザインや色のバリエーションの豊富さだけでなく、機能や性能面でのメリットを知ってもらいたい」と堀内さんは話す。

たとえばドーム型のフタには、3カ所に蒸気を逃がす「スチームポイント」があるが、そのおかげで食材の雑味を外に逃がし、うまみを閉じ込めているのだという。ル・クルーゼの鍋を使えば、蒸し煮した野菜の甘みが引き出されることを科学的に実証し、15年からは特設サイトでのPRを始めた。

カラフルな鍋×カラフルなカレー

ル・クルーゼの商品は鋳物ホーロー鍋だけでなく、食器や調理道具など多岐にわたる。この7月からは初めて、特定の料理にターゲットを絞った企画を始める。第1弾はカレーだ。「カラフルな鍋で、野菜たっぷりのグリーンカレー、イエローカレーなどカラフルなカレーを作る楽しみを提案したい」(堀内さん)。

グリーンカレー×グリーンの鍋

昨年は「百年鍋」というコンセプトで、世代を超えて使い続けられる鍋であることを明確に打ち出したル・クルーゼ。長く愛されてきたキッチンウェアブランドによる、美しく機能性に優れた鍋なら、娘にも、孫にも譲っていけるかもしれない―。そう考えれば、決して高い買い物ではない気がした。

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