大人気リュック「anello」、そのヒットの裏側


大きな口金(くちがね)ファスナーと、四角くぽってりした後ろ姿が印象的な「anello(アネロ)」のリュック。街を歩けば、背負っている人を何人も見かける。持ち主の顔ぶれは、若い学生から子連れのお母さん、外国人観光客まで幅広い。

「発売前から、社内の声やバイヤーさんの反応を聞いて『これはイケる!』という手応えがありました」と話してくれたのは、anelloを製造・販売するキャロットカンパニーの新(しん)富美子さん。

口金リュックが世に出たのは2014年11月。店頭に並ぶと即座に完売した。

1商品が年間1万個売れればヒットだったという同社において、口金リュックは、1つの品番だけで月に10万個を売り上げるほどのヒットとなった。発売から2年半での累計売り上げは423万個に上る。

お母さんと外国人が引き金

もともとanelloは、05年に始まった、ユニセックス向けのカジュアルブランド。イタリア語で「アネロ=年輪」の意で、「少しずつ年輪を重ね、よりよいものを生み出していきたい」という思いが込められている。使いやすさにとことんこだわり、流行や性別、年齢にとらわれないものづくりを目指してきた。

口金リュックは、大きくガバッと開く使い勝手のよさと、自立するその形状が特長。加えて、余計な装飾のないシンプルなデザイン、豊富なカラーバリエーション、4000円台という値頃感、610g(ポリエステルキャンバス地)という軽さもユーザーに受けている。こうした商品の魅力のほかにも、ターニングポイントが重なったことがヒットの大きな要因だという。

大きかったのは、anelloがもともとターゲットに見込んでいた20代以外に売れたこと。小さな子どもを持つお母さんと訪日外国人たちだ。

お母さんたちにマザーズバッグとして使ってもらえたのは、うれしい想定外だった。マザーズバッグといえばトート型が主流だったが、anelloの口金リュックは発売当初から、30代のお母さんたちにマザーズバッグの代わりとして売れた。

リュックは両手が空くし、クッションの入った肩ひもから両肩に重さが分散されるので肩こりにもなりづらい。もともとマザーズバックとして作っていたわけではなかったが、使いやすさがドンピシャでハマり、瞬く間にネットのレビューや口コミで広がった。

キャロットカンパニーも、こうしたお母さんたちの声を受けて、発売から1年足らずで背中側から取り出せるようにファスナーをつけるなど、価格を据え置いたままでマイナーチェンジをした。こうした工夫も奏功してさらに口コミが増えていった。

想定外だったもう一つの新しい顧客は、訪日外国人客。15年は「爆買い」が流行語大賞に輝き、訪日外国人数が初めて2000万人に手が届くかどうかが話題になった年。

「日本でデザインされてヒットしている日本ブランドを日本で買って帰る、というのが彼らのステータス」(新さん)

香港と台湾で火がついた後、シンガポールやタイ、マレーシア、インドネシアなどの東南アジアの国々へとブームが広がっていった。

卸売りだからこそのノウハウ

ヒットの流れを大きな波に変えられたのは、1988年の創業以来築いてきたノウハウによるところも大きい。

もともとキャロットカンパニーは卸売業が中心で、anello立ち上げ当初の05年から毎年欠かさずバイヤー向けに展示会を年7〜8回行い、毎回20〜30型の新商品を出していた。

口金リュックは、別ブランドで評判のよかった口金ファスナー付きポーチをヒントに、展示会に出した商品だった。「取引先から『店頭に1~2カ月も同じ型を置いておけない』と言われるので、卸売業は次々に新しい商品を出していく必要がある」(新さん)。

展開の速さが口金リュックでも役に立った。発売当初は定番のポリエステルキャンバス地(通称ポリキャン)だけだったが、素材やサイズを次々に発売し、今や30種類以上の製品がある。色もポリキャンだけでも30色以上を展開し、ユーザーの好みに柔軟に応えている。

14年当初の社員が40人強だったこともあり、社内の意思疎通や決定はとても早かった。中国の製造会社や国内流通の会社とは長年の付き合いがあり、口金リュックの流行にすぐに対応してくれた。

海外ではリアル店舗も

卸売業がメインのキャロットカンパニーは、直営ショップがない。「お目当ての口金リュックがどこで手に入るかわからない」という問い合わせがきても、取扱店舗や企業を紹介するしかないのが心苦しかったという。ユーザーの声に対応するため、国内では16年7月にオンランインショップを開設した。

「出店の要望が多い」(新さん)という海外では、タイに31のオフィシャルショップを構え、6月にはフィリピンでも1号店がオープンさせた。

ユーザーや取引先の声によく耳を傾け、フィットする商品を作ってきたanello。年輪を重ねながら、これからどのような展開をみせてくれるか楽しみだ。

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