赤字のサービスが“快眠枕”を大ヒットさせた

Photo by MARIA

蒸し暑い季節がやって来た。「何だか夜は寝苦しい」という人も増えてきたかもしれないけれど、睡眠不足になれば健康に悪い影響があるのは間違いない。

健康志向の高まりもあって、ここ十数年で枕のトレンドが変わってきているそうだ。まくら株式会社の代表、河元智行さんは「ひと昔前、枕の平均単価は2000~3000円が主流だったが、今は6000円~1万円と3倍になった」と話す。平均単価2万5000円と高額のオーダーメード枕市場も年々拡大しているという。

枕を企画開発するまくら株式会社の売り上げも好調で、売り上げは前年より3億円も多い10億円に届きそう。扱っている400種類の枕のうち1割に当たるオリジナル商品が、売り上げの半分を占める。

ユーザーの6割が30代の女性で、「睡眠の質を高めたい」「大切な人に快眠をプレゼントしたい」といった理由から枕を買いに来る。商品の多くは20~60日以内であれば使っていても返品や交換ができて安心だ。

自宅の慣れた寝具で“試し寝”

ユーザーの人気を集めるのが、枕のレンタルサービス。自分に合いそうな枕を1000円+片道送料で試せるサービスだ。レンタルの対象となる枕は50種類ある。

Photo by MARIA

「枕が合うかどうかは、いつも寝ている環境で“試し寝”してみないとわからない」と河元さん。会社を立ち上げる前、河元さんは当時話題だった低反発枕を買ったことがある。さぞ寝心地がいいだろうと期待したものの、首は痛く寝付けなかった。枕にはまった河元さんは7~8個を立て続けに購入したが、結局しっくりくるものには出合えなかった。

その失敗から、河元さんは枕にはレンタルサービスが必須だと考えたのだそう。

まくら株式会社のレンタルサービスを使えば、好みの枕を最大3つ、20日間まで自宅で試してみることができる。「高額な商品ほど失敗したくないので、試せるのは助かる」「お店でちょっと試すのと、家でじっくり試し寝するのとでは全然違う」と人気は上々。2013年にサービスを開始した後、瞬く間に話題になり、レンタル用に確保していた1000個の枕があっという間になくなった。

レンタルサービスをきっかけにヒットした「ザ・ピロー」

レンタルサービスから生まれたヒット商品もある。16年に発売以来、累計1万個以上を売り上げた「ザ・ピロー」。新素材「3Dポリゴンメッシュ」を使用し、高反発性と弾力性を備えた枕だ。

広告をいっさい打たなかったにもかかわらず、レンタルサービスで人気に火が付いて売れ筋商品になった。今は2~3カ月待ちになってしまうためいったん止めているが、7月には枕のラインナップを1.5倍に増やしてサービスを再開する。

赤字でも続けるワケ

大人気のサービスだが、会社にとってはうま味ばかりでもないのだそう。レンタルから返ってきた枕は、コンディションを確認したうえでクリーニングに出し、殺菌処理も行う。汚れがひどいときは廃棄することもある。こうしたメンテナンスにおカネがかかるため、レンタルサービスだけを見ると赤字なのだ。レンタルサービスの申し込みはひと月で最大300だけれど、枕の買い上げに結び付く率は35%ほどと高くない。

「それでも、“運命の枕”に出合ってもらうにはレンタルサービスが欠かせない。試行錯誤を続けながら続けていくつもりです」(河元さん)。

一方で、河元さんがオリジナルの枕開発に役立てているのが、枕選びを指南するサイト「ぴろコレ!」。質問に答えると、まくら株式会社が扱う400種類以上の枕の中から自分にピッタリの枕を見つけてくれ、おすすめの理由も教えてくれる。ユーザーにとって便利なサイトでありつつ、会社にとっては売れ筋のいい枕を探すツールにもなっている。

ユーザーの声を生かして作った「そば夢物語」

たとえば一般的な相場が1000~2000円と安い、そばがら枕。「ぴろコレ!」でユーザーの意見を募ると、そばがら枕に求めているのは「低価格」ではなく、「涼しさ」であることがわかった。そこで、徹底的に不純物を取り除いた国産天然のそばがら素材をたっぷり使い、虫よけの天然ひのきチップを配合。枕ごと水洗いできるようにするなど品質や機能面を充実させ、5980円と高めの価格で販売したところ見事にヒットした。

価格が高くても眠りのためならいい商品を買いたい、という人はそれだけ多いということ。まくら株式会社の枕が支持される背景には、ユーザーに快眠を追求してもらうためのさまざまな工夫があったのだ。

  • この記事をシェア
トップへ戻る