フィンランドの離婚事情から考える、親と子の人生


先日のコラム「離婚してもそれぞれが“親”でいられるフィンランド」でお伝えしたように、フィンランドの離婚率は高く、子どもは別れた親の双方の家に順番に通って暮らすのが最近では当たり前になっている。

私の息子が通っている保育園にも、別れた父親、母親それぞれの家で交互に過ごしている子どもがたくさんいる。こうした仕組みが成り立っているのは、子どもたちが親と一緒に暮らせるよう経済的に支える法制度や、残業がほとんどない文化によるところが大きい。

フィンランドで離婚が多いのは、“自分主義”だからでもあると思う。日本ではよく聞かれる、「離婚や再婚は子どもが理解できる歳になるまで待とう」なんていう自己犠牲の考え方は、フィンランド人には珍しい。

きれいに別れるのは難しい

「欧米人は個人主義」とよくいうが、それよりも「欧米人は自分主義」と言った方が、私にとってはよりリアルな気がする。離婚することは、もちろん子どもにとって悪い影響もあるだろう。それでも優先されるべきは自分なのだ。そしてその選択に周りの人たちは寛容だ。

でもどんな法律があったって、そして個人の選択にどんなに社会が寛容であったとしても、子どものいる夫婦がきれいに別れることなんてできないのだなと思う。

調停の場に、元夫が出てこない。 取り決めを破り、元妻が子供を連れて何百キロも離れた場所に引っ越したため、子どもを双方の家に通わせることが困難になった。子どもが家事能力のない元夫の家に行きたがらないし行かせたくない。元夫の新しいパートナーやその家族に、自分の子どもを預けてどんなしつけをされるのか――。大人たちは、子どもには聞こえないようにそんな心配事を打ち明けてくれる 。

保育園の庭。建物の影になる場所に残る雪ももうすぐ解ける。11月からずっと地面を覆っていた雪とは、しばらくの間さよなら

離婚、そして母親の再婚があったからか、ワガママが手に負えなくなってきた幼児が私の周囲にもいる。その子は離婚そのものに傷ついたのではなくて、それぞれの親からの関心が薄くなってきたことを敏感に感じているのではないか、と思う。その小さな体を眺めながら、「父親なのだから、母親なのだから」と期待するから傷つくのだと私が知ったのはいくつのときだったかと思いを馳せる。

子どもが辛いのは離婚そのものじゃない

私が小学校4年生の時、両親が離婚しようとしていた。それが理由だったのかは今でもよくわからないが、当時の私の言葉遣いは荒くなり、目つきも変わった。一生懸命強がって、いじめもいじめられもし、しまいに友人が一人もいなくなり孤立した。

驚いたのは、母が私の変化に全く気がついていなかったということ。母は後に私に言った。「あなたに反抗期はなかった」と。

高校2年の冬、誰もいない真っ暗な自宅の玄関を開け、私は泣いた。兄が就職して家を出て以来、夜勤もある仕事で疲れた母は夕食を作りたがらなかった。「友人と飲んで帰るから夕食は自分でなんとかしなさい」、と電話で私に伝える母。父は趣味の仲間と出歩くことが多かったから、私は一人、室温の上がらない部屋で、誰とも話さない夜を何度も過ごした。

離婚していようがいまいが、つまりは親の子どもへの無関心こそが、子供にとっていちばん辛いことなのだと私は知ったのだった。

今となっては、17歳でまだ親離れができていなかったのか、と思う。母は長年、夜勤のある仕事にフルタイムで就き、家事もほとんど自分ひとりでやっていた。私が母の立場だったら、もっと早い時期にこういうことをしたかもしれない。

保育園で「じゃあね」のハグをする子どもたち。この子の親も別居していて、この子は来週から2週間、車で1時間ほどの距離にある父親の住む家へ行く

母は先日69歳になった。携帯電話から聞こえる母の声が、私を叱っている。感情が収まらないらしい母に相槌を打ちながら、この国際電話の料金を私は支払うのだなと考え、そういえば母はかなり感情的に怒る人である、とパズルのピースが合うように思い当たる。

親の選択を咀嚼する日

親はいつも独占的に子供を愛するわけではない。辻褄が合わなくなることもあるし、時々は親であることを忘れて自分の人生を好きに生きている。親であることは人生の一面に過ぎない。

親も、自分の人生を初めて生き、親という役割を初めて経験している人たちなのだ。そういうふうに理解するようになって、私は今、自分の親たちを愛しく思っている。

マンションの下の階に住むルカは7歳で、父親とその再婚相手であるハンナ・カイサさんと一緒に暮らしている。先日ルカは「パパとハンナ・カイサに赤ちゃんができるんだ」と教えてくれた。ルカを見ていると、この子は大事にされていると感じる。ルカにも大きくなって彼の両親のことを、距離を置いて理解する日が来るのだろうか。父親と母親の選択を、この子はどんなふうに飲み込んで行くのだろうか。

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