アイシングクッキーのヒットに隠された秘密

Photo by TOMIZ

イースターやクリスマスといったイベントの場に彩りを添える「アイシングクッキー」。ママ友とのお茶会や卒入園などセレモニーの場で配り合うこともあるそうで、最近は店でもよく見かけるようになった。

アイシングクッキーは、焼いたクッキーの上に、色鮮やかに着色した砂糖や卵白で作ったペーストを塗ってデコレートしたもの。さまざまなデザインや色が楽しめてかわいいだけでなく、半日~1日かけてしっかり乾かすので強度があって割れにくい。デコレートの一部としてメッセージを書くことができるので、お世話になった人へのちょっとしたプレゼントにもぴったりだ。

“インスタ映え”する

アメリカやイギリスでは、イベントごとにアイシングクッキーを作る人はたくさんいるそうだけれど、日本で爆発的に広まったのはここ1~2年のこと。「火がついたきっかけはSNS、特にInstagram(以下、インスタ)だと思います」。そう話すのは、日本アイシングクッキー協会の竹林舞依さん。自分だけのさまざまなデザインが“インスタ映え”するとあって、感度の高い女性たちが飛びついた。

Photo by MARIA

見た目がカラフルでかわいいアイシングクッキーは、画像1枚で世界観を表現するインスタにぴったり。ハッシュタグを付けることでフォロワーも集めやすくなるし、”いいね”(ハートマーク)を付けてもらえる確率も高くなる。

お菓子やパン作りの材料を扱うTOMIZ(富澤商店)広報部の蔵薗愛子さんも、インスタの浸透とともに見た目重視のお菓子に人気が集まっていると実感しているそう。「TOMIZでもアイシングクッキーやカップケーキなど見た目がかわいいお菓子作りの道具や材料がよく売れています」(蔵薗さん)。

ドレスや靴、電車に楽器まで

人気の高まりを受けて、アイシングクッキーを作るためのツールも増えた。TOMIZでは2015年の夏頃から、関連商品の取り扱いを増やし、今ではクッキー型だけでも250種類以上をそろえる。「アイシングクッキー関連の商材の中でも、よりさまざまな表現を楽しむためのツールとして、抜き型はいちばん人気です」(TOMIZ蔵薗さん)。

Photo by TOMIZ

ほかのお菓子と比べ、アイシングクッキーは表現の幅が広い。たとえばケーキは土台となるスポンジが柔らかく、デコレーションをしようにも生クリームは溶けやすいなど、素人がチャレンジするには限界がある。クッキーは型さえあれば、ドレスや靴、電車やライオン、アイスクリームに楽器まで、崩れにくくデコレートしやすい土台を簡単に作ることができる。成型したクッキーのうえにアイシングを使ってデコレーションを施すことで、オリジナルのデザインができるのだ。

そのほか、TOMIZでのアイシングクッキー売れ筋商品は、アイシングクッキーの肝になる色鮮やかな「アイシングカラー」や、細かい装飾をするために、より細かくしぼり出せる専用しぼり袋(コルネ)なども人気。日々海外からの新しい技も入ってきて、アイシングクッキーで“魅せる”選択肢はますます増えている。

自ら主体となって“始めたい”

もう一つ、アイシングクッキーがヒットした大きな理由は、日本の女性たちの「新しいことを始めたい」という気持ち。

日本アイシングクッキー協会のインストラクター養成講座を受ける人の中には、自らアイシングクッキーの教室を開きたいお母さんがたくさんいるという。2014年1月の協会設立からの受講生数は700人以上で、多くは30〜40代の女性。「子どもの手が離れたり、人生のターニングポイントを迎えたりして『〇〇ちゃんのママとしてではなく、自分が主体となって活動してみたい』と受講される方が多いのです」と竹林さんは言う。

Photo by MARIA

竹林さんが高校時代の友人・後藤奈央さんと一緒に協会を立ち上げたのも、まさに受講生たちと同じ動機からだった。結婚、出産を経て環境が変わり、社会とつながりを持ちたいと思ったときに、趣味だったアイシングクッキー作りを生かして何かできないかと思ったことがきっかけだったという。

インスタの浸透と、女性たちの「新しいことを始めたい!」という熱意が出合ったと考えれば、アイシングクッキーのヒットは“必然”と言えるかもしれない。

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