世界に一つだけの服を縫製職人にお願いできるサイト

ヌッテ,nutte

Photo by MARIA

娘が通う保育園で、着ている服がどこの国で作られたのか確認するのがはやったことがある。娘に「これはどこで作られたの?」と聞かれるたび、タグを見て「Made in Chinaだから中国だね」「これはベトナムだって」などと話していたが、改めて確認してみると日本製の服が圧倒的に少ない。

「Made in Japan」の服は、仕事がていねいで質がいいものが多いといわれる。しかし、価格が押し並べて高いせいか、海外製の安価なファストファッションが売れやすいのだろう。ただ、日本の縫製職人に対し、ていねいな仕事に見合うおカネが支払われているかというと、そうでもないらしい。ヌッテ,nutte

「アパレル製品は、店頭に並ぶまでに数多くの業者が間に入るんです。糸や布の業者、商社、アパレルメーカー、パタンナー、縫製職人、バイヤー、小売店……。業者ごとにマージン(売買差益)がかさむので、縫製職人に支払われる報酬はとても安い金額になってしまいます」。そう話すのは、縫製のクラウドサービス『nutte(ヌッテ)』を運営するステイト・オブ・マインドの佐藤杏里さん。

「サンプル一点当たりの縫製工賃は、ワンピースなら1万3000円程度であればよいほう」と佐藤さん。毎日数点ずつ作ればかなりの売り上げになるようにも思えるが、サンプルは試行錯誤しながら作らねばならず、数は追えないのだという。

仕事を直接持ってくる

「仕事ぶりに見合う報酬を縫製職人に支払えるように」と2015年に始まったサービスがヌッテだ。商社やアパレルメーカーといった中間業者を通さず、縫製職人やパタンナーに直接仕事をもってくる仕組みを作った。

登録している縫製職人の8割が女性で、年代は30代~90代までと幅広い。アパレル業界で30年経験を積んだ人、ドレスだけを作り続けてきた人、独学で縫製を始めた主婦などさまざまな経歴の人がいる。登録するときに縫製テストを受け、でき映えによってランク付けされている。

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ラフスケッチから依頼することもできる

仕事を依頼したい人は、「何をいつまでにいくらで頼みたいか」を投稿。ヌッテに登録している約1000人の職人が投稿を見て「引き受けたい」と思った案件があれば応募する。応募があった中から依頼者が職人を選び、オンライン上での打ち合わせを経て取り引きする。

個人の意外なニーズとは?

ヌッテを始めるに当たって、佐藤さんらは「アパレルメーカーの下請け、サンプル請け」が多いと想定していたそうだ。ただ、ふたを開けてみると個人からの意外なニーズも多く驚かされたという。

依頼者は今のところ、小ロットで注文したい洋服デザイナーなどプロが多いのだとか。「ネットでハンドメイド品を売っているけれど、企画だけしたいから縫える人を探したい」といったネットショップのオーナーからの依頼もある。その一方、「子どもの発表会の衣装を作ってほしい」「古くなった服をお直ししてほしい」といった一般の人からの注文もちらほらある。

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個人からの子ども服の依頼もちらほらある

こうした1点ものの依頼だけではなく、最近では、有名アパレルメーカーからのまとまった依頼も増えつつあるといい、月50万円ほどを売り上げる職人もいる。

職人自ら仕事を選び取れる

ヌッテは職人のネットワーク作りにも一役買っている。

ヌッテの代表、伊藤悠平さんも20代からの10年間ほど縫製職人としてはたらいていたが、縫製だけでは食べていくのが厳しく、ほかの仕事と掛け持ちするしかなかった。季節仕事で仕事量に波があり、繁忙期には誰かに仕事をお願いしたくても職人同士のつながりがなく、業者を挟まざるを得ない。するとまた自分の取り分が少なくなるという悪循環だった。

ヌッテ,nutte

ヌッテは、クラウド上で縫製職人がつながれるネットワークでもあるので、協力し合うことで繁忙期に仕事を融通し合うことができる。職人はヌッテを通じて仕事を選べるので、生活のために安い金額の案件を受けるのではなく、“割に合う”“創造性の高い”仕事を自ら選び取ることもできるようになった。

「スーパーで作り手の顔が見える野菜が売られるようになってきましたよね。洋服の世界でもヌッテを通じて顔の見える取引が進めば」と佐藤さん。顔が見えるからこそ、職人の責任感が増し、技術の向上にもつながる。

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ヌッテは、職人たちの地位向上にも一役買っている

「職人たちにとってヌッテを発信の場にしてほしい」——。伊藤さんらのそんな思いもヌッテには込められており、これまでは顔が見える存在ではなかった職人たちが、プロフィール欄で自分の経歴を思い思いにアピールしている。ヌッテに登録している職人と元縫製職人である代表が語り合うメディアもサイト内で運営しており、職人の地位向上に一役買っている。

業者のはざまにいた繊維業界の縫製職人たち。ヌッテの登場により、活躍の場が広がっていきそうだ。

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