子育て中こそ“私にぴったりのお寺”が必要

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Photo by Koichi Imai

日本人にとって身近な存在である「寺」。一歩境内に足を踏み入れれば、非日常の空間が広がっている。そうした空間にいるうちに日々の悩みもちっぽけなことに思えてくるから不思議だ。

最近では、写経や座禅、ヨガ、落語といった幅広いジャンルのイベントで一般の人に門戸を開く寺も出てきた。とはいえ多くの人にとって寺はまだまだ“普段使い”できる存在ではないのかもしれない。

七五三、ヨガ…目的で選べる

「寺と一般の人とを橋渡しするような仕組みを作りたかったのです」と話すのは、寺のポータルサイト「まいてら」を運営する、一般社団法人お寺の未来の井出悦郎さん。

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まいてらは、独自の基準にのっとって選んだ全国の寺を掲載している。ユーザーは地域や宗派だけでなく、座禅や法話会、結婚式、七五三など、訪れたい目的に応じて寺を探すことができる。子ども向け学習会や音楽会、終活講座といった珍しいイベントを開催している寺にも出合える。

井出さんらがまいてらを作ろうと思ったのは、一般の人が寺を探すときに使えるような「公式情報」がなかったから。まいてらを通じてまずは「私のお寺」を見つけ、寺に参るきっかけを作ってもらうことを狙う。メイン読者は50代の女性だけれど、より下の層である30~40代にもじわじわと広がり始めている。

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コンサルティング会社出身の井出さんは、5年前から「未来の住職塾」として、寺向けの経営セミナーを開いてきた。檀家が減るにつれて経営状態が悪くなるといった具合に、寺を取り巻く環境はとても厳しい。住職塾では、寺をどう存続させていくのかを「寺業計画」に落とし込んでもらいサポートする。これまでに約400人が住職塾を受講した。

住職たちに出会う中で井出さんが感じたのは、「寺は血縁関係に縛られすぎている」ということ。先祖代々かかわってきた檀家にどうしても目が行き、一般の人に情報をわかりやすく発信するといった工夫がなかなか見られない。結果、全国に7万以上ある寺の魅力は世間にうまく伝わっていない。

まいてらでは、井出さんらスタッフが、それぞれの寺の魅力をより発信するためのキャッチコピーやポイントを伝える。問い合わせフォームもあるので檀家や地域を超えてご縁が広がる可能性もある。

安心のお寺だけを紹介

信頼性を担保するため、まいてらに掲載するのは、「安心のお寺10ヶ条」をクリアした寺だけ。確固たる理念や方針があるか、包容力があり確かな見識を持つお坊さんがいるかどうかといったことを事前に確認する。

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中でも重視しているのが堅実な管理運営がなされているかという点。100以上の項目にわたる経営情報や財務資料を提出してもらったうえで、井出さんらスタッフが現地を訪れて住職と話をしたうえで掲載している。

「10ヶ条」をクリアしないとまいてらには掲載されないけれど、その場合でも足りない点をきちんと伝えるのだそう。「改善されればもちろん再検討します」(井出さん)。掲載した寺が支払う紹介ページの制作費と年会費が、お寺の未来の収益源だ。

日常の苦しみを減らす場に

千葉県にある「薬王山 本休寺(ほんきゅうじ)」は厳しい基準をクリアし、17年3月からまいてらに掲載されている。

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写経の会(本休寺)

本休寺を運営する住職夫婦には3人の子どもがいる。子どもを通じて知り合った地域のお母さんの中には、初めての育児に戸惑い悩む人も多いという。そうした人の声に耳を傾けようと、本休寺ではお母さん同士が交流できる親子の会を開いている。ほかにも写経の会や子ども会の運営、リトミック、書道教室などの親子向けイベントとさまざまな催しを行う。

「寺はお葬式の場ととらえられがちだが、寺のソーシャルキャピタル(=社会に貢献できる存在価値)はそれだけではないのです。どの世代の人々も地域で生きやすいよう、日常の苦しみを減らす場でありたい」(岩田親靜住職)。

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本休寺の岩田親靜住職

岩田住職がまいてらに登録しようと考えたのは、社会的な信用度を高め、ご縁の門戸を広げたかったから。まいてらへの掲載後、新たなご縁につながる機会に恵まれるようになったという。

お母さんにこそお勧め

まいてらに掲載されているお寺は30で、目下20のお寺を審査中。近いうちに100以上のお寺を掲載する予定だ。ただ、井出さんは、まいてらでお寺の情報を発信することがゴールだとは考えていないという。

「催しなどを通して実際に人々が寺という空間に身を置き、お坊さんと触れ合ってこそ、寺の存在価値が高まり存続にもつながる」と井出さん。今後、まいてらに掲載した寺と読者と一緒になって、お寺の未来につながるような企画を立ち上げていくつもりだ。

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井出さんは、子育てで忙しいお母さんこそ、寺を日常生活に取り入れることがお勧めだという。「人間が抱える悩みは、人間関係からきていることが多い。寺という非日常な場に身を浸すことはご縁を見つめ直し、人生という時間軸で物事を考え直すきっかけになります」(井出さん)。

まいてらを通じて寺を訪れることは、回り回って、寺を次世代へと存続させることにもつながっているのだ。

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