漁師、農家とつながる産直アプリって?

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焼き魚に野菜のおひたし、炊きたてのご飯、デザートには旬の果物……。季節の食材を使ったり栄養に配慮したりと、日々の食卓に工夫を凝らすお母さんは多い。

でもそうやって食卓に並べた魚や野菜のうち、誰が取り、誰が作ったかを知っているものはいくつあるだろう。セール品だからと何げなく手に取ることや、「オーガニック」のPOPに引かれて中身をよく知らずに買うことはよくある。

漁師と会話する

「食べることが大切なら、食の担い手を知ることも大切なこと。担い手のことを知れば、食との向き合い方も変わると思うのです」。そう話すのは、ポケットマルシェの本間勇輝さん。

ポケットマルシェは、生産者が自ら出品した食材をスマホから直接買えるアプリだ。卸やスーパーのような中間業者を通さず、生産者が売りたい食材を出品し、ユーザーから注文が入れば発送する。

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ほかのショッピングアプリと違うのは、出品する人が全員、漁師や農家、といった生産者本人だというところ。これは、ユーザーと生産者が直接やり取りできる仕組みを作るため。これまでに審査に通った200人ほどが出品者として登録している。

3月下旬、石川県七尾市の順毛弘英さんから、3888円の鮮魚セットを購入した。「自然を相手にしている」という理由で到着日の指定はできないが、平日か休日かは選べる。休日を希望したところ、数日後の土曜日に捕りたてのクロダイやアジ、サゴシ(サワラの幼魚)など6~7種類のセットが真空パックで届いた。

中には、クロダイの中骨や尾頭だけのパックも。どう料理すべきか迷って順毛さんにメッセージを送ると、すぐに「あら汁などいかがでしょうか? 僕は鯛飯なども作りますがおいしいですよ」と返ってきた。家の台所にいながら、捕った人と直接“会話”することができる。

不便さに価値がある

ポケットマルシェに出品される食材は、決して安さを売りにしているわけではない。大玉のトマト1kg(5~8個)が1800円、殻付きのカキ1kg(10~15個)が2000円という価格設定(送料別)は、一般的なスーパーよりも高め。家まで届くのはありがたいものの、日にち指定ができないという不便さもある。

「自然を相手にするというのはそういうこと。少々不便な思いをしたとしても、生産者の顔が見え、ひと手間かけて作られた農産物が手に入るところに価値があると思っています」(本間さん)。

たとえば漁師の順毛さんは、一匹ずつの魚に「神経抜き」を施している。血を抜いた後、中枢神経などを破壊することで死後硬直のスピードを遅らせ、新鮮さを長持ちさせる効果がある。「普通のブリを冷蔵庫で6日間寝かせても腐るだけ。『神経抜き』されたブリなら、脂が回って血合いが消え、もっちりとした熟成刺し身になるんです」(本間さん)。通常ルートで流通する魚のほとんどは、こうした手間のかかる処理が施されていないそうだ。

Photo by Fumishige Ogata (画像はイメージです)

トマト一つとっても同じことが言える。スーパーに並ぶトマトの多くは、青くて硬いまま出荷される。こうして流通ルートに乗ったトマトは運ばれている間に赤くなるものの、甘くはならないそうだ。ポケットマルシェに出ている「完熟収穫」のトマトは、赤く熟して糖度も高くなった状態で収穫し、その日のうちに発送される。農家は完熟のベストタイミングを見極めるために注意を払っておく必要がある。

こうしたひと手間を付加価値だと考えるなら、出品される食材の価格が高かったとしても納得がいく。

買った人の3割が写真投稿

「こだわりの農産物を世に出したいと考えてきた生産者の多くが、どうすればいいかわからなくて困っていた」と本間さん。だからポケットマルシェは、“誰でも簡単に出品できる”ことにこだわった。スマホで写真を撮り、最低限の商品説明を付け加えて値付けをすれば最短1分で出品することができる。注文が入ると、ヤマト運輸の担当者が印字済みの伝票を持って集荷に来てくれる。

ただ、価格設定や説明の仕方によっては買い手がなかなかつかないこともある。ユーザーの反応を見て値付けを見直したり写真を工夫したりと、漁師、農家も学んでいる。

購入したユーザーからの写真付きレビューも多い Photo by Pocket Marche

面白いのは、ユーザーが写真付きレビューを投稿する「コミュニティ」が、コンテンツの一部といえるほど盛り上がっているところ。ユーザーさんの写真に購入意欲を刺激されるケースも多いのだそう。買い物をした人のなんと3割が進んでレビューを書き、生産者とのつながりを楽しんでいる。

秋田県の漁師、山本太志さんのコミュニティには、幼稚園に通う子どもが「ババカレイ」の見た目に興味津々で夕飯に出したところ完食した、というユーザーからの書き込みがあった。山本さんはすかさず、「私がポケマル(ポケットマルシェ)を通じて伝えたいのはこういうこと」と応える。

Photo by MARIA

顔と名前がわかる生産者から送られてきたというだけで、食材への感謝の気持ちが湧いてくる。「生産者の苦労やこだわりを知っていれば『とにかく安く買いたい』という発想にもならないはず」(本間さん)。ポケットマルシェは、「作る人・捕る人」と「食べる人」とを対等な関係につなぎ直してくれるツールでもあるのだ。

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