ベビーオイルに“保湿”の効果はあるのか

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最近、「ベビーオイル」の人気が高まっているという。本来は、乾燥しがちな赤ちゃんの肌を保湿するためのもので、だからこそ“ベビー”オイルという名前が付けられている。ところが今は大人にも愛用者が多い。「赤ちゃんの肌にも使える」という安心感があるうえ、300ミリリットルで700円ほどと価格もリーズナブルだから、使いたくなるのも当然かもしれない。

このベビーオイル、一体どんなものなのか、皆さんはご存じだろうか?

ベビーオイルで最も有名なのは、ジョンソン・エンド・ジョンソンの「ジョンソン ベビーオイル」だろう。その原材料は、「ミネラルオイル」と「酢酸トコフェロール」のたった2つ。そのうえ、酢酸トコフェロールは酸化安定剤なので配合量はかなり少ない。

つまり、実質的には“ベビーオイル=ミネラルオイル”といえる。他のメーカーからもたくさんのベビーオイルが発売されているが、そのほとんどが同じような成分構成になっている。

肌への刺激が少なく安全

ミネラルオイルと聞いて、ピンときた人もいるかもしれない。実はミネラルオイルは、以前は「鉱物油」と呼ばれて嫌われていた成分だ。“石油から作られているから体に悪い”というのがその理由だが、化学者の視点からすると、この理由はとても理不尽に思える。実際には、ミネラルオイルは最も安全性の高い化粧品成分の一つなのだ。

ミネラルオイルは専門的には「流動パラフィン」と呼ばれるもので、「炭化水素油」という「炭素」と「水素」の原子のみで構成された非常に安定性の高い成分だ。ワセリンやスクワランもこの一種。このような構造のオイルには「他の物質と反応しにくい」という特性がある。“反応性を持たない”ということは“肌を刺激しにくい”ということであり、安心して使える。

そもそも特に肌が敏感な赤ちゃん用の商品に使われていることからも、安全な成分であることがわかるだろう。

大きな落とし穴も

安全でリーズナブルと、ミネラルオイルにはいいことばかりのように思える。しかし大きな落とし穴もある。保湿するために使われるはずなのに、ミネラルオイルを肌につけても実質的には“保湿にならない”のだ。

肌内部にも天然の脂分があるが、ミネラルオイルとはまったく性質が違う。油には、水に溶ける構造(水性部位)を持つものと、持たないものがある。ミネラルオイルは水性部位がなく、油としての性質が非常に強い「油性の強い油」だ。一方、肌本来の脂分には水性部位があり、油性の強い脂ではない。

Photo by MARIA(イメージ)

だからミネラルオイルをつけても肌になじむことはなく、皮膚の表面を「保護膜」として覆うことしかできない。もちろん保護膜になることで、肌からの水分の蒸発を防いだり、摩擦刺激やアレルギー物質の侵入などによるダメージから守ってくれるという効果はある。

しかし、実質的な保湿作用のない「保護油」での保湿を続けていると、肌の内側にある脂分が失われ、内部が乾燥した状態(=インナードライ)になってしまう可能性がある。

肌内部の脂分が外へ

肌のいちばん外側にあたる角質層の内部には、肌本来の脂分と水分が存在している。この脂分は天然の保湿剤で、私たちの肌を乾燥から守っている。ところが肌の表面にミネラルオイルなどの油性の強い油が塗られると、この状況が一変する。

水と油は正反対の性質で、水は水同士、油は油同士で集まったほうが安定しやすい。これは肌の脂分にとっても同じで、肌表面にミネラルオイルをつけると、肌内部の脂分にとっては、水分と同居している角質層内部よりも、同じ油であるミネラルオイルに溶け込んだほうが安定できる。そのため、肌の脂分が角質内部からミネラルオイルの塗られた肌表面へと移動してしまう。

その結果、一見すると脂分があるように見えるのに、肌内部の脂分が失われていて、実は乾燥しているという、インナードライになってしまう懸念があるのだ。

肌の脂分に近いオイルを

ミネラルオイルは保護油でしかないため、根本的な乾燥対策にはならない。肌の保湿を考えるなら、マカダミアナッツオイルなど肌本来の脂分に近い性質を持つ「油脂」のほうが適切だろう。油脂も油の一種であるが、ミネラルオイルとは違い肌本来の脂分と同質のオイルのため、インナードライになりにくい。

ただしマカダミアナッツオイルなどの油脂は、どうしても天然の成分が混ざってしまうため、アレルギーなどを引き起こす懸念もある。心配な場合は、洗いすぎに気を付けて、化粧水や乳液でしっかりと保湿してから、ベビーオイルで表面を保護するほうが安心だ。肌の状態を見ながら、自分に合った保湿方法を選んでほしい。

メリットもあるけれど、同じくらいデメリットもあるベビーオイル。特徴や性質を理解して、適切に使ってほしい。

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