ザンビアの子の命を救う、子ども靴の下取り

子ども靴 下取りサービス

まだ履けるけれどサイズアウトした子ども靴。ファーストシューズも入学式・運動会で履いた靴も、思い出が詰まっていて捨てにくいが、誰かに譲るのも気が引ける。

そんなお母さんたちに人気なのが、百貨店のそごう・西武の「子ども靴下取りサービス」だ。そごう・西武では、全店で不要になった子ども靴を下取りし、1足当たり500円の割引券と交換している。

下取りしてもらえる子ども靴は、そごう・西武以外のお店で買ったものでもよく、コンディションは問わない。1回につき1人3点まで、破れや名前の記載があっても、下取りしてもらえるのだ。

子ども靴 下取りサービス

65万足以上がザンビアへ

下取りされた子ども靴はザンビアに送られ、子どもたちの命を救っている。

ザンビアの子どもたちは、学校まで何十キロメートルも歩くことが多い。はだしで長時間歩くことで、破傷風になったり、傷口から寄生虫が入ったりして、場合によっては命を落とすこともある。そごう・西武は、国際支援団体の「ジョイセフ」(新宿区)を通じ、1年に4回ほど、1回につきおよそ2万~2万5000足の子ども靴をザンビアに届けている。

子ども靴 下取りサービス

集められた子ども靴は遠くザンビアに届けられる

「お客様の優しい気持ちをお届けしたいという思いで、2009年からこの下取りサービスを始めました。これまで累計65万足以上の子ども靴をお預かりし、破れなどのあるもの以外はすべてザンビアにお届けしています」(そごう・西武CSR・CSV推進室の鈴木英伸さん)。

09年頃は全国的に下取りサービスが進んだ時期。そごう・西武も当初は靴だけでなく、洋服やカバンなど寄付していたが、ザンビアの駐日大使から「実は靴がすごく助かっている」と聞かされた。百貨店の経営と並行して無理なく続けていける方法として、寄付対象を靴に絞った。

「履けなくなった靴を持っていくだけで国際貢献できる」とリピーターになるお母さんが多く、集まる靴の数は毎年増えている。

「ボールを蹴っても痛くない」

ジョイセフでは、子ども靴をただ配るのではない。ザンビアの国内最大の問題は、HIVの蔓延。HIVの成人感染率は15%程度で、HIV孤児も60万人以上いるといわれている。現地の大人たちに、子どもや妊婦の衛生やバースコントロールについての教育を受けてもらうことを条件に子ども靴を配布しているのだ。

こうした体制を整えることで、配布場所から徒歩2~3時間かかる場所に住んでいる人にも啓蒙できる。ザンビアは大きな戦争や内紛がなく、貧しいながらにも平和が保たれているため、現地の受け入れ体制もしっかりしているそうだ。

子ども靴 下取りサービス

靴を配るときに、大人たちに子どもや妊婦の衛生について啓蒙している

そごう・西武の各店舗で集められた子ども靴は、毎月各店から、セイノースーパーエクスプレスの協力で、横浜の港まで運ばれる。靴をコンテナに詰め、商船三井の船で日本を出発する。1カ月後に南アフリカのダーバンという港に到着し、さらにトラックで1カ月かけてザンビアに届けられる。

「スニーカーを履いてボールを蹴ると痛くないのでうれしい」(男の子)。「靴を履いて学校に行けるなんて」(女の子)。ジョイセフが撮影したビデオには、こうした子どもたちの声が収められている。「トラックが村に到着すると、村人たちがみんな集まり、歌って踊って、靴が載ったトラックを歓迎してくれるんです」(鈴木さん)。

ザンビアでは5~10人兄弟が当たり前で、子どもの数が多い。「まだまだ子ども靴は足りていない。何センチの靴でも役立つと思います」と、鈴木さんは話す。

物を大切にする心が育つ

こうした取り組みを、日本の子どもたちに伝える工夫もある。

そごう・西武では靴の下取りの際、子どもが一緒であれば感謝状を渡すことにしている。子どもの名前をその場で記入し、スタッフが裏面の絵を指しながら、下取りした靴がどこへ行ってどう役立つかを説明することもある。自分の靴が誰かの役に立つ、いつかお友達にあげる、ということを意識し、靴を大事に使うようになる子が多いそうだ。

子ども靴 下取りサービス

千葉市幼稚園協会(83園加盟)、横浜市幼稚園協会(254園加盟)も加盟する幼稚園を通じて、お母さんや子どもたちに下取りサービスを紹介している。

著者も先日、2歳の息子と一緒にそごう横浜へ下取り靴を持ち込んだ。息子の小さな靴が誰かの役に立つのかと考えると感慨深かった。親子で「誰かの役に立てた」と感じられるこの下取りの取り組みは、500円の割引券以上の価値があるのではないだろうか。

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