捨てられる運命の服をどうやったら救える?

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すっかり春めいてきて、冬用のコートをクリーニングに出した人もいるのではないだろうか。アパレルショップには、春らしい色や素材の服が並び始めた。

だが華やかな店頭から一歩バックヤードに入れば、そこは冬物の在庫の山。これらはどこへ行くのだろう。

服になる前の生地も捨てられる

アパレルブランドは季節ごとにどんどん新しい洋服を作る。新作の売れ行きは予測しづらいが、出したばかりのアイテムがすぐに売り切れることは許されない。だからどうしても多めに作って残りはセールで安く売ることになる。

セールで売れ残れば在庫は在庫ですらなくなり、バックヤードに残しておけない。新作として1万円で売られたシャツであっても1枚数十円で取り引きされて海外で売られることはよくある話。それでも値が付かない場合は捨てられてしまう。

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Photo by Koichi Imai

2011年に経済産業省が出した報告書によれば、日本では年間170万トンもの繊維製品や繊維原料が「排出」されているという。

中には古着として別の人の手に渡ったり、回収されリサイクルに回されたりするものもある。ただ大半は燃やして処理されるといった方法で廃棄されている。服やカーテン、タオルといった製品もあれば、製品になる前の生地や糸も使われないまま捨てられる。

「買い取ってほしい」の声が殺到

「大量の繊維ゴミをどうにか減らしたいんです」と話すのは、ウィファブリックの代表、福屋剛さん。もともと商社で繊維原料や製品の売買にかかわっていたが、廃棄の問題を知り、なんとか解決したいと2015年に起業した。

ウィファブリックは15年、ライフスタイルブランド「RDF」を立ち上げた。放っておけば廃棄されてしまう生地や糸を見つけてきてデザインを施し、タオルやラグといった商品として販売している。使われたモノを再生しているわけではなく、倉庫や工場に眠っていた在庫を使っているので商品そのものは新品だ。

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国産・エシカルなライフスタイルブランド、RDFの今治タオル

RDFは東洋紡の倉庫に眠っていた2トン近くの高級綿を買い取り、ホテル仕様の今治タオルに仕立てた。国産ブルーデニムとして有名な岡山デニムの余り布は、エプロンやクッションカバーに生まれ変わらせた。品質の高い原材料を使った国産製品なので寿命が長く、30代の男女を中心にファンがついている。

RDFが世に出ると、全国各地の業者から問い合わせの電話がかかってくるようになった。「うちにも糸が大量に余っている」「倉庫を占領している生地を買い取ってくれないか」――。

同じ思いを持っているアパレル業界の関係者がたくさんいることに気づいたという福屋さん。ただ、引き取ってほしいという問い合わせがあまりに多かったのに対し、暮らしまわりの商品をメインとするRDFが買い取れる素材は限られている。

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岡山デニムを生まれ変わらせたエプロン

「あるとき、洋服向けにはよさそうな薄手の生地を見つけて問屋さんに紹介したところとても喜んでもらえたんです。売りたい人と買いたい人をつなげる仕組みがあればもっと多くの原料が救われるのでは、と思いました」(福屋さん)

アパレル業界初のB2Bフリマサイト

そこで福屋さんは、17年夏にアパレル業界向けのフリマサイト「スマセル」を立ち上げることにした。

スマセルのサイト上に在庫となった原料や素材、製品を出品してもらい、定価よりも30~99%オフで売り買いできるようにする。売れた価格の15~30%がウィファブリックに入る仕組みだ。売り手、買い手には、商社や問屋、アパレルメーカー、小売店などを想定している。

いちばんの特徴は、在庫を手軽に売買できる仕組みにある。今でもアパレル業界の多くの関係者は電話やFAXを使った取引をしていることが多い。アパレルブランドのデザイナーは、知り合いの業者から送られてきたリストに欲しい素材がなければあきらめるしかなかった。スマセルを使えば、思い浮かんだキーワードから素材や製品を探すことができる。

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SMASELL(スマセル)はこの夏にリリース予定

在庫を抱える商社やアパレルメーカーも、廃棄を考える前にスマセルで引き取り手を募れる。「『在庫だから』と買いたたかれることもなくなります」(福屋さん)。売買が成立するまで出品するのにおカネはかからず、成立すれば三井住友銀行と連携した決済機能を使っておカネをやり取りする。

ウィファブリックが2月に事前の出品登録を募集し始めたところ、およそ1カ月間で定価にして10億円分の“商品”が集まった。企業だけでなく、個人事業主でも購入や出品ができる。minne(ミンネ)やCreema(クリーマ)といったハンドメイドマーケットに出品する人からのニーズもありそうだ。

「捨てられるはずだった在庫が資源として取引され、暮らしの中で日の目を見てほしい」と福屋さん。公開前にもかかわらず続々と集まる出品商品は、アパレル業界の期待の高さをうかがわせる。

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