地方移住のカギを握るのは子どもだった

移住

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都市部から地方に移住した人は、必ずと言っていいほど「理想と現実」のギャップにぶち当たるそうだ。

移住したものの、思ったようにコミュニティになじめなかったり、移住するまで気づかなかった田舎ならではの不自由さを感じたり……。そんなとき、子どもの存在は、親がコミュニティに参加するきっかけを作ってくれる。

東京から新潟県長岡市に移住した栗原里奈さんは、移住後に出産し、田舎のよさを実感したという。

「地域の人が『子どもは宝』ととらえてくれていて、妊娠しただけでも喜んでくれたり、集落の方からお祝いをもらったり、地域固有のお祝いの煮しめを作ってくれたり、私の体調が悪いときに娘を預かってくれたり。両家の実家が離れている分たいへんなこともあるけれど、都会ではできない子育てができています」(栗原さん)

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見知らぬ土地での初めての出産――。「話せる人やコミュニティが欲しかった」(栗原さん)が、子どもが生まれたとき地域の育児サークルは休眠状態だったそう。そこで「ないなら作ってしまえ」と、栗原さんは0〜3歳児を対象とした「ちびっこサークル」を自ら立ち上げた。「子育て支援施設の人に、『サークルを立ち上げるので利用者に声をかけてほしい』とお願いしました」と栗原さん。子どもがいるからこそ、思い切ってアクションを起こせた例といえる。

子ども会から地域になじむ

三重県津市在住の小林純子さんは2015年、娘が小学2年生になる直前に東京から移住した。

「娘のいちばんの心配は、友達ができるかどうかだったのですが、すぐに仲のいい子ができたからオールOK。転校したのはタイミングがクラス替えをしたばかりで、周りの子と条件が同じなのもよかった。田舎にはだいたい子ども会とか自治会がある。子ども会にはイベントや奉仕活動があるから、努力せずとも徐々に地域になじんでいけるんです」(小林さん)

一方で、移住先で困ったことも子ども関連のことが中心なんだとか。

「友だちの家に遊びに行くのも習いごとも、どこに行くにも車がないと無理。だから夕方以降は子どもの送り迎えに手がかかるようになりました。はたらきたくて学童保育に入れたのに、運営も親たちに委ねられているので、さらに手がかかり、金額も東京の2.5倍くらい高かったので、3カ月でやめてしまいました。家も買いたいけれど、高校になると毎朝みんな駅まで親が車で送っていくんですね。住みたい環境と通学の折り合いがつく場所がまだ見つかっていません」(小林さん)。住んでみないとわからない、田舎ならではの悩みごとだ。

山村留学から家族で移住

移住先を決めるとき、子どもがきっかけになったという人もいる。

長野県大町市では40年ほど前から、親元を離れて農村での生活を体験する「山村留学」として、小学1年生から中学3年生までの子どもを1年単位で受け入れている。一般社団法人移住・交流推進機構(JOIN)の北澤美沙さんによると、農村留学をきっかけに家族で移住してくる人たちもいるのだという。

移住,田舎暮らし

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「子どもたちの様子を見てもらうため、田植えや稲刈りといったタイミングでさまざまな催しをするそう。子どもが長期で滞在するので山村の様子もよくわかってもらえる。大町市を気に入ってくれる家族も多いようです」(北澤さん)

留学でやって来た子どもたちは、1年の半分は農家にホームステイをし、残り半分は専用の施設で共同生活を送る。クラスの2割くらいは東京や大阪からの留学生という場合もあるそう。子どもを通じ、家族が一つの地域とかかわりを深めていく好例だ。

最大72万円の家賃補助も

過疎化が進む地方自治体では、子育て世帯の受け入れに特に力を入れている。

全国の自治体の75%が加入するJOINのホームページで紹介されている全国自治体支援制度の数はなんと8496(2016年6月現在)、うち子育て支援策は4000を超える。最大50万円の出産・育児助成金(徳島県つるぎ町)や、新婚世帯への最大72万円の家賃補助(福岡県芦屋町)など、驚きの制度も。移住者向け、住民向けの支援策は年々増加していて、バラエティに富んでいる。

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前述の栗原さんも「長岡市はファミリーサポートや一時保育が充実している。フルタイムの正社員になる前は個人事業主として仕事をしていましたが、保育園に入れなくても仕事ができていました」とサポート体制を実感した一人だ。

今は各地域とも各種助成金を出していたり、優遇措置を取っていたりするが、「『こういう暮らしたい』と選んで、そのおまけとして保育料が安かったとか、支援金がもらえたというのが付いてきたらラッキー。最初から条件で選んでも成功しません」(ふるさと回帰支援センター・高橋代表理事)というのも大切なポイント。

子どもが小さいからこそ味わいたい、濃密な家族な時間。地方での生活であれば、それをより実感できるかもしれない。

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