エコで快適、人気の赤ちゃん用「綿布団」

重くて扱いづらく、毎日干さなければいけないから面倒――。そう敬遠されがちだった綿布団が最近、見直され始めている。子どもの頃に綿布団を使っていた熟年世代だけでなく、子どものためにと買うお母さんたちも多く、特に赤ちゃん用は人気が高いという。

その理由は、天然素材ならではのよさにある。肌にやさしく、吸水性や吸湿性が高いので、肌が敏感で汗をかきやすい子どもや赤ちゃんにぴったりなのだ。

博多で創業した老舗、手作り木綿ふとんメーカー「ハニーファイバー」の「ベビー掛ふとん」「ベビー敷ふとん」も、人気の赤ちゃん用綿布団の一つ。注文がひっきりなしに入り、製造が追いつかない状態が続いているという。

中綿はもちろん100%天然木綿。それを覆う側生地にも、無着色・無漂白の天然木綿が使われている。一級寝具技能士の資格を持った職人が、一つひとつ丁寧に作り上げる。敷布団12960円、掛布団10800円と決して手頃とはいえない値段だが、手作りのため量産できないこともあり、納期は1カ月半~2カ月待ちだ。

おたふくわたの復活

そんな人気商品を持つハニーファイバーだが、売り上げの低迷に悩み、寝具の製造販売業から撤退した時期もあった。同社の前身は、全国的に有名な老舗の綿布団メーカー「おたふくわた」。江戸時代から続く企業だったが、ポリエステルなどの混紡のものや羽毛布団に押されて販売が伸び悩み、1997年、不動産業に転身した。

転機は2001年、9代目社長の原田浩太郎さん(44)が専務取締役に就任した頃に訪れた。エコで健康にもよい綿布団は確実に大きな需要があると「おたふくわた復活プロジェクト」を立ち上げ、寝具業を再開したのだ。

昔から取引のあった綿工場や知人の紹介で知り合った布団職人を訪ねて協力を呼びかけ、2003年に手作りの綿布団「おたふく」の販売を始めた。

最高の寝心地を追求

こだわったのが中に詰める綿。綿布団のネックは、掛け布団が重いことと、敷き布団が体の重みですぐにぺちゃんこになること。そのため、敷き布団には太く短めの繊維でコシがある「インド綿」を、掛け布団には細く長めの繊維で柔らかい「エジプト綿」と「メキシコ綿」を配合した綿を選んだ。

この繊細な綿を布団に仕立てるのは人間の技。一級寝具技能士の中でも「現代の名工」に選ばれている寝具士の野原久義さんに相談、仰向けの状態で寝た時に最も体重のかかる腰から背中にかけての綿量を多くし、全体がかまぼこ型になるように仕上げる伝統の製法を使って最高の寝心地の布団を追求した。価格は一組6万円ほど。熟年向け雑誌に掲載されたのをきっかけに、販売数を伸ばしていった。

綿布団のよさを若い世代にも伝えようと昨年はホームページをナチュラルな雰囲気に全面リニューアル。野原さんらの指導の下、自社でも一級寝具技能士を育て、本格的に販売を開始した。「今はカバーをかけて使う人がほとんどだから」(原田さん)と側生地もシンプルな生成りに変えたところ、若い世代からの注文が入るようになった。

売れ行きがよいのは赤ちゃん向けのシリーズ。ベビー掛け・敷き布団のほかに、「ベビーガーゼ肌掛け」や「ベビーガーゼケット」なども人気で、一時は在庫が払底した。

清潔に長く使える

子どもや赤ちゃんだけでなく、アレルギーを持つ人にとっても、綿布団はありがたい寝具だ。ポリエステルなどの化学繊維とは異なり、綿は帯電しにくいのでホコリが寄りにくく、アレルギーに悩む人にも喜ばれているという。

静岡県で3人の子育て中の川上良子さん(仮名、37)も、綿布団を愛用する一人。数年前から綿布団を使っている。結婚当初は嫁入り道具で買った羽毛布団を使用していたが、子どもにアレルギーがあることがわかり、実家で使っていた綿布団を思い出して買い替えたという。「綿布団に変えたら症状が収まりました。お日さまに干したときの布団の香り、ふわふわ感も格別です」(川上さん)。

長く使えるという良さもある。化学繊維の布団は消耗品で、汚れたり、数年使ってへたってしまったりすると粗大ゴミとして出さなければならない。布団クリーニングもあるが、使い続けるには限界がある。その点、綿布団なら、固まってしまった綿をほぐしたり、綿を入れ替える“打ち直し”ができたりするので、長く使うことができる。実は家庭から出される粗大ゴミで最も量が多いのは布団。使い捨てにせず大事に使えば、環境への負担も少なくなり、お財布にもやさしい。

赤ちゃん用や子ども用で小さくなってしまっても、きれいな綿布団なら回収してリユースする取り組みのある自治体もあり、ハニーファイバーは2年以内なら無料で座布団に仕立て直すサービスもしている。

たくさんのよさが詰まった綿布団、人気はしばらく続きそうだ。

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