子育て世代の地方移住は事前のシミュレーションから

移住

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地方移住は、子育て世代のライフスタイルの1つの選択肢になりつつある。都内では、毎週末なにかしらの移住セミナーが開催され、自治体による移住体験ツアーも各地で行われている。昔に比べ、移住先を探しやすい環境が整ってきた。

千葉県出身の栗原里奈さんは、2012年、結婚を機に新潟県長岡市に移住した。

「たまたま仕事で来た長岡市で主人と出会って移住したので、新潟のイメージはコメとスキーくらいしかなかった」と笑うが、今では地元のNPO団体の代表理事や長岡市外郭団体の理事を務め、地元企業で正社員として働くほど、地域にどっぷり根を下ろしている。

まずライフスタイルから

東京・有楽町で全国44道府県が移住相談窓口を設けるふるさと回帰支援センターが4000人以上にとったアンケートによると、2015年に人気だった移住先は長野県、山梨県、島根県、静岡県、岡山県の順だった。「移住の条件としてほとんどの人が挙げるのが、自然環境のいいところ」と代表理事の高橋公さん。ただ、一口に自然環境がいいと言っても、気候や地域の特性はさまざまだ。

高橋さんは、移住先を探すうえで重要なのは「どこで」「誰と」「何をして暮らすか」をシミュレーションすることだと言う。「暖かいところか、寒いところか、農業をしたいのか、会社勤めをしたいのか、それだけでもだいぶ絞られてくる」(高橋さん)。

2015年に地方移住した小林純子さん一家は、ご主人も小林さんも関西出身だったことから、「関西圏であれば水が合うかなと思って」、三重県津市への移住を決めたという。「北海道や雪国だったら、生活のイメージがつかないので移住を決めていなかったと思います」(小林さん)。

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千葉県から豪雪地帯の新潟県長岡市に移住した栗原さんは、「最初は地方都市に住んで、そのあと中山間地域に移住する『二段階移住』がいい」と教えてくれた。

「田舎暮らしをしたことがない人が、いきなり中山間地域に住むと大きなギャップに戸惑うかもしれない。地方だけど不便すぎないところに一度住んでみて、その後、本当に田舎暮らしがしたかったら中山間地域に移ると無理がない」(栗原さん)。

栗原さん自身、住みたい場所にちょうどいい家が見つからなかったというのもあるが、移住直後は長岡市街地でアパートを借り、移住から1年半後には中山間地域で念願の一軒家を買った。

「都会と違って何千万もローンを組まずに、手持ち資金だけで家を購入できた。ローンを組まなかった分は、子どもの教育資金や老後の貯蓄に回すことができ、将来の不安がない」(栗原さん)。豪雪地帯で雪がすごいと知れば「家庭用除雪機をヤフオク!で安く手に入れたり。ここで暮らしていこうという意識がしっかりあったので、どうクリアするかしか考えていなかった」(栗原さん)。一軒家は古いけれど、まきストーブを設置できないかなどと考えながら楽しんで暮らしているそうだ。

1年を通して地域を知る

「どこで」「誰と」「何をして暮らすか」をシミュレーションできたら、具体的な情報収集を。雑誌やネットの体験談などはもちろんのこと、まずは気になる地域のセミナーに参加してみるのも手だ。

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ふるさと回帰支援センターが2016年に開催した移住のセミナー数は、なんと前年よりも100回以上多い418回。セミナーでは、「高齢のため農業ができなくなった土地があり、その後継者を探している。だいたい年収はこれくらい」といった具体的な情報を提示したり、実際の移住者の話が聞けるようにしたりと主催者側も工夫を凝らす。

気になる地域が固まってきたらモニターツアーに参加できる。移住者受け入れに積極的な地域であれば、1泊1000円くらいで泊まれるモニターツアー用の住宅を用意しているところが多い。

移住者のモニターツアーは何度参加しても大丈夫なところが多い。1回の参加で決めると失敗もしやすい。いちばん過ごしやすい季節だけではなく、厳しい季節も含め1年を通してその地域を見たうえで決めることが必要だ。

アクティブな人が向いている

移住を考えるときに何より大切なのは、自分や家族が田舎暮らしに向いているかどうかということだ。「人付き合いが苦手だから、田舎で静かに生活がしたい」と考えているなら危険かもしれない。

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「移住に向いている人は、アクティブで社交的な人。新しい地域に入っていくには、出歩かないとなじめません。基本的なことですが、まずは『あいさつをする』。そして『郷に入れば郷に従う』。田舎には濃厚な人間関係が残っているので、昔からあるしきたりには従うことが求められます。そして、東京ではこうだったなどと『都会風を吹かさない』というのは最低限必要です」(ふるさと回帰支援センターの高橋さん)。

場所が変われど「生活すること」は変わらない。旅行者ではない視点で移住先を考えてみたい。

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