「転勤族の妻」目線の分譲住宅はなぜすごい?

Photo by MARIA

2017年3月、東京・玉川上水にあるミサワホームの分譲地から新しいタイプの住宅が発売される。使いやすい収納や効率的な動線など、家事のしやすさに徹底的にこだわって作られていて、分譲住宅ながら“注文住宅並み”のスペックだ。

実はこの家は、ミサワホームと「TKT48」とのコラボで生まれた。TKTは「転勤族の妻」(転妻)の略で、「47都道府県+海外=48地域」で暮らす約1300人の転妻によるコミュニティ。転勤先での友だちづくりのイベントや、その地域を知るための講座、地域活性に取り組む地元団体や企業、行政とのコラボ企画などを行う団体だ。

転居を繰り返す転妻たちは、いわば引っ越しのプロ。今回の企画にも“転妻目線”が大いに生かされたそうだが、いったいどのような家が出来上がったのだろうか。

転勤妻が大切にしたいことは?

今回のコラボ企画は、ミサワホームの時短ママ社員である梅田毎美さんとTKT48代表の奥田美和さんが出会ったことから始まった。

TKT48からは、不動産業界ではたらいた経験もある転妻4人が参加。単純な「お母さん目線」ではなく、「転妻目線」であることにこだわったという。「転勤先では親類など頼れる人が少なくお母さんが背負うものは大きい。唯一頼れる夫との時間を大事にできるような家造りを提案したかったのです」(転妻メンバーのリーダー、河西寛枝さん)。

だから提案書にはこんなコンセプトを掲げた。「PAPATO~“パパッと”家事を終わらせ “パパッと”しまう さあ、“パパと”家族を愉しもう~」。家事時間を短縮し、夫や子どもとの時間を大切にしたいという思いを込めたのだ。

家事時間を短縮できれば、夫や子どもたちとの時間を大切にできる

まずは、家事時間の短縮になる、片づけやすい家にこだわった。

引っ越しに慣れている転妻たちでも賃貸物件で苦労するのが玄関や洗面所、台所の収納。スッキリさせたければあふれたモノを違う場所に収めるしかないが、モノを使う場所としまう場所が違えば家事の効率は落ちる。だから特にこの3カ所はスペースを割き「適材適所の収納」を意識した。また、スーパーから帰宅してすぐに食材を整理できるよう、玄関から台所への動線も工夫した。

洗濯ものを一時置きできるスペースも

一方で、お母さんが“頑張りすぎない”ようにする配慮も。家事を一休みしたいときに備え、リビングにつながる一室は、おもちゃや洗濯物など後で片付けたいものを一時置きできる部屋にした。扉を閉めれば、スッキリとしたリビングが保てるので気持ちよく過ごせる。

収納しながら「見せる」蔵

「家族との時間」を密にする工夫も盛り込んだ。

シーズンオフのモノなどを大量にしまえるのが、高さ1.4m・10畳の「蔵」。写真や子どもの作品を飾れるギャラリー機能を持たせることで、家族が思い出を共有できるようにした。単身赴任中のお父さんが帰宅したときには、子どもの成長をかみしめることができるような「見せる」収納空間だ。また、子どもが水遊びをしたり夫婦が語らったりできるよう、ルーフバルコニーは8畳弱まで広げて水栓を付けた。

家族の思い出を共有できる「見せる」収納空間

転妻経験が生かされた家であることは間違いないが、「やっぱり元専門職の方たちだからこそできた家」と、ミサワホームの梅田さんは強調する。「他のママ団体だったら、これだけ充実した仕掛けのある家にはならなかったでしょう」。

河西さんは、2年前まで不動産会社で8年はたらいていた。注文住宅の営業から戸建て分譲の設計、事業企画や商品・建材の開発まで広く携わっていたそうだ。元専門職としての経験とプロ意識があるから、提案書も他のママ団体との差別化にこだわった。「地元妻との違いは何か、転妻だから得意なことは何かなど、転妻目線をどう入れるかはチーム内で相当議論しました」(河西さん)。

設計過程でも細部まで念入りにチェック。たとえば、図面が上がってきた段階で、パース(完成予想図)を描きイメージを確認してみたり、メンバー全員の自宅収納の写真を並べ、本当に収納したい量が収まるのかなど徹底検証したという。

子どもが寝たあとネットで会議

アイデア出しから図面完成までの約3カ月間、TKT48とミサワホームとの対面打ち合わせは8回。転妻チームの4人は、子どもが寝た後にネットで議論を重ねたそうだ。体力的に厳しかったのではと想像するが、転妻たちは全員こう言い切る。「すごく楽しかった!」

不動産業界経験のある転妻たちが議論を重ねた

河西さんにとっては社会復帰の準備運動にもなったようで、住宅関連の仕事を在宅で請け負うことになった。ほかにも「不動産業界を離れて10年経つが、復帰場所として検討したい」と考え始めたメンバーもいる。

不動産業界経験のある転妻たちを選抜して送り出したTKT48の奥田さんは、今回のコラボ企画で専門職経験の強さをあらためて感じたそう。「子育て中の転妻、というハンデがあっても、専門職経験が役に立つという事例ができました。企業にも眠れる人材に注目してもらいたいです」(奥田さん)。

夫の転勤を機に仕事を辞めたお母さんはもちろん、元専門職のお母さんたちにとっても、“転妻目線”が生きた今回の企画は、自らの力を生かすヒントになりそうだ。

  • この記事をシェア
トップへ戻る