親子に愛される「ねるねるねるね」の秘密

ねるねるねるね一日の中で、子どもがいちばん一番楽しみにしている時間――それは、おやつの時間だろう。とはいえ量によってはご飯が食べられなくなるし、虫歯も気になる。親にとっておやつは悩みの種でもある。

そんな中、子どもと親の両方から支持されているお菓子がある。クラシエフーズが展開する知育菓子シリーズだ。少子化にもかかわらず、売り上げは年々右肩上がり。10億円なら大ヒットと言われるお菓子市場において、2013年には売り上げが50億円を突破、10年前に比べて2倍以上の伸びとなっている。

ねるねるねるねはあやしい?

クラシエの知育菓子シリーズの中でも代表的なのは、黒ずくめの魔女と「テーレッテレー♪」というメロディのCMでおなじみの「ねるねるねるね」だろう。2つの粉に水を加えて練ると色が変わる、不思議なお菓子。知育菓子シリーズの中で最も売れていて、現在では、全国のスーパーの9割に置かれている。

ねるねるねるね

理科離れにも一役買っている

家で楽しまれるだけでなく、知育教材として教育現場でも注目を集めている。

子どもたちの理科離れを危惧する学校側の思いも受けて、2016年には幼稚園20園、小学校25校で理科の先生やクラシエの担当者が知育菓子を教材にした授業を行った。夏休みの自由研究の題材としての需要も高まり、16年7月には食べるだけでなく実験も楽しめる「じっけんねるねる」を期間限定で発売したところ大ヒットした。

ねるねるねるね,じっけんねるねる

じっけんねるねるは発売月の16年7月にヒットし、今夏も発売予定

とはいえ、1986年の発売以来、ねるねるねるねシリーズが右肩上がりで売れ続けていたわけではない。11年にクラシエが調べたところ、ねるねるねるねの売り上げは5年前の06年から半減してしまっていたという。

理由はイメージの悪さだった。1000人のお母さんにアンケートを行ったところ、ねるねるねるねを知っている人は9割に上るものの、「子どもに買ってあげたいか」という質問には半数がNoと答えたのだ。「体に悪そう」「あやしい」というのがその理由だ。

紫色の正体はあの野菜

お菓子を選ぶのは子どもでも、買うのはお母さん。お母さんに安心して買ってもらえるように、パッケージを改良した。保存料と合成着色料がゼロであることを明記し、なぜ色が変わるのか、なぜ泡が出て膨らむのか、大胆にも“ネタばらし”をしたのだ。

ねるねるねるねの着色料は、もともとすべて野菜由来で保存料や合成着色料は使っていない。ブドウ味の紫色の正体は紫キャベツ。紫キャベツに含まれるアントシアニンは酸性になると赤に変わり、アルカリ性になると青に変わる。この性質を使って色を変えているのだ。泡が出て膨らむのは、重曹とレモンの酸(クエン酸)が反応するためだ。

味も改良した。子どもたちをサンプルに調査してみたところ、酸っぱいという声が多く寄せられたからだ。給食で出されるマヨネーズや子ども向けの炭酸飲料は、大人向けよりも酸味を抑えているため、子どももほどよい酸味に慣れている。「酸っぱさの後に甘さがくる」という従来の味わいから「ジューシーで甘い」へと大幅に変更した。

ねるねるねるね

親子の声を商品改良に生かした Photo by MARIA

商品のリニューアルに合わせて、数十年ぶりに「魔女さん」が登場するCMを流したところ、「あの魔女CMが復活!」といった取り上げられ方で拡散したことも後押しとなり、翌年から売り上げがV字回復したという。

以来クラシエでは、年間500組以上の親子に会って意見を聞くようになった。親子がお菓子の制作と試食をするそばで社員がストップウォッチを持ち、どのくらい制作時間がかかったかを計測。子どもの表情や親子の会話から、味の感想や制作過程の様子などを細かくメモし、新商品の開発、味や食感のリニューアルに生かしている。

お菓子でコミュニケーション

知育菓子シリーズが順調に売り上げを伸ばしているのは、こうした地道な努力があってのこと。ただ、「親の意識が変わったことも大きく影響している」と、マーケティング担当の津田未典さんは分析する。

ねるねるねるねは2歳以上を対象としているが、小さな袋を開けて付属のトレーに入れ、水を計って加えて混ぜて……といった工程には親の手が必要になる。以前であれば「面倒くさい」「時間がとられる」といった声も多かったという。

ねるねるねるね

ねるねるねるねはコミュニケーションツールにもなる

ところが東日本大震災後、状況が一変した。「親子で過ごす時間が見直され、知育菓子がコミュニケーションツールになってきた」(津田さん)。ねるねるねるね研究室のフェイスブックページには、親子でお菓子を作る様子が、消費者から頻繁に投稿されてくるようになったという。

ねるねるねるねが支持される理由は、単なるお菓子という枠組みを超えたところにあったのだ。

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