子育て世帯の地方移住が増えるワケ

移住

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連日深夜残業の夫、お受験や習い事、塾通いに明け暮れる子どもたち……。「この生活で本当にいいの?」「家族の時間をもっと大切にしたい」。そう思って大きな決断をし、地方に移住する人たちが最近増えている。

小林純子さん一家は、娘さんが小学2年生に上がる2015年春、東京から三重県津市に移住をした。旦那さんは新聞記者。職業柄、休みも生活リズムも不規則で、家族の時間はほとんどなかった。子どもが生まれ、東京都心に家も買っていたけれど、それでも移住を決めた。

「大きく変わったのは、家族で過ごす時間の長さです。夕食を一緒に囲む時間やアウトドアのレジャーを楽しむ時間を持てるようになりました。夫は狩猟をやりたいと言い出し、資格も取りました」(小林さん)。小林さん自身もフリーランスでウェブデザイナーをしながら、地元でヨガ教室を始めた。

仕事ありきの移住がメインに

「リタイアしたら、のんびり田舎暮らしを」というのは、今は昔。最近、地方移住するのは、リタイア世代ではなく、子育て真っ最中20〜40代が中心だ。筆者の周りにも、30代で地方に移り住んだ家族がチラホラいる。

東京、大阪、愛知を除く44道府県の移住相談窓口が一堂に軒を連ねる認定NPOふるさと回帰支援センター(東京・有楽町)によると、2008年時点で移住相談に来る人の7割が50代以上だった。だが15年は7割近くが40代以下。ここ7~8年で割合が逆転してしまったのだそうだ。

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ふるさと回帰支援センターは元々、団塊世代がリタイアした後の移住をサポートするため、02年11月に設立された。しかし東日本大震災をきっかけに、若い世代の移住希望者が急増したのだという。設立当初、月20〜30件程度だった問い合わせ件数も、今では月2000件を超える。

代表理事の高橋公さんによれば、センター開設当初は移住希望者の8割が悠々自適な生活を求めていたため、移住先も中山間地域が多かった。しかし「最近は会社勤めをしたい人が6割以上を占め、地方都市への移住が増えています。20〜30代の4割以上が自分のふるさとに戻るUターンを希望するなど、若い人ほど地元志向が強い」(高橋さん)。

自治体も専門職を募集

小林純子さん一家も「何年も前から移住について考えていたけれど、家族が暮らしていけるだけの収入がないと移住はできないと思い、なかなか実行に移せなかった」と言う。あるとき小林さんが津市での採用情報を見つけて旦那さんに勧めたところ、とんとん拍子に仕事が決まった。そこで家を売って、2カ月後には移住することになった。

子育て世代が移住を考える場合、「仕事をどうするか」は最重要テーマだ。そのため、ふるさと回帰支援センターも移住希望者の就職サポートに力を入れている。センター内に入る全自治体が地元の就職斡旋をし、全国の職業紹介をするハローワークをセンター内に入れている。お父さんが単独で仕事の相談に来るケースも少なくない。

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「とはいえ決定権を持っているのはだいたい奥さん。そうでないとうまくいかない」(ふるさと回帰支援センター・高橋さん)。セミナーには家族連れで来る人が多いそうだ。

全国の自治体のおよそ7割が加入する一般社団法人移住・交流推進機構(JOIN)が今年1月に開催した「JOIN移住・交流&地域おこしフェア」には、過去最高となる466の自治体や事業者が参加した。
「当日はベビーカーを押した家族連れが大勢いて、親子で遊べる木育キッズコーナーは満員でした」(JOIN・北澤美沙さん)と、大盛況だった様子。2017年の統計はまだ出ていないが、昨年同フェアに参加した人の約7割が40代以下、約4割が3年以内の移住を希望していたそうだ。

「いずれは田舎暮らしを」と思っているなら、将来ではなく今考えてみてもいいかもしれない。

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