髪を切って病気の子どもたちを応援するヘアドネーション

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長く伸びた髪を寄付する社会貢献「ヘアドネーション」が全国でじわじわと広がってきている。寄付された髪でウイッグを作って、がん治療や脱毛症、抜毛症などに悩む子どもたちにプレゼントする活動だ。

メディアなどの影響もあり賛同者は急増しているものの、実はまだまだ髪は足りていない。1体のウイッグを作るのに必要な髪はなんと20~30人分。2017年1月現在で順番待ちの子どもたちは127人で、申し込みから最長2年かかる。私たちにできることは何か。当事者たちの声を聞いた。

人気女優が火付け役に

活動を展開するのはNPO法人Japan Hair Donation & Charity(JHDAC:ジャーダック、本部:大阪市)。09年9月1日に法人を設立し、今年で8年目を迎える。当初はひと月に1人送ってくれる程度の小さな規模だったが、14年にNHKの人気番組で取り上げられたことで一気に拡大。その後も人気女優がばっさり切った髪を寄付したことが話題となり、賛同美容室も増加して現在は全国1600店になった。

毎日送られてくる大量の髪は、事務局で仕分けして中国の工場に送り、そこでトリートメント処理が施される。それから子どもたちの採寸をして、国内ウイッグメーカー2社に手植えのフルオーダーウイッグを制作してもらう。その後子どもたちが試着し、ボランティアの美容師が希望の髪形にカットしてやっと完成する。

子どもたちの心にも届けたい

ジャーダック代表理事の渡辺貴一さん(45)は、順番を待つ子どもたちの採寸のため、美容師の本業をやりくりしながら全国を飛び回っている。一人ひとりサイズを測って好みの長さを聞く。すべてボランティアだ。休みはまったくない。それでもこの活動を続ける理由は「子どもたちのため」。

活動に参加するのはボランティアの美容師

活動に参加するのはボランティアの美容師

待ちに待ったウイッグは、受け取った子どもの心にまで影響を与えることもあるという。髪を自分で抜いてしまう抜毛症の小学生の女の子が、ウイッグの提供を受けてから症状が和らいだというケースもあった。渡辺さんは「『私の髪の毛でよかったら使ってください』というドナー(提供者)一人ひとりの気持ちが、その子の心に直接届いたと感じました。活動の本質を目の当たりにしました」とやりがいを語る。

今、ジャーダックがいちばん必要としているのはボランティア活動を広めること。「ロングヘアの女性に『髪を切るなら寄付してみない?』と声をかけたりして、次の人にバトンを渡して先につなげていってほしい」と渡辺さんは話す。

美容師が広げる活動の輪

約3年半前から美容室「ドレスヘアー」(東京都渋谷区)でヘアドネーション活動をしているの美容師、中庭廣明さん(38)は、個人から個人へバトンでつないでもらうため、ブログで積極的に情報を公開している。

読者の関心は高くその登録数は1200人を超える。中庭さんの店で髪を寄付した人にはビフォー&アフターの写真を撮って送り、個人がSNSで発信して活動の輪が拡大することを願う。また賛同する美容師を対象に、ヘアドネーションのカット技術も公開している。それを見た全国の美容室やドナーからの反響は大きいという。

首都圏だけでなく地方にも輪は広がっている。美容室「カンパニュラ」(静岡県島田市)を営む美容師、赤堀知佐さん(36)は、愛媛県の美容室のブログを見て活動の存在を知ったという。「出産して子どもの尊さを知ったので、髪で悩む子どもや親の気持ちを思うと胸が痛み、居ても立ってもいられませんでした」と話す。

赤堀さんもブログで活動を詳細につづっている。それを見て遠方からやってくる人も多い。1月下旬、母親と寄付に訪れた女子高校生の由香さん(仮名、16)もその一人。2年前、テレビ番組で活動を知って母と一緒に髪を伸ばし始めた。背中まで伸びた髪にザクッと自分で記念にはさみを入れると「ただ切るだけで社会貢献できる。周りの友だちにも広めたい」と晴れ晴れした表情を浮かべた。

活動を知って、遠方から髪を切りに来る人も

活動を知って、遠方から髪を切りに来る人も

髪に悩む人の存在を知る

最近は、学生や子どもの積極的な参加が目立つ。参加することで髪の病気で悩む人の存在を知ることにもつながる。渡辺さんは「髪の毛の疾患はそれによって命を絶つ人もいるくらい、重い問題をはらんでいる。生えている人にとっては空気のような存在でも、生えていない人にとっては宝物。早い段階で髪に悩む人のことを知ってもらい、心ない言葉やいじめで傷がつく子どもが少なくなっていってほしい」と親子での参加を呼びかけている。

活動の知名度は上がったが、課題も山積みだ。現在事務局の専属スタッフはたったの2人。また、1体のウイッグを作る費用は約10万円で、資金不足も深刻だ。とはいえ、あくまで「善意の活動」なので募金を呼びかける難しさも抱える。ニーズとのマッチングも難しい。募集しているのは31㎝以上の髪。けれど希望が多いのは、腰よりも長く伸ばした髪(50㎝以上)が必要なロングヘアのウイッグだという。

活動の知名度は上がったが、課題は山積み

活動の知名度は上がったが、課題は山積み

家事や育児に追われているとなかなか美容室へ行けないこともある。それなら七五三や入学といった子どもの節目を目標にして、髪を育ててはどうだろうか。

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