世界初の「洗濯物畳み機」は妻の一言から生まれた

Photo by MARIA

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年が明けて2017年3月、洗濯物を畳んで収納してくれる家電、「ランドロイド・ワン」が世に出る。乾いた洗濯物を放り込めば自動で畳んで、指示したとおりに備え付けの引き出しにしまってくれる。家に1台あれば毎日の家事がグッとラクになりそうだ。

世界初となるこの家電を開発したのは、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズというベンチャー企業。社長の阪根信一さんが11年にわたって開発し続けてきたのは、妻の夢を実現させたいという思いからだった。

畳む・しまうに9000時間

「あるとき『まだ世にないけれど、家の中にあれば便利な家電って何かな』と聞いてみたら、『洗濯物を畳んでくれる家電があればうれしいわ』と言われたんです。子どもが小さいと服を汚して洗濯することも多いので、なるほどなと思いました」(阪根さん)

現在4人の子どもを育てる阪根家では、子どもたちがスポーツにいそしむこともあって「一日中洗濯機を回しっぱなし」(阪根さん)なのだそう。「洗う」「乾かす」は洗濯機と乾燥機がやってくれても、「畳む」「しまう」が意外に面倒だ。

畳む・しまうが意外と面倒で、部屋も散らかる

畳む・しまうが意外と面倒で、部屋も散らかる

4人家族の洗濯を一手に引き受けるお母さんが「畳む」「しまう」に費やす時間は、一生に直してみるとなんと9000時間、375日にも上るという。「畳む時間がなくなれば、お母さんがほかのことに時間を使えたり家族で一緒に過ごせたりしますよね」(阪根さん)

「畳む」が嫌いな家事のトップ3に入るという人も多く、周りに聞いてみても「20万~30万円くらいで手に入るならほしい」という人がかなりいた。「これは売れる」と確信した阪根さんは、父が創業した樹脂素材開発企業の社長を辞めて開発に懸けた。でもさまざまなハードルがあり、簡単にはいかなかった。

靴下のペアリングが難しい

開発にかなりの時間をかけたのは、洗濯かごの中に放り込まれたさまざまな種類の服をつまみ上げ、どんな種類の服かを認識させる、という工程だ。

ランダムに入っている洗濯物の中から1枚だけをうまくつまみ上げる。お母さんのTシャツなのかお父さんのズボンなのかを区別する。人間にとっては簡単なことでもロボットにとっては難しい。

ロボットアーム、画像認識、AI(人工知能)という三つの技術を使いながらようやく製品化できるレベルまでこぎ着けた。1枚の服をつまみ上げてから収納するまでにかかる時間は5~10分。30枚の服を畳んでしまうのに5時間ほどかかる。

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収納の方法は、タオルやTシャツといった種類で分けるか、家族ごとに分けるかをユーザーが選ぶ。家族ごとに分けて収納するには、たとえば最初に「お父さん」と入力し、お父さんの服をすべてランドロイドに認識させてしまう。ランドロイドが覚えてくれれば、次からはお父さんのシャツやズボンは自動で「お父さん専用の引き出し」にしまってくれる。

今開発中の技術もたくさんある。「たとえば靴下のペアリング。同じ黒でも微妙に素材が違ったり、片方だけがヨレていたりすると人間でも区別が難しいですよね」(阪根さん)。

ペアリングはあと1年くらいでできるようになる予定。ソフトウエアが“賢く”なれば、寝ている間などランドロイドを使っていない時間帯にアップデートされる。「どんどん進化するので、畳む時間ももっと早くなります」(阪根さん)。

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価格はまだ決まっていないけれど、普及するまではそれなりに“高級品”となりそう。広く普及して価格が20万円台くらいになるまでには10年くらいをみている。公式サイトのほか、百貨店などでも売っていく予定だ。

普及には10年

アイデアをまねられることを恐れて、ランドロイドの開発はずっと秘密にしてきた。情報を解禁したのは15年6月1日。事前に家電大手の数社にコンセプトを伝えたところ、興味を持ったパナソニックの幹部4人が解禁日に話を聞きに来てくれたのだそう。

そのパナソニックと一緒に、19年には洗濯乾燥機との一体型を発売するつもり。実現すれば、汚れた洗濯物を放り込むだけで、「洗う」「乾かす」「畳む」「しまう」が一気にできるようになる。

写真は試作機で、17年3月に発売される製品のデザインはもっと柔らかくなる

写真は試作機で、17年3月に発売される製品はもっと柔らかいデザインになる

情報を解禁してからは新しい技術者がどんどん入ってきている。それまでは最終面接でさえ何を開発しているのか明かしてこなかった。「笑い話ですが、聞かれたら『世界が驚愕する家電』と答えていました」(阪根さん)。いい人材が入社してくれないこともあったそうだ。

最初の10年は数人で開発していたが、ここ1年で役職定年を迎えた家電メーカー出身者もたくさん入り、今(16年12月)は55人体制でランドロイドを開発している。ベンチャーなのに平均年齢は40代半ば。皆、「世にないモノ」を開発しようと目を輝かせている。

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