主婦をとりこにする「料理動画」の舞台裏

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画面中央に置かれた透明のボウル。そこに豚のひき肉、万能ネギ、チューブ入りショウガ、しょうゆ、酒などをテンポよく投入し、最後に鶏がらスープと合わせたゼラチンを入れて混ぜ込む。できたタネをギョーザの皮で包んでフライパンで焼いたら、あっという間にジューシーな「焼き小籠包」の出来上がり。

最近、SNS上でこのような料理の作り方を見やすくまとめた「料理動画」を見る機会が増えた。それもそのはず。いま、日本で最も多く見られているウェブコンテンツは料理動画なのだ。

中でも人気なのは、2015年9月に設立された株式会社エブリーが運営する料理動画メディア「DELISH KITCHEN(デリッシュキッチン)」。サービス開始からわずか1年でFacebookやInstagramで190万人のファンを集め、月間動画再生数は4000万回にも上る。

動画

「焼小籠包」は動画だと作り方がわかりやすい

ユーザーは女性が9割でそのうち8割が既婚者。「日本でFacebookを使う女性のほとんどが見ている」とエブリーの担当者は言う。日本中の女性を魅了するその動画はどのように作られているのか。その背景を探りに、DELISH KITCHENの制作現場に足を運んだ。

簡単で驚きのあるレシピ

DELISH KITCHENのレシピを作るのは、数名の料理研究家や管理栄養士、調理師たち。調理経験や知識をバックにアイデアを出し、何度も話し合って試作・試食を繰り返しながら、レシピを決めていく。

Photo by MARIA

Photo by MARIA

特にこだわっているのは「再現性」。動画を視聴した後、実際に視聴者に料理を再現してもらえるようなレシピを選んでいるという。重視しているのは“手の届きやすい値段で旬の食材”を使うこと。レシピに取り上げる食材を選ぶため、料理スタッフは頻繁にスーパーに足を運ぶ。

レシピが決まったら、経験豊富な料理スタッフならではのアイデアで、調理工程を作り上げていく。冒頭で紹介した「焼き小籠包」のように、ジューシーさをゼラチンで表現したりギョーザの皮を使うなど、あっと驚くユニークなアイデアをふんだんに盛り込んでいるのだという。

見やすく、わかりやすく

再現性を高めるために、動画の編集にも力を入れている。

DELISH KITCHENの料理動画はほとんどが1分前後。創業当時はテレビの料理番組を参考に約15分としていたが、再生数が伸び悩んだ。視聴率や視聴者からのコメントをもとにスマホで見るのに最適な長さを試行錯誤し、1分ほどに変えたところ劇的に再生数が増えたという。

視聴者の9割がスマホユーザーで、スキマ時間を使ってSNSを利用している。「ほとんどの視聴者の方は、レシピを調べるためにSNSを見ているわけではありません。動画を目にして初めて、おいしそう、食べたいと思ってレシピを見る。だからこそ、視聴者の方の“ちょっと見体験”の邪魔をしないようにしています」(DELISH KITCHENの編集長で料理研究家の菅原千遥さん)。

ただ、ほかの多くの料理動画のように早送りをして1分前後にまとめているわけではない。すべての工程を見せたうえで、動画として冗長にならず楽しく見られるような方法に行き着いた。微妙な感覚やニュアンスを伝えやすいという動画の魅力を最大限に生かすためだ。

文章ではわかりづらくても動画なら伝えやすい

動画なら”感覚”を正確に伝えやすい

たとえば、レシピ本では「さっくり切る」「もったりするまで混ぜる」といった表現がよく出てくるけれど、正直わかりにくい。「文章ではわかりにくい感覚でも、正確に伝えられるのが動画のよさです」と菅原さん。

新しいメニューに出合える

DELISH KITCHENの動画は、SNSのタイムラインに自動的に流れてくる。「提案型メディア」と呼ばれるタイプで、忙しい毎日の中でレシピを検索する手間が省けるというメリットがある。「レシピ本やアプリのレシピ検索というワンステップにストレスを感じていた人にとって便利なサービス」と菅原さんは言う。

それに、レシピはランダムに表示されるので、いつもの献立とは違う新しいメニューに出合える確率が高い。毎日の献立に悩む主婦にとって、提案型はメリットの大きいうれしいサービスなのだ。

毎日の料理は、なるべく手間をかけずにレシピを選びたいし、おいしいものを作りたいと思うのが主婦。スキマ時間を活用できる動画レシピに、忙しい主婦が飛びつくのは当然かもしれない。

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