双子を乗せてお出掛けする夢をかなえる自転車

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子育てしているお母さんにとって、自転車は強い味方。子どもを自転車に乗せられるようになると、保育所や幼稚園への送迎、買い物、児童館や公園へのお出掛けもしやすくなる。行動範囲も広がるので、まさに世界が広がる。

けれど双子や年子の場合、自転車をあきらめざるをえないこともある。現在、販売されている子ども乗せ自転車は、子どもを前後に乗せると荷物を載せられなかったり、同じような体格の2人を乗せるとバランスを崩しやすいものが多い。それに幼児用座席は前後でそれぞれ年齢と体重の制限があって、2人が4歳以上になると使えない。

こうした問題をクリアし、安心・安全・快適に子どもたちを乗せられる自転車があったら……。今、そんな願いをかなえる「ふたごじてんしゃ」が開発中だ。後輪が2つの3輪タイプで安定性があり、幼児用座席は後部に2席。前にはカゴが取り付けられているから荷物も載せられ、電動アシスト付きで2人乗せてもスムーズに運転できる。

ベビーカーはあるのに…

この自転車を企画したのは、自身も双子を育てる中原美智子さん(45)。第2・3子が双子で、長男の時に購入した2輪の子ども乗せ自転車に乗ると、バランスが取れず子どもを乗せたまま転倒してしまった。

「双子用ベビーカーはあるのだから、双子用自転車もあるのでは?」とネットで検索すると、一般の自転車を個人的に双子用に改造している人たちはいるものの、販売しているものはない。自転車店やメーカーに問い合わせると、取り扱いはなく、開発予定もないという。「ないのなら、自分で作ろう!」と、中原さんは双子用自転車の開発・製品化を目指すことにした。

Photo by MARIA

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ところが協力メーカー探しは難航。「需要がない」「素人だろう?  道路交通法を知っているのか」と取り合ってもらえない状態が3年続いた。リヤカーメーカーの協力を得て2014年7月に試作機の第1号が完成するも、会社側の事情で断念しなければならなかった。

こうした苦労を乗り越え、16年2月、オージーケー技研が共同で開発・製品化してくれることになった。カゴや幼児用座席など樹脂製自転車部品のトップメーカーで、中原さんの思いに共感してくれたのだという。12月にはメーカーの展示会でふたごじてんしゃを発表し、製品化に向けて本格的に動き出す。6年越しの夢が実現しようとしている。

当たり前にお出掛けを

メーカーから「需要がない」と断り続けられてきた双子用自転車だけれど、中原さんを突き動かしたのは、自身の体験、そして双子を育てているお母さんお父さんの声だった。

幼稚園バスがなく車送迎は禁止されているので徒歩で通園するしかない、市販の自転車を買ったけれど間もなく体重オーバーになる、体調不良の子どもを幼稚園に迎えに行くとき自転車がなかったらどうしたらいいのか、双子でも自転車に乗せて川辺や公園に出かけたい――中原さんのもとには、製品化を望むこんなメッセージがたくさん届いている。

「移動の選択肢として自転車がないことは切実な問題。これまで顕在化していなかっただけなんです」と中原さんは話す。

Photo by MARIA

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中原さんの目標は「双子用自転車を作ること」そのものではない。「仕方がない」とあきらめていた人たちが、当たり前にお出掛けを楽しむ自由を持てるようになることこそがゴールだ。

中原さん自身、すでに子どもが一人いたにもかかわらず、双子の子育ては戸惑うことばかりだった。長男の時にできたことができず、育児に追われて外とのつながりもどんどんなくなっていった。児童館や公園へ遊びに行こうと思っても、自転車では転倒するかもしれないという恐怖で出掛けられなかったという。

「『双子だから仕方がないよね』と言われる場面も多いんです。双子でも長男を育てた時のような当たり前の子育てをしたいのに、なぜあきらめることが前提の子育てをしなければならないのか。気持ちが鬱々として、子育てがつらくなったこともありました」と中原さんは振り返る。

子どもたちを乗せて試作機にまたがる中原さん。製品化も見えてきた

子どもたちを乗せて試作機にまたがる中原さん。製品化も見えてきた

「気持ちを切り替えられるような、手軽におでかけできる手段があれば、心が楽になるのではないでしょうか。私にとって自転車がそういうツールだったので、同じ悩みを抱える人たちに届けたいんです」(中原さん)。製品化が実現したら、望めば誰もが使えるように、販売だけではなくレンタルやリースもできるような仕組みを作りたいと話す。

自転車はお出掛けする楽しさを手助けしてくれ、日常を豊かにしてくれるもの。中原さんのふたごじてんしゃは希望を乗せている。

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