フィンランドのおじいちゃんは子守りが得意

「赤ちゃんが誕生したら、夫婦交代で4カ月ずつ育休を取り、その後はすぐに保育園に入れるのではなく、おじいちゃんにお世話を頼むつもり」――。

第1子の出産を控えた30代前半の夫婦が話すそんなプランを聞いて、「おじいちゃんに赤ちゃんを預けるの!?」と驚いてしまった。これは今年6月、フィンランドの首都ヘルシンキを訪ねたときの話。

フィンランドでは取得期間に個人差はあるものの、父親の8割が育休を取る。そんな国の「イクメン」の話を聞こうとこの夫婦を訪問したのだが、そこで「イクジイ」の存在を知ったのである。

残業はせずに家庭で過ごす

初めはびっくりしたものの、フィンランドの人々の生活スタイルを知るにつけ、「おじいちゃんが赤ちゃんの世話をする」というのも、決して不思議な話ではないのかな、と納得するようになった。

今の日本のおじいちゃん世代といえば、「一家の大黒柱」として仕事第一で過ごしてきた人が多いだろう。だから、わが子が赤ちゃんのときにミルクをやったりオムツを替えたり、泣きやまない子を延々抱っこしたり……、そんな日常の記憶があるおじいちゃんは少ないのではないか。

でも、フィンランドでは会社員のお父さんも帰宅が早い。ヘルシンキでは夕方の4〜5時ごろ、帰宅ラッシュで道路が混雑する。日本とは違い、「残業」というのはとても例外的なこと。

夏休みも3〜4週間取るのが一般的で、はたらき盛りの男性でも家族と一緒に過ごす時間がとても長い。そうなると、お父さんも自然に子育てに参加し、赤ちゃんの世話についての理解が深まるのは間違いない。

子育てをみんなで支える

1906年に欧州で初めて女性の被選挙権が認められ、それ以降もあらゆる場面での男女平等を目指した取り組みがされてきたフィンランド。男女ともに仕事もするし家事もするのが当たり前になっているのは言うまでもない。

これには、戦前のフィンランドは比較的貧しい農業国で、女性もはたらかないことには食べていけなかったという背景もあるようだ。1919年(日本では大正時代)にはヘルシンキに初めての公立の保育園が作られたというから、はたらく親たちの子育てをみんなで支えるという意識が何世代も前から浸透してきたのかもしれない。

現在は0歳児から5歳児まで、必要な家庭に対して自治体が保育サービス(保育園や、保育者による家庭での保育など)を提供する義務があり、保育園に預けたくても入れないという待機児童の問題はない。

保育園にいつから入れるか

子育て中の親たちはみんな「いつから保育園に預けるか」を自由に決めているようだ。フィンランドでは、小学校入学前の1年間(6歳児)は「義務教育」として全員が就学前教育に通うが、それまでは、親が必要と判断したときから、保育園に入れることができるからだ。

1歳ごろから預けるのが多数派だが、「2歳になってから」という人たちにも出会った。ある夫婦は2人で1年ずつ育休を取ったと話し、保育園には預けずにナニーを雇って自宅で子どもを見てもらっているという夫婦もいた。冒頭の夫婦のようにしばらくは家族の手を借りるという家庭もある。

「2歳くらいまでは外で病気をもらってきやすいから」とか「集団生活を経験させるのは2歳くらいからがいいんじゃないか」とか、理由を聞いても人それぞれ。

日本の待機児童の多い地域では、「受け入れ枠の大きい0歳児のうちに入園させよう」とならざるえないことも多い。本当は1年くらい育休を取りたかったとしても、その意思に反して子どもを早くから預け、職場復帰するような人が増えている。個人の考え方に合わせて、保育や教育、そしてはたらき方を選ぶことができるフィンランドとの大きな違いを感じる。

この違いの根っこには歴史や文化的な背景があり、私たちがフィンランド式を取り入れることはそう簡単ではない。

それでも、家族や個人の時間を大事にし、仕事を早く切り上げて帰ろう、という文化がもう少し浸透すれば、子育てをみんなで分かち合い、お母さんたちも無理せずはたらけるようになるはずだ。

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