目黒の主婦に愛される、旬を伝え直す八百屋さん

たった2坪の売り場で月に300万円を売り上げる八百屋さんがある。スタイリッシュなのれんが目印の、「旬八青果店」だ。粗利率はなんと50%。現在、東京の城南エリアに8つの店を構える。

野菜を買うときの決め手は人によってさまざま。家族を持つお母さんの多くは、新鮮でおいしく、高すぎないものを買いたいと思っているだろう。旬八の扱う野菜は、形が悪いために“B級”“C級”とランク付けされた品。見栄えの問題でスーパーでは扱われないけれど、味はいいし新鮮だ。

価格は、その地域でいちばん「安い」とされている食品スーパーが扱う野菜の1.2倍くらい。スーパーで買うよりはやや高いけれど味と品質にこだわりたいという人に支持されている。

旬八が考える旬とは

旬八の「旬」の定義は、風土や気候、技術を総合して、「今が最もおいしい」といえる時期のこと。だから季節によっては、スーパーでは主力の野菜が旬八には置いていなかったりもする。

旬の定義にもこだわっている

旬の定義にもこだわっている

「スーパーに行けばいつでもさまざまな野菜が買える今だからこそ、『旬を伝え直す』ことに意味があると感じています。春が旬のスナップエンドウを1月に店に並べていたら『これは種子島産だから早いんですよ』とお伝えし、納得して買ってもらうようにしています」(旬八青果店を運営するアグリゲートの社長、左今克憲さん)。北海道から西表島まで、月に50近くの生産者とやり取りしながら、旬にとことんこだわっている。

野菜のバイヤーは、左今さんを含めて3人。生産者から直接仕入れる「産直」だと、ほとんどのの生産現場に直接出向き、目で見て味わって、仕入れるかどうかを判断するそうだ。産直の場合、「いつどれくらいの農薬を使ったか」など生産の記録をきちんと残している農家とだけ取引している。

生産現場には直接出向く

生産現場には直接出向く

農協や市場を通してしか出回らない野菜もあるので、仕入れは産直だけにこだわらない。つねに価格や品質のバランスを見ながら仕入れ、その月その月の“ベストメンバー”を店に並べている。

スーパーで安く売られる野菜は、数を集めるために在庫として取り置きされることが多く、店に並んだときにはやや古くなっていることもある。でも旬八では、産直はもちろん、市場で仕入れた野菜がすぐに店に並ぶ。新鮮なものを適量ずつ並べているからはけるのが早く、店頭のお客さんの反応を見ながら日々の買い付けを変えることもできる。

スタッフは自由に試食

「おいしさ」をバイヤー任せにしないというのも特徴の一つ。店に届くすべての商品は、スタッフが自由に試食をしていいことになっている。商品の値付けをするのは各店のスタッフなので、「おいしさ」を知るための試食は大切な業務なのだ。

スタッフは自由に試食して魅力をお客さんに伝える

スタッフは自由に試食して魅力をお客さんに伝える

さらに、お勧めの野菜や果物は、大胆に試食コーナーを設け、お客さんに試食してもらう。店頭で拾った声はもちろん、SNS上においしさの感想を載せてくれる人の声も丁寧に集めながら、積極的に仕入れに反映させている。

つまり、商品の取引を続けていくかどうかは、店のスタッフとお客様の“舌”が決めるということ。「農家と親しいバイヤーよりも、スタッフやお客さんのほうが客観的に、“厳しくも正直な意見”をくれることがあるんです」(左今さん)。

いつどんなふうに食べる?

左今さんが八百屋さんをオープンすることになったきっかけは、今から3年前、あるスーパーの一角で野菜を販売したことだった。「ただ売るだけでなく、野菜がどこで採れてどんなふうに育ったか、いつどんなふうに食べるとおいしいかを伝えたら、いつもの3~6倍も売れたんです」(左今さん)。

だから旬八では、びっくりするくらい野菜に関する情報を伝えるようにしている。カボチャやサツマイモは採れたてだと硬すぎるので少し置いておいたほうがいいといった野菜の取り扱い方から、葉付きニンジンの葉っぱをどうすればおいしく食べられるのかといった調理法、柿の果肉が黒くなるのはなぜかといった小ネタ。お客さんが知りたい情報に「プラスアルファ」して伝える。

いつ食べたらよりおいしいかも教えてくれる

いつ食べたらよりおいしいかも教えてくれる

旬八は目黒や大崎、渋谷といった城南エリアに集中して店を出している。共通しているのは「食へのリテラシーが高い人が多い」(左今さん)ということ。野菜を使った総菜のほか、肉やパン、お菓子もよく売れるそうだ。

店ごとに特徴があり、たとえば目黒通りに面した下目黒店はコストパフォーマンスにも目を光らせる主婦が多いので、お客さんの反応を見ながら値付けも工夫する。同じ目黒区でも、中目黒に近い目黒警察署前店では料理に手をかける人が多く、ハーブの品ぞろえを増やすといった提案で要望に応えている。

来年には城南エリアで新たに7店舗をオープン。2020年には上場し、80店舗まで増やすことを目指す。よいものを相応の値段で、知識を得ながら納得して買える八百屋さんはこの地域でますますヒットしそうだ。

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