盲導犬を連れた人が困っていたら


視覚障害のある人の目となり、生活をサポートする盲導犬。CMや広告を目にしたり、街中で見掛けたことのある人もいるかもしれない。

2016年8月、盲導犬を連れた男性が駅のホームから転落して亡くなるという事故が起こった。調べてみると、同じような事故は少なくない。もしそんな場面に出合ったら、どうしたらいいのだろう。

ペアで120km歩く

アイメイト協会は盲導犬を訓練し、視覚障害者に提供している団体。現在、日本ではたらく盲導犬は約1000頭で、うち4分の1以上がアイメイト協会の出身だ。

Photo by MARIA

Photo by MARIA

盲導犬は一歩間違えると、使用者の命にかかわることもある。だからアイメイト協会では、さまざまなシーンを想定して念入りな訓練をしている。驚くのはその細やかさ。使用者の前を歩いて道を知らせるだけではない。電車やバスで座席が空いていれば鼻先を乗せて場所を知らせ、使用者が「進め」の合図を出しても車が近づいていたら止まっているよう訓練される。

盲導犬の訓練が終わったら、盲導犬使用の希望者が訓練所に4週間泊まり込み、一緒に歩くための「歩行指導」に移る。実際の道を使って信号の渡り方や電車・バスの乗り方を覚え、1人と1頭のペアでどこでも行けるようにする。この訓練でペアが歩く距離は120キロにもなるという。

入店拒否は法律違反

盲導犬を使っている視覚障害者は、盲導犬の食事からトイレ、健康管理まですべて責任を持ってケアする。とくに気を付けているのが衛生面で、ブラッシングやシャンプーを徹底している人がほとんどだそう。抜け毛を防ぐために洋服を着せる場合もあり、外出先で周囲に迷惑をかけないようにできるかぎり注意している。

Photo by MARIA

Photo by MARIA

そうした努力にもかかわらず、いまだ盲導犬を連れている人の多くは嫌な思いをしている。よくあるのはレストランへの入店拒否で、ホテルで宿泊を断られたり、タクシーに乗れなかったりすることもあるという。

職場で嫌がらせを受けたり、マンションやアパートに住んでいる場合には受け入れを拒否されたりすることもある。でも実は、きちんとした理由もなく盲導犬を拒否するのは法律違反になる。2016年4月に障害者差別解消法が施行され、特別な事情がないかぎり盲導犬同伴での入場や入店を拒否してはならないことになっているのだ。アイメイト協会代表理事の塩屋隆男さんは「この法律自体がまだ知られておらず、差別を経験している人は多いのです」と話す。

「前後左右」で伝える

嫌がらせ以外にも、進む方向がわからなくなって困ったり、気づかずに危険なほうへ歩いて行ってしまうという苦労もある。盲導犬と一緒にいて困っていそうな人を見かけたら、どうしたらいいのだろう。

塩屋さんは「まずは『こんにちは、何かお手伝いしましょうか』と声をかけてください。声を出して言葉をかけるのが第一。手伝いが必要なければ、『お気を付けて』と別れればいいのです」とアドバイスする。また、危険がすぐ迫っている状況なら、「ストップ!」と大声で教えてほしいという。

盲導犬には触れない

盲導犬に触れたりアイコンタクトしたりはNG

道案内をすることになったら、場所や方向は「東西南北」ではなく「前後左右」で伝える。方向を時計の文字盤に例えて「1時の方向に階段がある」と知らせてもいい。一緒に歩くなら、盲導犬がいるのと反対側の手を自分のひじにかけてもらうようにすれば十分だ。

盲導犬に触るのは厳禁。声をかけたり写真を撮るのはもちろん、アイコンタクトを取るのもよくない。使用者と一緒に歩くのは盲導犬の「仕事」であり、邪魔されると仕事に集中できなくなってしまう。盲導犬にゴミが付いているなどの場合も、自分で取ったりせず、使用者に伝えたほうがいい。

Photo by MARIA

Photo by MARIA

とはいえ、盲導犬をペット扱いすることさえ避ければ、特別なことはなにも必要ない。「目が不自由だからといって、そのことに特別気を使う必要はありません。伝え方や道案内には少し工夫が必要ですが、それ以外は他の人と同じように接してくれればよいのです」と塩屋さん。

今度、困っている人に出会ったら、ぜひ勇気を出して声をかけてほしい。

  • この記事をシェア
トップへ戻る