週一しか届かない「生協宅配」、なぜ便利?

今日注文すれば明日届く時代になったのに、頼りにしている“アナログ”なサービスがある。生協の宅配だ。

生協の配達員さんは週に一度、決まった時間に、商品を玄関まで持ってきてくれる。商品と一緒にずっしりと重いカタログが10冊ほど。地域のニュースや配達員さんからのメッセージが添えられていることもある。

翌日配送のアマゾンは確かに便利だし、駅前の食品スーパーでは特売の野菜が手に入る。それなのに、なぜ生協を使ってしまうのだろう。

アイデアとおカネを出し合う

全国131の生協の宅配事業の売り上げ(供給高)は1.7兆円で、ここ数年伸び続けている(日本生活協同組合連合会調べ)。ネット通販などライバルがたくさんいる中で、これはすごいことだ。

Photo by MARIA

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生協は、「生活協同組合」の略称。皆でおカネ(出資金)を出し合って意見を出しながら運営していこうという狙いを持っていて、各地にいくつもある。日頃はあまり意識しないけれど「生協を使っている」ということは「生協の組合員だ」ということでもある。

ちなみに、法律にのっとっていれば生協は誰でも作ることができる。同じ地域でもいくつかの生協があるのはそのためだ。

週刊ジャンプに次ぐ180万部

東京・千葉・埼玉エリアが集まった「コープみらい」を中心に8つの都県をカバーするのは、コープデリ。商品力を高めるために複数の生協が一緒になっており、日本でいちばん大きな生協の集まりなのだそう。

コープデリは毎週5500品目の商品を、カタログやウェブサイトを通じて売っている。100ページに上るメインカタログの発行部数は、なんと『週刊ジャンプ』に次ぐ180万部。毎週コープデリを使っている組合員は175万人いて、本部には年間13万もの声が届く。

生産者をよりすぐった安全安心な商品がウリ

生産者や産地をよりすぐった商品がウリ

「組合員さんとの距離感が近いからこそ、声を生かしたオリジナル商品の開発には力を入れています」と、宅配商品企画部の長島淳一さん。小さな子ども向けに骨を取って甘く味付けした煮魚や、保存料を使っていないのに1カ月も日持ちする豆腐、作った工場の場所まできちんとわかるウインナーなど「かゆいところに手が届く」商品をたくさん開発してきた。

「○○さん」と呼ばれる関係

声がダイレクトに形になる仕組みはもちろん、玄関先まで配達に来るというシステムも生協の強さ。顔なじみの配達員さんに、「今週のカタログに載っているイクラは私のイチオシなんです」と笑顔で言われると、「それなら」とつい注文してしまう。

配達員さんの名前をいつの間にか覚えてしまうことも

配達員さんの名前をいつの間にか覚えてしまうことも

こうした配達員と組合員とのコミュニケーションを生協は大切にしてきた。ネット通販だと玄関先に来るのは宅配会社の人だが、生協なら毎週同じ人が運んで来てくれる。だからいつの間にか配達員さんの名前も覚えてしまう。

玄関先まで来るからこそ拾える声もある。

生協のカタログを見て野菜を注文するということは、野菜の目利きを生協に委ねるということ。だから配達員は商品を届けるとき、前の週に届けた品物に何か「困りごと」がなかったかどうかを尋ねる。組合員から「先週のキャベツは巻きが悪かった」と言われればおカネを返すこともある。

Photo by MARIA

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とはいえ最近は日中出掛けている人も多く、「若い世代、特に30~40代の組合員さんの半数には玄関先で会えないようになってきました」(長島さん)。そこで考えたのが、配達員がお勧め商品や地域のイベントを紹介する「担当者ニュース」。

いばらきコープ(茨城)では、配達員の顔写真入りのコミュニケーションカードを作り、手書きのメッセージで互いにやり取りできるようにしている。「配達してくれる人の人柄がよく伝わる」と組合員にも好評だという。

「糠さんま」って?

全国の生協を取りまとめている日生協によると生協の組合員の平均年齢は55歳くらいで、半数がシニア層。「若い人たちにもっと生協のファンになってもらいたいんです」と長島さんは言う。

カタログの一面を使って産地の魅力を伝える

カタログの一面を使って産地の魅力を伝える

コープデリは昨秋、商品や営業などさまざまな部門から子どもを持つ女性10人を集めて「子育てタスクプロジェクト」を立ち上げた。

小学校入学前の子がいる家庭への配送料をサービス、赤ちゃんがいる家庭には育児グッズをプレゼント、子育て世帯向けの限定クーポンやプレゼント企画……と次々にアイデアが形に。直近ではコープみらい(東京エリア)に新しく加入する人の半分が、乳幼児を持つお母さんだという。

なじみのない商品の魅力を伝えるためスペースを割く

なじみのない商品の魅力を伝えるためスペースを割く

お母さんたちは紙媒体をよく見てくれる。「特売チラシのように見える」という声もあったカタログは、産地や商品の魅力を伝えられるような見せ方へと変え始めているところ。たとえばページ一面に産地の写真を載せて「富有柿」(奈良)に込められた生産者の思いを伝えたり、一般には知られていない北海道の保存食「糠さんま」のうま味や栄養が伝わるようスペースを割いたり。

「生い立ちがはっきりとした安全でおいしい農畜産物をよりすぐっている、ということを伝えたいのです」(長島さん)。情報があふれ返る時代だからこそ、生協の目利きはお母さんたちに頼りにされる。

10月下旬に開いた「オフ会」

10月下旬に開いた「オフ会」では新商品の試食も

10月下旬には初めて、都内で組合員のオフ会を開いた。住んでいる地域を越え、「生協のファンだから」「生協を一緒によくしていきたいから」という思いで組合員同士がつながるコミュニティだ。ただおカネを出してもらうだけでなく、組合員を“ファン化”すればするほど、生協はもっと強くなりそうだ。

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