暮らしを“ファッション化”するイケアの魅力

Photo by MARIA

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日本に上陸して今年で10周年を迎えるイケア。そのイケアが実は、「再上陸から10周年」であることはご存じだろうか。

最初の日本進出は1974年。東急百貨店や湯川美術品(現アクタス)らと一緒になって、百貨店の一角で商品を売っていた。イケアは暮らしのモノすべてがイケアでそろえられることを目指し、創業時から「Everything under one roof」を掲げてきた。ただ、そのコンセプトに基づいて商品を見せたり価格を設定したりするのが難しく、86年に撤退してしまう。

2006年、イケアはあらためて、千葉県船橋市に1号店をオープンした。それから10年、今やイケアを知らない人はいない。

店ごとに年20~30軒の家庭訪問

2度目の挑戦で日本にイケアが浸透したのはなぜなのだろう。それはイケアが、日本人の消費者の好みや暮らし方をしっかりと研究し、手が届く価格をつけ、より興味をひく商品の見せ方をしてきたから。イケア・ジャパンでインテリアデザインを担当する竹川倫恵子さんは「これまで地道に取り組んできました」と振り返る。

家具だけでなく雑貨も人気だ

ニーズをつかんで商品作りに生かす

ニーズ把握のため毎年、利用者の家庭を訪問している。年間で1店舗当たり20~30軒ずつ訪れる。家での過ごし方や、暮らしに関する悩みや好みなど、1軒につき1~2時間かけてヒアリングするという。

もう一つは、インターネットでの意識調査。「食習慣」や「睡眠」など世界共通のテーマのほか、日本独自で「寝具」や「ベランダ・庭・バルコニー利用」といったテーマでも実施している。こうしたリアルな声とデータ分析を、商品の開発にも生かしているのだという。

日本でここ数年人気がある商品は、1.5人サイズの2人掛けソファ。コンパクトなサイズなので、狭い日本の家によく合う。この夏は、ひんやりとしたジェルパッドを使った枕やマットレスパッドもヒットした。じめじめした日本の夏にはぴったりだ。

日本ではジップ付きのプラスチック袋の売れ行きがいい

日本ではジップ付きのプラスチック袋の売れ行きがいい

雑貨でとても売れ行きがいいのは、ジップ付きのプラスチック袋やラベルシール。「清潔に小分けにする日本特有の文化になじみやすいのでしょう」と、竹川さんは話す。

トレンドも重視しているので、カラーやデザインなども最先端の要素をどんどん取り入れていく。だから商品の回転は速い。商品数は約9500点で、そのうち、年間で2割を新商品として投入している。 

ファッションのように身近に

商品の見せ方もうまい。寝室やリビングなどのルームセットにより、「組み合わせでここまで変わる!」という感動を与え、私たちを魅了する。よく見ると、生地をクリップで止めて垂らし、アクセント壁面を作るなど、賃貸でも使えるDIYのヒントがたくさんある。

イケアが出てくる前にも、たとえば無印良品など、インテリアを身近な存在ととらえさせてくれるブランドはほかにもあった。ただ、インテリアコーディネーターの田中綾子さん(仮名)によれば、「無印良品の見せ方には『コーディネート』という概念が薄かった」そう。「イケアは『ファッション感覚でインテリアを選ぶ人』を増やし、イケアが浸透してくることで、消費者もカラフルな雑貨の使い方に慣れました」(田中さん)。

ファッションを選ぶようにインテリアを選べるようになった

ファッションを選ぶような気軽さでインテリアを選べるように

時代の後押しもあった。この10年、日本では北欧雑貨の人気がうなぎ上り。北欧ブームは当然、スウェーデン発祥のイケアにとって追い風だっただろう。自分で商品を倉庫から持ち帰り組み立てるイケアのセルフシステムも、DIYブームの盛り上がりによってだいぶ日本人に受け入れられるようになった。

こうしたブームを支えたのが、主婦を中心としたブロガーの存在。ファッションと同じく、「インテリアもおカネをかけずオシャレに楽しみたい」と賢く考える層で、プチプラ商品などを使った暮らしをブログで発信している。それに最近では、ホームパーティーを開く人も増えてきて、あらためてイケアの鮮やかな色彩の雑貨にスポットが当たる機会も増えているようだ。

イケアが愛され続けるためには

日本人の心をつかんできたイケア。ただ最近、不安視されているのがリコールの頻発だ。今年だけでもすでにランプやベビーゲート、キッチン用品など7種のリコールがあった。

こうしたリコールがあると、家具や電気機器の購入に慎重になる消費者もいるかもしれない。「イケア商品を敬遠するリフォーム会社や工務店もあります」(田中さん)。

価格面を抑えるための「セルフ組み立て」を不安視する声も聴かれる。家具の組み立て説明書がイラストだけでわかりづらく、素人には難しいというのだ。「イケアが長く愛されるためにも、誰でも持ち帰り組み立てられる梱包サイズと重量、精度が必要ですよね」(田中さん)。

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リコールは透明性の証しでもあり、イケアも「問題が起きれば迅速に対応している」としているが、今後も重要課題であることは間違いない。

今年は富士通とコラボして、初のメード・イン・ジャパン商品となる、充電式乾電池「ラッダ」を新発売した。さらに来年の夏にはECサイトも始まる予定。ファンをさらに広げるべく、現在の8店舗から、20年までに14店舗まで増やす目標も掲げる。

この10年、日本のインテリア業界において改革者として大きく貢献したイケア。どう課題を解決しどんな役割を担っていくのか、これからの10年にも注目したい。

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