今、ハンドメイドはマルシェが熱い

Photo by YOKOHAMA HANDMADE marche

Photo by YOKOHAMA HANDMADE marche

子どもがお昼寝をしているつかの間、テーブルを片付け、パソコンを開ける。週末に控えたマルシェの仕度をするのだ。ショップカードを作り、売り場を想像しながら、袋詰めした作品を食卓テーブルに並べていく―――。子育てモードから一気にスイッチする時間だ。

顔の見えるやり取り

地方に住む橋口まりあさん(35)は、子育て中にアクセサリー作りを始めた。気晴らしや趣味というより、仕事を見据えていた。

出産する前は接客の仕事だったが、「デザイン系の専門学校で学んだスキルを生かしてみたかったのです」と橋口さん。名前やロゴをイチから考え、オリジナルブランドを立ち上げた。通販サイトでの販売からスタートしたが、顔の見えないお客さんとのやり取りが苦手だと気づき、小さな街のマルシェで店を出してみることにした。

Photo by MARIA

Photo by MARIA

アクセサリーや雑貨などたくさんの店が出るマルシェでは、並べ方やラッピング、声の掛け方一つで、お客さんの反応が違ってくる。接客業の経験もある橋口さんは、出店を重ねるごとにコツをつかめてきたという。

小さな街で自分が作ったアクセサリーを付けている人を見掛けるとたまらなくうれしい。「流行やディスプレー、接客や価格設定といったいろんな角度からの研究が必要で、仕事としてやりがいを感じています」(橋口さん)。

広がるマルシェ市場

「ホビー白書2014年版」によると、ホビー市場は今や2兆円以上。ハンドメイドの雑貨やアクセサリーなどが主だと思われる「クラフト部門」だけでも8673億円に上るという。ミンネやクリーマといった、ハンドメイドの通販サイトが大きくなってきたからだろう。

通販サイトに引っ張られて、実際にイベントなどで商品を売る「マルシェ市場」も大きくなってきている。出店者が5000人以上のビッグイベントから、数人で開く小さなカフェイベントまで規模もさまざま。店の一部や駅前広場で開かれるマルシェは、街をにぎやかにしてくれる。

9月上旬、“かわいい”をテーマにしたマルシェ、「ヨコハマハンドメイドマルシェ―GIRLS DAY OUT―」がパシフィコ横浜で開かれた。

Photo by YOKOHAMA HANDMADE marche

Photo by YOKOHAMA HANDMADE marche

会場に足を踏み入れると、出店者とお客さんの熱気に圧倒される。二日間で出店した店は計1000店。出店者層は30代半ば~後半の子育て中の女性が多いそうだ。

東北や九州から来るクリエーターもいる。交通費や出店料を考えると赤字になってしまうこともあるが、マルシェをネット販売のファン作りやお客さんとの交流の場ととらえて、“出張”するのだという。

「ハンドメイド業界では『リアルな場』が盛り上がっています。ネットではできない、お客さんとのリアルなやり取りやファン作り、仲間との出会いがありますから」と運営スタッフの輿石和政さんは話す。自由になる時間やおカネの問題があって店は持てないけれどスキルは高い、という出店者が多い。

やり取りが楽しい

会場には、子連れで出店している女性がいた。ベビーカーでお昼寝する2歳の長男の傍ら、ご主人と一緒に笑顔で接客するのはアクセサリーショップ「Blu co.」の本宮理恵さん(29)。

Photo by YOKOHAMA HANDMADE marche

Photo by YOKOHAMA HANDMADE marche

本宮さんは、出産を機に飲食店を辞めた。そして美大卒のセンスを生かし、アクセサリーの製作販売を始めた。“外で働く”ことを選ばなかったのは「この子が大きくなるまで一緒にいたかったから」だという。

「マルシェに店を出すと、お客さんの反応がよくわかります。家にこもっているだけじゃわからないこと。お客さんとのやり取りはやっぱり楽しいですね」と笑う。子どもに見つかってしまうと「ぐちゃぐちゃにされる」から、アクセサリーを作るのは、子どものお昼寝タイムか夜寝静まってから。仲間から声が掛かり、デパートの販売も決まったそうだ。

Photo by YOKOHAMA HANDMADE marche

Photo by YOKOHAMA HANDMADE marche

赤ちゃんを抱っこしながら接客していたのは、「bling♥bling」の安川香奈子さん(30)。ママ友の元スタイリスト、菊地はる海さん(39)に声を掛けられ、リボンで作ったIDネックストラップなど、オリジナルグッズを一緒に販売している。

ネットでも販売しているが、月に一回はマルシェに出すと決めている。「大きさを感じてもらい、どんなところが便利かをお客さんに直接伝えられる貴重な場。色の好みも直接聞けます」と2人は口をそろえる。

洋服のスタイリストとしてバリバリはたらいてきた菊地さんは、つわりを機に仕事を辞めた。「辞めた当初は“取り残された感”や焦りがありました。でも今はこうしてブランドを立ち上げ、マイペースにはたらいている。満足しています」(菊地さん)。

Photo by MARIA

Photo by MARIA

大量生産されたモノではなく、「世界にたった一つのいいものが欲しい」という人たちが増えたことも、ハンドメイド市場には追い風。ネットで買うより作り手の話を直接聞いて買いたい、という人も多い。ハンドメイド市場の“リアル”は、ますます熱を帯びそうだ。

  • この記事をシェア
トップへ戻る