日常使いできるあの花屋の工夫とは?

秋の訪れを感じさせてくれるダリア

秋の訪れを感じさせてくれるダリア

9月下旬のある日、東京・表参道の青山フラワーマーケットに立ち寄ったらダリアの切り花たちに迎えられた。まだ暑さも残っていたが、旬の花に囲まれると秋の訪れを感じる。

ハッとさせられたのは、鉢植えのイメージしかないダリアがすべて切り花だったこと。なんともぜいたくだ。

10月が旬のダリアの花

一輪でも存在感のあるダリア

「切り花としてのダリアの寿命はほかの花に比べると短めです。でも色鮮やかなダリアが一輪食卓にあると空間が華やぎますよ」。そう教えてくれたのは、青山フラワーマーケットを運営するパーク・コーポレーションの拝野多美さん。

ダリアを切り花として扱い始めたのは、大手では青山フラワーマーケットが最初だったそうだ。

暮らしに寄り添う

青山フラワーマーケットは業界の中では“変わった存在”だ。花屋は普通、お祝い事があったときの胡蝶蘭や葬儀のときの菊など、一度にたくさん売れる花で生計を立てている。

青山フラワーマーケットはそうした方法はとらず、個人のお客さんが日常使いできる花だけを置いている。ふらっと立ち寄って買ってもらうことを想定しているから、店には配達用の車がない。

日常に花を、という思いから

花があるだけで家の中が明るくなる

とはいえ、個人が花を買うシーンはそう多くないはず。思いつくのは、母の日のカーネーションや、仏壇に飾る仏花くらいだ。

「手にとって香りをかげて一本から買えるなら、用がなくても花屋に入ってみたくなりませんか?」と拝野さん。確かに同じ花屋であっても、赤いバラや黄色い菊がガラスケースの中に並んでいるだけなら素通りするだろう。でも店頭ににおい立つような大輪のダリアが数十本飾ってありその脇にかわいらしい300円台のミニブーケがあれば、つい足を止めてしまいそうだ。

1本から買える

青山フラワーマーケットの店には扉も冷蔵庫もない。目的がないと入りづらかった花屋に気軽に入ってもらおう、というのがその狙い。

「週に一度の仕入れ」だと、ガラス張りの冷蔵庫に入れておかなければ花が傷んでしまう。それだとお客さんが花を手に取りづらいから、こまめに仕入れて新鮮なうちに手に取って香りをかいで選んでもらう。

ブーケは300円台からと気軽に買える価格

ブーケは300円台から

すべての花にはプライスカードがついていて1本から買える。グラスに入れて飾れるブーケは300円台と気軽な価格。1人当たりの購入価格は平均1600円と花屋にしてはとても安い。

店のある地域によってどんな花が売れるかは違うので、仕入れは店の担当者に任せている。「一日に100人以上とおそらく世界で最も来店客数が多い渋谷店なら、オレンジなど明るい色の花を送別会に急いで買っていく人が多いですね。青山店ならグレーがかったピンクやベージュ、パープル系といった柔らかくてシックな色が好まれます」(拝野さん)。

仕入れは店に委ねる

仕入れは店に委ねる

花の見せ方も店それぞれ。ルールは、旬の花をいちばんいい場所に飾る、全体の10パーセントは新しい品種を仕入れる、という二つだけ。

「10パーセント」のわけは、定番でよく売れる花だけを置いていると、リピーターには飽きられてしまうから。バラ一つとっても、最近は青みがかったピンクなどニュアンスのある色やふっくらと丸い形で花びらの枚数が多いデザインが人気だという。

バラは、ニュアンスのあるカラーが人気

ニュアンスのあるカラーが人気

これが「菊」?

今年の秋、初めてチャレンジしたのが「マム」。マムは菊の別名で、海外でもその名で親しまれている。

キクというと日本ではお供えのイメージが強いが、実は形も色も大きさもさまざまで、とてもスタイリッシュに飾ることができる。花言葉は「高貴」だから、プレゼントにも最適だ。9月9日の重陽の節句、9月15日の十五夜に合わせてマムのアレンジメントを売り出したところ、意外性も受けたのかあっという間に売り切れてしまったという。

秋色のマムのブーケ。「キク」のイメージが覆る

秋色のマムのブーケ。「菊」のイメージが覆る

2~3日しか日持ちしないクチナシも、さわやかな香りを楽しんでもらおうと6月初旬に店頭に並べている。わずかな期間しか出回らないからこそ、家の中にクチナシの香りが漂えば、初夏の訪れが感じられる。

今後仕掛けていきたいのは、桃の節句や端午の節句、七夕といった日本の行事。ハロウィーンやイースターが定着する一方、昔ながらの行事が忘れられがち。桃の節句にはツボミや花が落ちにくい桃を、七夕には家で楽しめる笹を提案している。

国産へのこだわり

新鮮さにはこだわりたいから扱う花は国産が多い。「国産は、品質も違います。たとえばバラは、飾っている間にツボミの状態から花びらが一枚ずつ開いていく様子を楽しめるし、茎も細くて美しく繊細なんです」(拝野さん)。海外産だと花は大きくて見栄えがするものの、茎はまっすぐで風合いに欠けることが多いのだそう。

産地を訪れて生産者に話を聞く

産地を訪れて生産者に話を聞く

仕入れ担当者の産地見学や生産者との交流会は毎月のように開く。お客さんの反応や売れ筋を伝えると、生産者にもうれしがられるそうだ。ファッションと同じで、花も“デザイン”や見せ方を時代の空気に合わせて変えていかなければいけない。

花にももちろん流行がある

花にももちろん流行がある

気軽に手に取って選べる花屋があると花が買いやすくなり暮らしも豊かになる。そんな花屋を作るために、こうしたさまざまな工夫があったのだ。

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