“子連れでフェス”が増えた理由

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音楽フェスといえば「夏」を思い浮かべる人も多いかと思うが、実は1年中開催されている。そして意外なことに今、フェスに行く子連れファミリーが急増している。

私も今年、4歳の娘を連れてFUJI ROCK FESTIVAL(フジロック)へ行ってきた。フジロックは毎年7月に新潟県苗場スキー場で3日間開催される音楽フェス。今年でちょうど20回目の開催となる。入場ゲートから一番奥のステージまで大人の足でも30〜40分はかかるほど会場は広く、国内外の200組以上のミュージシャンたちが、大小さまざまなステージでライブをする。

私にとっては実に13年ぶりのフジロック、さらに子連れでの参加は初めて。行く前は「子連れだと疲れるだけじゃないか?」「なにかあったらどうしよう」と不安もあったが、親子ともども、楽しい時間を過ごせた。

小学生以下は無料

今回まず驚いたのは、子連れファミリーの多さ。3輪バギーを押すお母さん。赤ちゃんを抱っこしながら歩くお父さん。アウトドアウェアで山道を駆け回る子どもたち……。独身時代から13年連続で参加している今野祐子さん(34歳、子ども8歳)は、「ここ3〜4年ほどで子連れのフジロッカーが爆発的に増えた」と語る。

実際、「お子様の参加数はこの20年で30倍に増えました」と、フジロックを主宰するスマッシュの石飛智紹さんが教えてくれた。「3000本用意していた中学生以下用のリストバンドが足りなかった」というほど、今年はファミリーが目立ったそうだ。

キャンプサイトからステージに向かう子どもたち

初期のフジロックファンは今や子育て世代

子連れ参加者が増えている背景には、フジロックが20周年を迎え、初期に参加していた10〜20代の若者たちが子育て世代になったことが挙げられる。さらに主催者側も、子連れで楽しめるような取り組みに力を入れてきたことが大きな要因だろう。

子どものチケット代にはおカネがかからない。20年前のスタート時から“3世代で楽しめるフェス”というのがコンセプトだったフジロックは、もともと小学生以下は無料だった。そして20周年の今年は、中学生もチケット代がかからなかった。

さまざまなワークショップも開催

さまざまなワークショップも開催

フジロックのチケットは「1日券」が1万9000円と決して安くはないうえ、交通費や宿泊費もかかるため、この施策にファミリーは背中を押されたと考えられる。「音楽という共通言語で親子のコミュニケーションを持ってほしい、という思いがあります」(石飛さん)

メインステージであるグリーンステージ後方には、体の不自由な人や妊娠中の人、未就学児までの子どもがいる家族が利用できる「プライオリティーテント」があり、ほどよいボリュームでライブを楽しめる。間伐材を使った滑り台、ツリーハウス、木製メリーゴーランドのある「キッズ・ランド」や、木を生かしたアスレチックのある「キッズの森」も用意されている。

カラフルなブランコが自然に映えるキッズの森

カラフルなブランコが自然に映えるキッズの森

キッズ・ランドの方針は、“自分の責任で自由に遊ぶ”、そして“ケガと弁当は自分持ち”。「子どもが自由に遊ぶ姿を大人が見守り、大人たちも楽しくつながれる環境を目指しています」と石飛さん。

時には木枝を打楽器にしてみたり、リズムを取りながらアスレチックを楽しんだり……。音楽が流れる自然の中、自由な発想で遊びを作り出せる環境こそが大事なのだ。

子どもにもステージ体験を

フジロック以外の音楽フェスでも、子連れファミリーの参加は増えている。フジロック同様、日本の4大フェスの一つとして数えられるSUMMER SONIC(サマーソニック)もそう。

サマーソニックのキッズスペース

親子で楽しめる

サマーソニックのキッズスペースを運営しているのは、認可保育所の運営もするSMILE KIDS GROUP(スマイルキッズグループ)。社長の岩田眞宗さんは「13年に運営を始めて今年で3回目ですが、年々利用者は増えています」と話す。

それまでもサマーソニックはキッズスペースがあったが、「より充実させたい」との依頼が来たのだそう。スマイルキッズでは、スタッフの半数以上が保育士など資格を持った人たち。専門知識を取得したスタッフだから安心して子どもを預けられる。「危険がないかどうか、事前の現場調査は入念にしています」(岩田さん)

サマーソニックのキッズスペース

サマーソニックのキッズスペース

キッズスペースのスタッフは全員ボランティアだが、非番の時間帯にはライブを楽しめるという特典もある。子ども好き、フェス好きな、18〜65歳までの約80人がボランティア登録をしている。最近では保育士の専門学校とタイアップし、学生教育の一環としてキッズエリアで活動してもらっている。

スマイルキッズでは、フェスのカラーによってキッズスペースの内容を変えている。ロックやポップス、R&B、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)と幅広いジャンルの音楽が楽しめるサマーソニックでは、仮装しながら踊れるスペースを設けている。

「子どもたちにもステージに立ち、スポットライトを浴びる経験をしてほしいのです」と岩田さん。うちわづくりなどのワークショップや運動あそび、太鼓で自由にセッションできる「ドラムサークル」など、参加型の企画もある。

親もゆっくりと休憩できる

親もゆっくりと休憩できる

親子の絆が深まる

子連れでのフェス参加が増える一方、否定的な声があるのも確かだ。以前から「ベビーカーが邪魔だ」「親のエゴだ」といった意見を聞くことがあった。実際に私も、現地で「子どもにしてみれば迷惑な話」と知らない人につぶやかれたりもした。

「子連れフェスには賛否両論ありますが、僕は行かせたほうが子どもたちにとって得るもの、感じるものがあると思うんです。時には過酷なこともあります。でも、子どもも少しずつ我慢を覚えていくなど、年齢を重ねるごとに子どもたちとフェスの思い出、そして親子の絆が一層深まるのではないでしょうか」(岩田さん)。

フジロックにて、夕暮れどきの「グリーンステージ」後方からの眺め

フジロックにて、夕暮れどきの「グリーンステージ」後方からの眺め

岩田さんたちのような方々のおかげで、私たち子連れフェス参加者は楽しめるのだと改めて感じた。

サマーソニック以降も、9月には「ニューアコースティックキャンプ」(群馬)、「ラビリンス」(新潟)など、11月までは毎週のように同社がキッズスペースを担当する音楽フェスが目白押しだ。

秋口は気候もよく、「ニューアコースティックキャンプ」「朝霧JAM」など、キャンプを楽しみながらの音楽フェスも多い。音楽好きな方は、準備を念入りにしつつぜひ参加してみてほしい。

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