フライング タイガーに隠された秘密

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フライング タイガー コペンハーゲンの店には、行くたびに発見がある。店をぐるりと一周する間に、予定していなかったものを買ってしまう。かといってそれは数百円の品だから、「衝動買いをした」という罪悪感を持たなくて済む。

お小遣いを握り締めてユニークなデザインの文房具を選ぶ子どもたち。パーティーグッズをワクワクした目で見つめる、赤ちゃん連れのお母さん……。北欧・デンマーク発祥のこのブランドは、なぜこんなに皆を楽しませてくれるのだろう。

翻訳できない「感覚」

フライング タイガーは、色彩豊かな北欧雑貨を販売する雑貨店。20年前に北欧デンマークで生まれ、日本には2012年に上陸した。デザイン性が高く手頃な価格の雑貨が、20~40代の女性を中心に多くの支持を集めている。

店には毎月、200を超える新商品が登場する。200登場するということは、その分がどんどん切り替わるということ。だから毎月新しい発見がある。

雨の日が楽しみになりそうなデザインの「キッズアンブレラ」

雨の日が楽しみになりそうなデザインの「キッズアンブレラ」

商品開発を担当するのは、デンマークにいるデザイナーだ。大事にしているのが、「Hygge(ヒュッゲ)」。ヒュッゲは、ほかの国の言語では直訳ができない言葉だ。「友人や家族といった大切な人と一緒に、穏やかで心地よい時間を過ごすときの感覚です」と、フライングタイガーのマーケティング担当、宮木佐和子さんが教えてくれた。

デンマークの冬は太陽の出ている時間が短く、早い日だと午後2時には暗くなってしまう。外では楽しめない時間が長いからこそ、人々は家の中で過ごす空間にとてもこだわる。

2000ピースのビーズが入った「今夜はビーズイット」

2000ピースのビーズが入った「今夜はビーズイット」

だからフライング タイガーには、色とりどりのペーパーナプキンやおもてなし用の食器セットといったホームパーティー向け商品がたくさんある。ビーズ飾りを作るキットやお絵かきのできるTシャツといった、子どもでも楽しめる「家あそび」グッズも豊富。もちろん、インテリア雑貨や文房具、バッグといった一般的な雑貨も数多くそろう。 

“迷路感”に心が躍る

そうした魅力ある商品に加え、店の作り方もユニークだ。

入り口からの風景。商品棚が低いので、奥まで見渡せる

入り口からの風景。商品棚が低いので、奥まで見渡せる

9月のある日、頭に果物を飾り付けた店員さんに笑顔であいさつされて表参道ストアに入ると、「右回りの一方通行です」と声をかけられた。目当ての商品を取ってから一目散にレジへ向かうのではなく、せっかく来てもらったのだから“迷路”のような空間を楽しんでもらいたいとの思いがあるのだそう。確かに、角を曲がるたびに新しい商品に出合うので、なかなか前に進めない。

入ってすぐの場所には、毎月の新商品のコーナーが設けられている。9月のイチオシは、風刺画を描いているイギリスのアーティストとコラボした文房具。ノートの表紙には、「WE HATE MEETINGS(会議なんて大嫌い)」とのメッセージがあり、クスリと笑ってしまう。

高校生風の二人連れが手にとって盛り上がっていた

高校生風の二人連れが手に取って盛り上がっていた

入り口付近から店内を眺めてみると、なぜか「見晴らしがいい」ことに気づく。商品棚は普通より低めの143cmで、店の奥までよく見渡せる。そして、壁も天井も照明も真っ白だ。この内装は世界共通で、カラフルな商品たちをお客の目に飛び込ませるための工夫なのだという。

商品はもちろん店員さんの身なりもユニークだ。黒のTシャツこそおそろいだけれど、果物や動物の耳を頭につけたり、エコバッグを自分でチクチク縫ってエプロンに仕立ててみたり。個性豊かな「ドレスアップ」は、店員からも非日常を感じてもらおうとの狙いから。髪の色も自由なので、フライング タイガーを運営するZebra Japanには、金髪の正社員だっている。

棚が白いから色彩が映える

棚が白いから色彩が映える

広告は打たない

指型の消しゴムは100円、ジャーサラダを入れるサラダコンテナは350円……。商品は、どれもとてもお手頃価格。フライング タイガーが支持される最大の理由といっていいかもしれない。

フライング タイガーの前身となる雑貨店「Zebra」がコペンハーゲンに生まれたのは20年前。創業者であるライボシツ夫妻は、10クローネ(約150円)の別名「Tier(ティアー)」で心豊かな買い物が楽しめるよう、商品をそろえた。ちなみに「Tierって、Tigerの発音と似ているね」という娘さんの一言が、今のブランド名の由来だ。

お母さんたち人気の「ジャーサラダ」セット

お母さんたち人気の「ジャーサラダ」セット

世界29カ国650店舗以上に展開する今もお手頃価格を実現できているのはなぜだろう。一つは、「たくさん作ってたくさん売る」ことができているから。そしてもう一つは、余計な広告を打たないから。「広告予算はどの国でもごくわずか」(宮木さん)で、ファッション誌にイメージ広告を打ったからといってモノが売れる時代ではない。

広告をほとんど打たない代わりに、インスタグラムやFacebookでの投稿には力を入れている。「プロじゃない人から勧められた商品のほうが、きっと説得力がありますよね」と、宮木さん。SNSでの投稿がたくさんシェアされると、途端に来客が増えるのだそう。

アーティストDavid Shrigley氏とのコラボアイテム

アーティストDavid Shrigley氏とのコラボアイテム

アーティストとコラボしたグッズも、インスタで配信したところ、10~20代の若者たちが飛びついた。「ヨーロッパだと新聞をよく読む年配の世代に受けているのに」と、デンマーク本社の担当者も驚きの売れ具合だ。

商品力と売り方で私たちをワクワクさせてくれるフライング タイガー。店を訪れたら、“迷路”を探検しながら、暮らしを大切にするデンマークの人々の心に思いを馳せてみるのはいかがだろう。

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