低迷する旅館を救う、意外なお客さん

赤ちゃんに優しい宿が増えている

赤ちゃんに優しい宿が増えている

次の連休は家族旅行に行こうと宿泊予約サイトを見ていたら、赤ちゃん歓迎の宿というコーナーを見つけた。クリックすると、おむつや離乳食がそろっていたり、キッズルームがあるホテルや旅館が出てきた。お母さんためのエステが用意されたプランもある。

最近は赤ちゃん連れの家族旅行が増えてきているらしい。そういえば5年前に旅行に出かけたとき、私たちも1歳になったばかりの甥っ子を連れて行ったし、知り合いからも小さい子どもを連れて旅行に行ったとよく聞く。

「そうしたニーズに合わせて、ここ数年、赤ちゃんや小さなお子さんに対応した宿泊施設が増えてきました。とくにミキハウス子育て総研が認定する『ウェルカムベビーのお宿』が人気です」と教えてくれたのは、井門観光研究所の山田祐子さん。

ハイハイしても大丈夫

ウェルカムベビーのお宿とは、赤ちゃんや小さな子どものいる家族が安心して泊まれると、ミキハウス子育て総研に認定された宿のこと。主な対象は0~4歳の子どもがいる家族。

ミキハウス子育て総研は子ども服メーカー・ミキハウスの関連会社で、子育てを応援するさまざまな取り組みをしている。子育て世帯にやさしい施設の認定事業を手掛けていて、宿泊施設の認定もその一つ。

部屋の内装はハイハイしても安心な材質か、階段はベビーカーでも楽に使えるか、離乳食やアレルギー食に対応しているかなど100項目がチェックされ、70項目以上を満たすとウェルカムベビーのお宿として認められる。2016年7月末の時点で61施設が認定されている。

ベビー用品の貸し出しも

ベビー用品の貸し出しをしている宿も(写真は「京家」の貸し出し用品)

子どもや赤ちゃん向けに宿をリニューアルするのは簡単ではなく、ウェルカムベビーのお宿として認定を受けるには設備のリフォームが必要になることもあるという。でも小さな子どもの宿泊料金は大人の半分くらいで、無料の場合もある。宿を子育てファミリー向けにするメリットはあるのだろうか。

山田さんは「最近は社員旅行などが減り、ホテルや旅館は経営が厳しいところが多くなりました。特に旅館は全体的に苦しい状況にあります。けれど子育てファミリーにターゲットを絞り、設備やサービスを工夫したことで立て直した旅館も出てきました」と言う。「その一つが、京都駅前にある『京家』です」。

子育て中の4代目が営む

京家は自身も子育て中の4代目主人一家が営む小さな旅館で、全15室のうち8室が「ウェルカムベビーのお宿」として認定を受ける。2013年に赤ちゃんや小さい子ども向けの宿にリニューアルし、子育て家族目線のきめ細かいサービスで人気を集めている。

リニューアルのきっかけは、赤ちゃんを連れたお客さんたちの「安心して泊まれる宿がない」という声だった。当時の京都には子連れファミリーを受け入れる宿が少なく、子ども向けの宿泊プランがあるところも単にレトルトの離乳食を温めて出すだけというのがほとんど。

離乳食も手作り

離乳食も手作り

「2012年に長女が生まれたこともあり、バリアフリーの宿は増えているのに赤ちゃん向けの宿が増えないのはなぜだろうと思っていました」と大友さん。「もともとその頃に宿を改装することは決まっていたのですが、お客様の声を聞いて赤ちゃんや小さい子ども向けにリニューアルすることを決めました」。

リニューアルのヒントを探すため、改装期間中に当時10ヵ月の長女を連れて2週間の旅行に出かけた。赤ちゃんを連れての旅行は大変だったけれど、このときの経験が今に生かされているという。

大きめのお風呂

大きめでまるい形のお風呂

ウェルカムベビーのお宿に認定されている8室は12畳の広さがあり、角になっている部分でけがをしにくく、指を挟みにくいような工夫がされている。子どもと一緒でも入りやすいよう、お風呂は大きめで丸い。

お客さんにいちばん喜ばれているのは、無料でサービスされる離乳食。すべて手作りで、子どもの月齢やアレルギーに合わせて用意される。それにベビーチェアから食事エプロンなど貸し出しグッズも豊富。手ぶらでも不自由なく泊まれるくらい、いろいろなグッズがそろえられている。

オフシーズンがなくなった

赤ちゃんや小さい子ども向けにリニューアルしたことで、京家は大きく変わった。

以前は一人旅やカップル客がほとんどで子連れファミリーは10%以下だったのが、リニューアル後はその割合が逆転。以前は経営が苦しい時期もあったけれど、ファミリー客が集まるようになったことで稼働率が2倍以上に伸びた。

ホテルや旅館には、休日や観光シーズンに混み合い、それ以外の時期はお客さんが集まらないという問題がある。けれど小さい子どもがいると移動するのも大変なので、混雑する時期を避けることも少なくない。京家では子連れファミリーが増えたことでオフシーズンがなくなった。

貸し出ししている赤ちゃん用の「わらべぎ」

赤ちゃん用の「わらべぎ」

ミキハウス子育て総研の藤田さんは「こうしたメリットは、ウェルカムベビーのお宿に認定された施設に共通して見られます。子ども料金はなくても、設備やサービスを整えてあるので『付加価値』がつき、大人の宿泊料金に少し上乗せすることもできます」と言う。それにパパママだけでなくお祖父ちゃんやお祖母ちゃんと一緒に旅行する家族も少なくないので、その分もお客さんが増えることになる。

赤ちゃんや小さい子ども向けにリニューアルするのは大変だけれど、その見返りは十分にあるのだ。

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