あの10円菓子に詰め込まれた努力と工夫

Photo by MARIA

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コンビニやスーパーの棚で見掛けたり、イベントの景品で当たったり、ノベルティグッズとしてもらったり――。

普段、駄菓子を食べない人でも、「うまい棒」を目にする機会は多いのでは?

「うまい棒」は、ご存じ、10円で買えるスナック駄菓子。やおきんという菓子問屋が、1979年に発売をスタートした。今年で37年目。隠れたロングセラーだ。

なぜうまい棒は長く愛されているのか。「発売開始からずっと10円」という安さもあるけれども、実は次々とチャレンジをして、新しいおいしさと楽しさを提供し続けてきたことも大きい。知られざるうまい棒の秘密をいくつかご紹介したい。

「業界初」を生み出す

うまい棒は、業界初の味を次々と出し続けてきた。

「チーズ味」「めんたい味」「コーンポタージュ味」などは有名だけど、そのほかのラインナップを見ると、他社にはない珍しい味がたくさんある。最新作の「やきとり味」をはじめ、「サラミ味」「牛タン塩味」「シュガーラスク味」などは、その一例だ。

さらに、すでに発売中止になったものも、一度は食べてみたい変わり種が目白押し。「さきいか味」「ホルモン味」「かにシューマイ味」「ロブスター味」「梅おにぎり味」「ギョ!the味」「マリンビーフ味」などなど……。ちなみにマリンビーフは「うみうし」ではなく、海の幸と牛肉の味をミックスさせたようなものらしい。

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このような変わり種を次々と送り出すことで、お客を楽しませるのが、うまい棒のやり方だ。そして、売れなければすぐに撤退。発売から1年以内に消えた味が山ほどある。展開を早くすることで、お客を飽きさせない一方、見切りを早くすることで、損失をできるかぎり減らしている。

知られざる工夫

味は変わり種でも、作り方には一つひとつこだわっている。たとえば、「たこ焼き味」は、表面がカリッとしているけれども、これは一度タレをつけて焼いた後、もう一度パウダーをまぶして、さらに焼いているから。こうした「2度仕上げ」をしているのは、たこ焼き味だけだ。

また、「なっとう味」は粘りけまで再現しているし、「シュガーラスク味」は、ラスクの食感に近づけるために、独特の穴をなくしている。

隠し味にもこだわっていて、「牛タン塩味」はレモン味、「とんかつソース味」はかすかにマスタードの味が。子ども相手の駄菓子では考えられないほど、細部まで突き詰めている。

必要なところには投資も

10円という安さを実現するためには、製造にかかるコストを減らすことが必要だけど、使うべきところにはしっかり使っているのがうまい棒。

そのわかりやすい例が、早い段階からパッケージの素材に、「アルミ蒸着フィルム」を採用したこと。

今では、湿気を防止するために、スナック菓子のパッケージにアルミ蒸着フィルムを使うのは当たり前になった。でも30年前のことだ。フィルムは高価だったし、大手企業でも使っていないことが少なくなかった。そんなときに、大胆にも10円菓子に取り入れたのが、うまい棒だった。

目先のコストは上がったけれど、お菓子がしけることが減ったので、賞味期限が伸びた。味の評判もよくなり、ますます売れるようになって、コストが上がった分を吸収できたという。

隠れた楽しみ

駄菓子は、子どもを楽しませるためにパッケージの裏にダジャレや面白いセリフを書いてあるものがいくつかあるけれど、うまい棒もひそかな楽しみを用意している。

たとえば、「てりやきバーガー味」は、一見、まったく同じパッケージだけれども、実は三つのパターンがあり、キャラクターのセリフがそれぞれ違う。かつて売られていた「さきいか味」などは、6パターンもあったとか。

また、「チーズ味」は、3年前にパッケージがリニューアルされたのだけど、イラストの構図はまったく同じで、わずかにタッチが変わっている。よく見ないと気づかない。こうした、間違い探しのような楽しみをこっそり用意して、お客を楽しませている。

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このような小さな工夫を積み重ねることで、「うまい棒」は長く愛されるロングセラーになった。

あの有名企業が採用

「うまい棒」が今の時代になってもここまで広く知られているのは、ある有名企業がノベルティグッズとして使ったこともある。

2002年のこと。孫正義さん率いるソフトバンクのYahoo!BBが、ブロードバンド回線の営業ツールとして、オリジナルうまい棒を作りたいとやおきんに打診した。うまい棒がノベルティグッズとして使われたのは、これが初めてだ。

さらに、その翌年には、かつて堀江貴文さんが経営していたオン・ザ・エッヂが、「LINDOWS」というパソコンOSのノベルティグッズに採用すると、「うまい棒=ノベルティグッズ」というイメージが広まった。

こうしてノベルティとして使う企業が増えることで、ますますうまい棒が人の目に触れるようになったのである。なお、今では、フェイスウィンなどいくつかの企業で、自分の好きなデザインのオリジナルうまい棒が50本3150円から作れる。

もっとも、こうして多くの会社から起用してもらえたのも、「うまい棒」のクオリティの高さあってのことだろう。

うまい棒をかじるときには、10円の中に詰め込まれた努力と工夫に思いを馳せてみてほしい。

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