ZARAはどうしてテレビCMを打たない?

(画像はすべてインディテックス社のホームページより引用)

画像の出典はすべてinditex社

ZARAは私たちの心強い味方。最近あわただしくて、そういやファッション誌を読めていない……。そんなときでも、ZARAの店に行けばトレンドがわかる。そして、そんなに高すぎない価格で、旬のアイテムを手に入れられる。

ZARAには「ふらりと」訪れる人が多いのだそう。「今日は絶対にこれを買うんだ」と決めてZARAに行くことは少ないのだけれど、何か旬のアイテムが欲しくて店に入ってしまう。

Zara_FifthAve_NY

ZARAのアイテムは、デザイン性が高いだけでなく、とても実用的。バッグや靴といった小物たちは、数千円なのにとても今っぽい。だからついつい衝動買いをしてしまう。

最近では『VERY』などファッション誌で特集されることも多いから、ZARAを意識する機会は増えている。でも、ふと思った。そういえば、ZARAの広告ってあまり見たことがない。

たとえば、ZARAと同じくファストファッションのGU(ジーユー)は、女優やモデルを起用したテレビCMをよく打つ。

ZARAはたまにイメージ広告を見掛ける程度。この違いはどこにあるのだろう。『ユニクロ対ZARA』の著書がある、ファッション流通コンサルタントの齊藤孝浩さんに話を聞いてみた。

ストリートの女性たちを観察

わかったのは、ZARAは広告を「打たない」のではなくて、「打てない」のだということ。その理由は、商品の作り方にあった。

design

ZARAは「売れそうなもの」に的を絞って商品を作る。ニューヨークやパリ、東京といった世界の主要都市のストリートで、女性たちのファッションを観察しながら、今売れているデザインをそのまま形にする。読者モデルやブロガーといった、ファッションリーダーの発信も、つねにウォッチしているのだそう。

ZARAの本社にいるデザイナーのもとには、ストリートの女性たちの流行、そして、世界各国の店舗スタッフからの情報が、週に1度、データとして集まる。こんな商品がよく売れそうだとわかれば、デザイナーはすぐにデザインを始める。

サンプル作りの部屋

デザインが決まったら、パタンナーがサンプルを作って、Mサイズの標準体型をしたフィッティングモデルが試着をし、形をすぐに修正する。齊藤さんが以前、スペインのZARA本社を訪問したときには、デザイナーからモデルまで全員が同じフロアではたらいていたという。

速く作って速く運ぶ

本社でサンプルを作っている間にも、ZARAの自社工場では生地を染める作業が進んでいる。デザインが決まればすぐに布を裁ち、縫い、できあがりをチェックする。

そして各国の店舗へ向け、飛行機で運ぶ。飛行機で運ぶと船で運ぶより高くつくのだけれど、のんびりと数週間かけて運んでいる余裕はない。地球の裏側にある店舗にだって、発送から48時間以内に商品を並べてしまう。

工場

まったく新しいアイテムなら、デザインをスタートしてから4週間、デザインの一部や色を変えるだけのような追加のアイテムなら、なんと2週間で店に並ぶ。

これがGUなら、デザインを始めてから店頭に並ぶまでに4カ月近くかかる。ZARAの「2週間」がいかにスピーディであるかがよくわかる。

テレビCMや雑誌広告を作ろうと思ったら、店に並ぶ数カ月前にサンプルが必要。でもZARAはそんなスピードで動いていないから、広告を打てない。

もっと言えば、「売れるもの」を見極めて作っているから、店にさえ来てもらえれば売れる、という自信がある。

ZARAはとにかく一等地に大きな店を出すことを基本にしていて、出店自体が広告、という考え方もできる。

5990円から、3990円へ

そんなZARAに少しだけ変化が出てきている。店舗をよくチェックしているという齊藤さん。ここ1年くらいで、ZARAが商品の定価を下げてきたことに気づいたという。

もともとZARAの価格設定は、百貨店ブランドの半額くらい。ブラウスやシャツ、ロングパンツあたりのメインアイテムの価格は、5990円が中心だった。

それが、「去年あたりから、4990円や3990円くらいのメインアイテムが増え、カーディガンや無地のニットなら定価が1990円というものも多く見掛けるようになりました」と、齊藤さん。

国内のZARAの店舗数は、もうすぐ100店になろうとしている。都心の一等地には出し尽くしていて、これからは郊外の大きなショッピングセンターに出店していくことになりそう。「郊外でも通用する価格で、日本でのシェアを大きく広げようとしています」(齊藤さん)。

distr_prenda_colgada

6月の終わりから、ZARAではセールが始まった。セールは年に2回、6月と12月の最終週から5週間。「売れる商品」をタイムリーに出していくZARAは、定価が基本。ほかのブランドに比べてあまり値下げをしないので、この時期は貴重かもしれない。

トレンドアイテムを発信するため、店での商品の見せ方には、とても工夫をしているZARA。

でもセールの期間中は違う。「3990円のスカート」「1990円のブラウス」など、価格とアイテムごとにラックを作る。そうすると、セールに狙いを定め、“予算”を決めて店に来た客が、商品を選びやすくなる。

次にZARAに行ったとき、このアイテムはたった2週間で作られたのかも、なんて考えながら商品を眺めたら、買い物の楽しみがまた一つ増えるかもしれない。

  • この記事をシェア
トップへ戻る