「北欧、暮らしの道具店」が愛される理由

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朝7時、インスタグラムにアップされる花の画像に、1万件近い「いいね!」がつく。インスタのフォロワーが先日40万人を超えたという、「北欧、暮らしの道具店」。私も編集長も、このサイトをブックマークして、ちらちら眺めている。

「北欧、暮らしの道具店」は、センスのいい雑貨や、暮らしの悩みを解決してくれる道具を売る、いわゆるネットショップ。ではあるのだけれど、単に物を売るだけのサイトではない。

ここに来ると、商品を作った作家さんの思いや、スタッフの皆さんがあれこれ相談しながら開発した様子……。そんな“バックヤード”が見える。

愛用品をつづったスタッフコラムや、梅雨どきの髪アレンジといった読みものもおもしろい。子どもが寝てホッと一息ついた夜中、ついつい読み込んでしまう。

周りにも、「北欧、暮らしの道具店」が好きだという女性がたくさんいる。そこはかとなく漂うこの魅力の源は、どこにあるのだろう。

「好き」が高じて、ついに編集長と連れ立ち、サイトを運営する会社「クラシコム」(東京・国立)へ取材に行ってしまった。

買い付けは読者の目線で

2007年、北欧初のビンテージ食器を1点ずつ売るところから始まった、「北欧、暮らしの道具店」。

少しずつファンを増やし、やがて暮らしにまつわる道具全般を売るように。お客さんの声を聞きながら、ここ数年はジャムやグラノーラといった食品、バッグなどのファッション雑貨を扱うようになった。

今年7月末までの1年間の売り上げ目標は、13億5000万円。前の期が約8億6000万円の売り上げだったから1.6倍近い伸びなのだけれど、目標はクリアできそうなのだとか。

想像もつかない金額だけれど、とにかくものすごい“成長期”なのだということはわかる。

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バイヤーの松田美樹さん。買い付けをするときは「読者目線」を大切にしている

商品を買い付けているのは、3人のバイヤーさん。その一人、松田美樹さんは、もともと読者だった。

買い付けのときは、「読者の目線になって、自分が欲しいと思えるもの、悩みを解決してくれるものであるかどうか」(松田さん)を考えるのだそう。使い勝手のよさはもちろん、気持ちが和んだり、わくわくさせてくれるものを選んでいる。

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スタッフのほぼ全員が使っているという羊毛ダスター。天井灯や棚の上のホコリをかんたんに取れる便利な道具でありながら、見た目は綿菓子のようでなんともいえずかわいい。

「ヒールでかわいくて、でも走れる」をテーマに、9cmのウエッジソールのサンダルを見つけてきたことも。スタッフ2人が実際に会社の中をダッシュして、いかに走りやすいかを確かめ、その様子をサイトに載せた。

新しい商品はメールマガジンで紹介し、サイトにアップする。お知らせから1時間以内に売り切れになってしまうことは珍しくない。

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ジャム担当の上山真紀さん

料理家のフルタヨウコさんと一緒に企画しているという、週替わりのジャム。

「いつ見てもソールドアウトですよね」とたずねると、「あえてそうしているのではなくて、材料となる果物を厳選しているからなのです」と、ジャム担当の上山真紀さん。道具や服も、作家さんの手作りだったりして、一度に用意できる数が限られてしまう。

声に応えるオリジナル商品

数ある読み物の中でいちばん読まれているのがスタッフコラムだというから、いかにこのサイトが読者に愛されているかがわかる。写真に写り込んでいる小物に、「どこで売っているんですか」と問合せが来ることも。

読者の声に応えられるよう、昨年、オリジナルブランドの「KURASHI&Trips PUBLISHING」を立ち上げた。数をたくさん仕入れられなかったり、バイヤーが理想とするかたちの商品がなければ、オリジナルとして開発する。

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木のコースターは、オリジナルの一つ。まるいシンプルな形と少し大きめのサイズは、ありそうでなかったデザインで、飲み物の横にちょこんとお菓子をのせるとかわいらしい。

インスタでの花の投稿に人気が集まったところから作ったのが、リースキット(トップ写真)。フラワーアーティストのsocukaさんと一緒に、箱を開けたときのユーカリのさわやかな香りや、作るときのわくわく感を想像しながら、花材を選んだのだそう。

スタッフも暮らしを大切に

読者に暮らしを提案する仕事だから、スタッフの皆さんも暮らしを大事にしている。サイト名に「北欧」を冠しているのは、商品を選ぶ基準だけではなくて、はたらき方にも北欧らしさを取り入れたいから。

午後1時半から2時半の間は電話を止めて、きちんとお昼休み。週に1度、料理家のフルタヨウコさんが会社に来て、社員のために昼ごはんを作ってくれる。

たっぷりの野菜を使った昼ごはんを囲み、スタッフどうしたわいもない会話を楽しむ。午後6時には必ず会社を出て、仕事は持ち帰らない。

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「暮らしの中の、小さな悩みを見過ごさないようにしています」と、バイヤーの松田さん。自然体で無理なく、毎日を楽しむ。松田さんをはじめ、彼女たちの暮らしの中での気づきが、結果として、商品やサイト作りに活かされる。

暮らしを楽しむスタッフさんたちの空気感は、言われてみれば、たしかにサイトから伝わってくる。取材の帰り、中央線の電車に揺られながら、だから「北欧、暮らしの道具店」は愛されるんだと、すとんと胸に落ちた。

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