デザインやエンターテインメントで人生を豊かにする

Photo by MARIA

医療や福祉の現場で使われる道具は、よくも悪くも“質実剛健”。つまり、機能的だけどかわいくない。

障がいを持つ二女の真心(まこ・7歳)が足にはめて使う装具も、最近になってやっと色のバリエーションが増えはじめてきたけれど、「必要だから選択の余地がないもの」ではなく「使いたいもの」になるにはまだまだだと思ってしまう。

いま健康でいる私たちも、いずれ体の自由がきかなくなる日がやってくるかもしれない。今まで普通に着ていた洋服も好きに着ることができなくなって、物理的に着用が可能な服を着るしかなくなるかもしれない。そうなったら、「世の中にはこんなにものがあふれているのに、私を歓迎してくれるものは何もない」と、絶望や孤独を感じるのではないだろうか。

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年をとって口元がゆるくなったら、首元にはスタイが必要になる。そのとき、ただのタオルを首にひっかけられるのは自尊心が傷つけられるだろうし、傍からみてもとてもあわれに映るだろう。でも、そのスタイがまるでスカーフのようにおしゃれなものだったら……。使う本人も周囲の人も、気持ちはガラリと変わるような気がする。

福祉器具にしても洋服にしても、私は自分がどんな状況になっても、「これを使いたい」「これを身に着けたい」と思うものを使いたい。わが子はもちろん、世の中の人にとってもそうあってほしいと思う。

買った人もつくった人もハッピーにする商品がいい

私がはたらくNPO法人Ubdobe(ウブドベ)では、国内外のユニバーサルデザイン商品を扱うセレクトショップ「HALU」を運営している。HALUには福祉作業所でつくられた製品なども並んでいるけれど、そのことを特に主張してはいない。それらは「障がい者が作ったもの」として選んでいるのではなく、「こだわりの製品」を厳選した結果、店頭に並ぶことになったものだからだ。

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障がい者の社会参加を進めていきたいというのもウブドベのコンセプトの一つだけれど、「福祉作業所で障がい者ががんばって作っているものだから」という“情”で買っていただいても、おそらく1回限りで終わってしまうだろう。そうではなく、継続的に求められるためには、商品としてのよさで選ばれるもの、「欲しい」と思って買ってくれるものであってほしい。

HALUで扱う商品は、機能性だけでなくデザイン性にあふれていて、見ているだけで心がわくわくする。日常に「わくわくするもの」があると心がハッピーになるし、暮らしが華やぐ。そういう彩りの一つひとつが人生を豊かにするんだと思う。買った人の生活をハッピーにする商品を生み出すことができれば、作った人の生活もハッピーにする循環になるはず。そうなって初めて、本当の意味での社会参加の実現につながるんだと思う。

デザインの力で課題も楽しく解決したい

いま私が携わっているデジリハプロジェクトは、デジタル技術を活用した子どもが楽しめるリハビリテーションプログラムを、病院や施設などに展開していくことを目指している。

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子どもたちの動作やタッチパネルの操作に呼応してアートが変化していく――。それをリハビリに応用することで「わくわく」が生まれる。プログラムを応用すれば、もちろんそのまま遊びにも使える。病院や支援学校、施設などに常設すれば、病児・障がい児から健常児までいろいろな子どもたちが集まるコミュニケーションの場となるだろう。

「楽しそう」なわくわく感は人を集める

リハビリは、やらなければいけないとわかっていても、モチベーションを保つのが難しいしつらいもの。でも、やらないという選択肢はない以上、せめて楽しいものにしたい。エンターテインメントは、「やらなければいけない困難」を「楽しいこと、やりたいこと」に変える力を持つ。

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日本にはいろいろな課題があり、大人たちはそれに対して手を打っていかなければいけない。どうせ「しなきゃいけないこと」なのだったら、楽しく攻略していきたい。

「楽しそう」「わくわくする」という雰囲気には人が集まる。悲壮感を前面に出して「障がい者のことを知ってください」と訴えるのではなく、楽しいイベントのなかに健常者もいれば障がい者もいて自然と相互理解ができる場のほうが、人が集まってくるはず。その結果、みんなの人生が豊かになるのではないかと思う。

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