気がつけば10年、香りとともに歩んできた道

最近はアロマ講座の開催と並行して、個人だけではなく企業から、香りのオーダーメイドのご依頼がとても増えています。

たとえば、人気のフラワーショップを展開する企業からブランディングの一環としてオリジナルの香りの作製を依頼されたり、アーティストのコンサートツアーで香りの演出を依頼されたり。また、美術館で開催されている話題の展覧会でも、ミュージアムショップでの香りの空間演出を行いました。

こうしていただく案件は前年と比べて実に5倍以上。数だけでなくその規模もかなり大きくなってきました。

「香り」のような感覚的なものは、少し前までは二の次、三の次とされるキーワードだったかもしれませんが、その重要性に気づき始めた企業が増えてきたようです。ありとあらゆるサービスにおいて、人々が心地よく過ごせるという要素が不可欠になっており、香りもその一つとして認識されるようになりました。

この秋、私がアロマの仕事を始めてから10周年を迎えました。これまでたくさんまわり道もしました。振り返ると無駄なことではなかったのかもしれないけれど、もっと早く気付けば結果は違っていたかもしれない、と思うことも山ほど……。逆に、1人全力で走っていたつもりだったけれど、実は全然動いていなかったなんていうこともかなりあります(笑)

前に進みたくて、でも進めなくてただもがいていた。そんな感じの時期もかなりありました。

アロマは医療ではありませんが、私たちの体や心に伝わることで気持ちを変えたり、体の状態を改善したりする力があるもの。古くからヨーロッパでもその薬理的作用は使われてきているし、実際にエビデンスも増えてきている。でもこの日本において、アロマセラピーというものは、どうしても「なんとなくいいもの」で片付けられてしまいがちで、その壁に苦しんだ時期も長くありました。

いざ仕事にしようと決めてからも、試行錯誤ばかりが続きました。アロマと一言でいっても本当にさまざまなものがあります。全身やフェイシャルのアロマトリートメントマッサージ、スプレーやクリームを作るようなアロマクラフトレッスン、子ども向けの講座、アロマ空間デザイン……。自分はどれもできるけれど、整理整頓ができずに、専門もなくいろいろやっている――。そんな時期もありました。

でも、そんなときに助けてくれたのは周囲のたくさんの人たちからのアドバイスやご縁、そしてそのときどきの「香り」でした。そこで、この10年を振り返って、象徴的な香りを選んでみました。

【手探りの時期】

1年目 ベルガモット「元気が出る」

結婚、出産を経て、これからの人生を考えました。アロマの仕事を始めたいけれどどうしたらいいか迷っていた時に、この香りをかいだ瞬間に気持ちがふわっとラクになって、次の目標に向かってスタートしようという勇気をもらいました。

2年目 オレンジスイート「子どもが大好き。安心安眠」

迷いながらも、まずは自分の身の丈でできることから始めようと、アロマ+ベビーマッサージのスクールを開講しました。甘いオレンジの香りは子どもが大好きな香りで、子どもとの思い出が蘇ります。

3年目 ユーカリ「呼吸を深める」

スクールに集まるママたちから、彼女たちが抱く不安や抜け出せない想いなどたくさんの声を聞きました。煮つまりがちな時間を深く呼吸を促すユーカリでサポート。深呼吸は心を落ち着けてくれるマジックでした。

4年目 フランキンセンス「古代から神とつながる神聖な香り」

「アロマをやっている時がいちばん楽しい」「好きなことを仕事にするって幸せ」と感じながらも、自分自身ではまだまだ足りないし、これでプロといえるのだろうか、などたくさん思い悩んでいました。気持ちが不安になった時に、古代から瞑想にも使われてきたこの香りをかいで落ち着きを取り戻しました。

【挑戦の時期】

5年目 レモン「リフレッシュ、リセット」

精油を利用して作製した香りを競う全国大会に応募。1000人以上の応募者から優秀賞を受賞しました。初めて小さな自信を得て、アロマと本格的に向き合おうと思った時期。受賞作品には10種類ほどの精油を使いましたが、レモンもその一つ。キラキラした雰囲気を演出しました。

6年目 ジャスミン「勇気、サポート」

コンテストの受賞をきっかけに、新たな一歩を踏み出しました。1年をかけて解剖学、全身のトリートメント、フェイシャル、介護アロマ、臨床アロマなど幅広く学び直しました。その中で、花精油が少し苦手だった私が出合ったのが、ジャスミンサンバックの香り。香りの王様といわれるジャスミンですが、自分が知っていたジャスミンとは異なり、自信と勇気、そして女性としての誇りさえ思い出させてくれました。

7年目 ベティバー「揺らがない」

アロマをもっと多くの人に知ってもらいたい、香りの持つ力を感じてほしいという思いから、一般社団法人プラスアロマ協会を設立。覚悟を決めた瞬間です。どーんと落ち着く土のような香りのベティバーがぴったりです。

【自分らしさを作り上げる時期】

8年目 スイートマジョラム「ゆるめる、バランスを取る」

これまでやってきたことが少しずつ実を結び始めたものの、もっとやらなきゃ、頑張らなきゃと力が入りすぎていた時期かもしれません。空回りしつつも、この香りをかぎながら自分らしいバランスを模索していました。

9年目 サンダルウッド「グラウンディング、鎮静」

サンダルウッド(白檀)は、父の生まれた京都の家を思い出す香りであり、私の香りの原点。いつでも安心できる大切なお守りのような香りの記憶です。念願だった京都での講座開催も始まりました。

10年目 ラベンダー「鎮静、消炎」

京都で話題の伝統工芸ユニットGO ONからお声掛けいただき、世界最大級の家具の見本市「ミラノサローネ」での香りの演出に挑戦しました。大舞台での挑戦には、やっぱり「本物の香りを届けたい」という思いから自分で蒸留したラベンダーを使用。そのほか、さまざまな企業から香りのプロデュースのお仕事をいただくようになり、活動に広がりが出てきました。

振り返ればあっという間の10年。でも、そこには山があり、谷もありました。そんな中でも、自分を見失うことなく歩んで来られたのは、そのときどきの香りにたくさんの勇気ときっかけをもらってきたからだと思っています。みなさんのこれからの人生も、決して平坦ではないかもしれませんが、時には香りの力を借りて、自分らしさを忘れないでくださいね。

  • この記事をシェア
トップへ戻る