やりたいことは自分一人で叶えなくてもいい

Photo by MARIA

私はいま、NPO法人Ubdobe(ウブドベ)という組織ではたらいている。担当しているのは、デジタル技術を活用して子どもが楽しめるリハビリテーションプログラムを開発する「Digital Interactive Rehabilitation System(デジリハ)」プロジェクト。ウブドベのメンバーと外部の協力者からなるチームで日々プロジェクト成功に向けて試行錯誤しながら忙しく動き回っている。

このプロジェクトに吸い寄せられるように集まった強力なチームメンバーたち。その磁力になったのは「楽しそう」「おもしろそう」「わくわくする」という純粋な気持ちだ。

このプロジェクトをもし私一人で思いついたとしても、実現するなんて不可能だと思ってしまったはず。私自身がデジタルアートをプログラミングできるわけでもないし、すばらしい能力をもった人々を集める力もない。加えて、ものすごくおカネのかかることでもある。

それをウブドベでは、NPO法人という組織をベースに、人とおカネを集めて実行に移そうとしている。私のやりたいことが凝縮しているプロジェクトを、この組織でなら実行できる――。個人でなく組織に入って動くことの意義に目を開かされた。

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最近は、起業して自分のやりたいことを実現する人が増えている。それ自体はいいことだと思うけれど、私は今回の経験を通して「起業以外にも実現する方法はあるんだ」という新しい気づきを得た気がする。

日常生活で解決したい課題が見つかったとき、何かしたいことがあるとき、自分一人で動くにはあまりにも大きすぎる難題に見えることだってある。そんなときは、周りの人や組織、既存の仕組みと手を組んで実現するという方法がある。必ずしも一人で実現しなくてもいいんだということを知った。

もちろん、起業やフリーランスという活動スタイルが向いている人やケースもあると思う。でも、すばらしい能力をもった人々、力のある組織は世の中にたくさん存在する。そうした人や組織と自分が、パズルのピースのように組み合わさって動いていくほうが、早く、広く実現できるかもしれない。

自分の人生にフィットする進路を探す

いま、多くの人たちは就職活動で「この会社に入ること」を目的に、その会社にフィットするように自分をすりあわせていく。もちろん私だってそうやって会社に就職した一人だ。でも、今になって思えば、本来それは逆なのかもしれない。自分がやりたいことを実現するための場所として会社があると考えるほうが自然だし、ハッピーが増えるような気がする。

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小学4年生の長女・ゆとりは、絵を描くのが好きだから美術系の中学校へ行きたいと言っている。それを聞いて、彼女が本当にやりたいと思うことを自分で考えて選ぼうとしているのがとてもうれしかった。生きたいと思う自分の人生にとって、どの進路がフィットしているかと考えるのは、子どもにもとても大切なことだと思う。ただ、それを考えるには、世界を広げ、選択肢を作っていかないといけない。

世界を広げれば選択肢を見つけ出せる

毎日が病院や支援学校と自宅の行き来に終始してしまいがちな障がい児は、親や病院スタッフ、同じ障がい児たちに囲まれる日々で、世界が広がりづらい。

親が努めていろいろな人に会わせようとしない限り、世の中にいろいろな人がいると知ることができない。世の中にいろんな職業があるということも知ることができない。いろんな職業があると知らなければ、なりたい職業の選択肢も生まれない。

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でも、障がい児でも小さいころからいろいろな経験ができる世の中になれば、世界はぐっと広がるはず。子どものころから多様な世界に触れられたら、視野は広がり、やりたいと思うことも自然と生まれてくるに違いない。

今年7歳で支援学校に通う二女・真心(まこ)の同級生に、寝たきりの子どもがいる。わずかな表情の変化や目の動きでコミュニケーションをとる。いまの世の中ではそうした子どもの就職など難しいと思われるかもしれないけれど、最新のテクノロジーによって、目の動きでパソコンを動かして仕事をしている人もすでにいるという。

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子どもの世界を広げて「やりたいこと」を生み出せるようにすることと、医療や技術の進歩で「やりたいこと」を実現する方法を生み出すことがそろえば、障がい児の未来を可能性にあふれたまったく別のものにしていくことも夢じゃない。

そうしたことも、「障がい者の親」という一個人ではできることは限られているけれど、病院、学校、デジタル技術……、いろいろな要素を組み合わせることで、実現できる範囲を広げていくことができるはず。もちろん、デジリハプロジェクトもその要素の一つになれると信じている。

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