夫が憎く、子どもに八つ当たりしてしまう

酒井菜法のお悩み相談室

僧侶であり3人のお子さんを育てるお母さんでもある酒井菜法さん。一緒に悩みながら、人生を豊かに歩むヒントを探していきたいと、読者のみなさんからのお悩み相談を受け付けています。今回寄せられたご相談はこちらのお母さんからでした。

お悩み相談

4歳になる娘と夫との3人暮らしです。10年前、夫の海外転勤を機に会社を辞め、今は専業主婦をしています。不妊治療で授かった一人娘はまだ話が通じる年齢ではなく、ときにうっとうしく憎らしくなり、投げかける言葉がひどいと自分で感じることがあります。
この数年は夫の仕事の都合で2度引っ越しし、そのたびに環境が変わってママ友もなかなかできずに過ごすことが増えました。エリートコースに乗るのだと思って我慢してきましたが、先月頼みの夫が降格、減給になってしまいました。夫のことが憎く、家にいるとひどいことばかり言ってしまいますが、私の言葉はまったく響いていないようです。
このままでは子どもに八つ当たりすることが続くのではないかと不安になって相談させていただきます。
(Tさん 46歳/4歳の女の子の母 専業主婦)

あなたにとって幸せとは何ですか? あなたにとって家族とは何ですか? 夫に期待して思い描いた幸せが崩れて落胆している様子ですが、専業主婦だろうと共働きだろうと、家族はお互いが足りないところを補って慈悲の心で支え合う存在でなければいけません。

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人間はひとりでは生きられないもの。あなたもご両親や祖父母、恩師や友人など、さまざまな人からたくさんの愛情を注がれながら今を生きています。では今、ご主人の落胆に寄り添ってくれる人は誰でしょう。お子さんが悲しいときに抱きしめてくれる人は誰でしょう。そして、あなたがつらいとき、そばにいてほしい人は誰でしょうか?

つらいのは自分だけではない

あなたは「私ばかりつらい」と思っていませんか? 自分の幸せだけを求めていませんか? あなたがつらい状況ならば、ご主人やお子さんもきっとつらいはずです。みんなつらいからこそ、相手の幸せを願うことで自分も幸せだと思えるのです。

仏教には「自他不二(じたふに)」という言葉があります。自分と他人とは別人でありながら不二の存在である、つまり同じであるという意味です。本当は自分も他人もみんな同じように苦しいときには苦しいのに、「なぜ自分だけが」と思うから苦悩が生まれると説き、苦悩から解放されるためには慈悲の精神が大事だと説いています。

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慈悲の精神は心が穏やかでなければ生まれません。そして穏やかさは金銭的に満ちた生活から生まれるものではなく、やさしい思いやりの心から生まれるものです。まずは家族をねぎらい、思いやり、ご自身の苦悩をともに分かち合うよう穏やかに過ごしましょう。さまざまな苦悩をともに乗り越えていくからこそ、数十年後には笑い合えて、すばらしい絆が生まれるのです。

自分の幸せは自分で見つける

結婚とは相手とともに歩むことを前提にしたものです。ときには相手に頼ったり、期待したりすることもあるでしょう。でも頼りすぎ、期待しすぎはよくありません。思い描く幸せな自分像ばかりにとらわれると、苦しいときに寄り添えなくなるからです。

今、苦しいからこそ妻として支えるべきとき。ご主人も妻に心配かけまいと、あなたを支えているはずです。心の中では「申し訳ない」と思いながら、あなたから投げかけられるひどい言葉を聞き流してくれているのでしょう。ご主人があなたの言葉を正面から受け止めてしまったら、夫婦関係が破綻する可能性もあるわけですから。うまく聞き流すのはご主人のやさしさかもしれません。

家族とはいえ相手に頼りきらず、自分の幸せは自分で見つけること。夫もつらいのだということを理解して、自分が何をするべきか考えてみましょう。

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また、育児中はイライラすることは当たり前。お子さんや夫に対して八つ当たりしてしまうこともあるかもしれません。でも、もしイライラをぶつけてしまったら、その後ちゃんと愛情を示すことが大切です。何のフォローもなく一方的に怒ってばかりでは、思いやりのない家庭になってしまいます。

あなたはお子さんを怒ってしまう自分が悲しいと思い、ここに相談してくださったのですよね。変わりたいという気持ちに気づいて、どうするべきか苦しんでいらっしゃると思います。大丈夫、その気づきがあなたを変える第一歩です。

自分自身を変える努力を

まずは自分が変わらなくてはいけません。ご主人や子どもを変えるのではなく、あなた自身が見る目を変えるのです。家族の中にいる自分の幸せは何なのか、改めて考えてみてください。その幸せは必ずしもエリートのご主人を持ったこと、言うことをきくいい娘を育てているということではないはずです。

もし暴言を吐きそうになったら、それをいったん抑えて。相手がそれを言われてどう思うかを考えてみましょう。思いやりのある自分を作ろうと努力するのです。憎らしい気持ちがわいてきたときは、やさしい自分をイメージして深呼吸。無理にでも自分の心の中に仏がいると思ってみてください。

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あなたがやさしいお母さん、思いやりの持てる妻に変わることによって、もっともっと充足感・幸福感のある家庭が築けます。おのずと娘さんは穏やかな子に育ち、お母さんが話すことにも素直に耳を傾けてくれるような親子の絆が生まれます。

今が自分自身を見直すいいチャンスと考え、変わる努力をしてみてください。きっと本当の幸せに気づけるはずです。合掌。

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