誰かに「頼れる」コツはここにあった


前回のコラム、「“助け合い”が暮らしに溶け込むフィンランド」で、日本人でありながら、フィンランドに移住して「頼る力」を付けた友人について書いた。仕事が山積みになっても自分一人で抱え込んでしまう私にとって、フィンランドの人々の生き方から学ぶところは大きい。

壁は自分で作っている?

ひるがえって、私はどうだろう。フェルト作家である私の仕事は秋から春に集中する。日本から観光に来る人向けのガイドの仕事も同じ時期に重なるので、この時期はすさまじく忙しい。一人で抱え込まずに助けを借りていれば、と思うこともある。

誰かにもっと手助けをお願いすれば、受注した商品の納期が早まり、急いでいるお客様を逃すこともなく、さらには新作の準備もできていたかもしれない。縫製を請け負ってくれるパートナーとの関係だって、もっと深めていけたはずだ。助けを借りない限り、私のビジネスは成長しない。越えられない壁のほとんどは、自分で作ってしまっているものなのかもしれない。

オーダーメイドのウールフェルトの箱。基本のデザインは決まっていて、希望のサイズと色で1つから製作する。冬の間、この商品の制作に明け暮れた

ウールフェルトのアイテムを縫製する作業を、一人で抱え込まずに外注することで、おカネも動く。無償でお願いするわけではないのに外注できなかったのは、抱え込んでいる商品が特殊だったからだ。基本のデザインは同じだが、サイズ、色、個数がカスタマイズできる受注生産の商品で、製作過程を私が管理していないと間違いが起こりやすい。私が特に縫製の品質に気を配る製品でもある。

とはいえ、私はこの商品を基軸にして自分のビジネスを成長させたい。日本人である私が、身近にいるフィンランドの人のように、周りの人に自然に手助けをお願いできるようになるにはどうすればいいのだろう。

やるべき仕事を見極める

人に何かをお願いしなければならない時にいちばん大事なのは、お願いするのだと「決心すること」。きっとフィンランドの人に話すとバカげて聞こえるだろうが、日本で育ったからか、私にとってはこれがいちばん難しい。できればお願いしたくない、頑張れば自分一人でできるのではないか……と、納期がすぐそこに迫るまでぐずぐずと迷ってしまう。

割り切るためにいいのは、業務内容のリストを作ってカレンダーに落とし込み、スケジュールを“見える化”することだろう。事前にどの作業にどれだけの時間がかかるのかも把握しておかねばならない。

この間、ストップウォッチを使って自分の作業時間を計ってみた。リストを眺めると、自分がやりたい仕事、自分でやるべき仕事がいかに滞っていたかがわかって愕然とした。ハンドメイドのビジネスを拡大させたければ、自分でやらなくてもいい仕事を誰かにお願いすることも必要なのだとはっきりわかった。

やっと全ての注文を発送し終え、奥の収納棚の扉にToDoリストを貼った

パートナーと対峙する覚悟

そしてもう一つ、誰かにお願いするときの心構えも大切だ。私とは違う技術を持ち、違う方法をとる人が作業をするのだから、望むような成果が出ないかもしれない。そうした前提を受け入れ、やり直しをしてもらう覚悟、思ったような仕上がりになるまで投げ出さず、パートナーとの時間を費やす覚悟をすることだ。

これは、夫や子どもと家事を分担するときの状況に似ている気もする。私にとって、お願いした相手にダメ出しをするほど気が滅入ることはない。ダメ出しができず自分でやり直しをするような事態を避けるため、きちんと気持ちを伝えられるような関係をパートナーと築いていなければならないのだと思う。

3ミリ厚のウールフェルトをカッターとハサミを使い手作業で裁断する。ポケットがたくさんついた、鳥のシルエットのバッグになる

フェルトアイテムの中で、バッグなど決まったデザインの商品は、フィンランド人であるマーリットさんが縫製を請け負ってくれている。

マーリットさんは仕事量に応じてアトリエを工房や店舗の中に移しているが、そのときどきでいつも空間をシェアする友人がいる。オーダーカーテンなどのインテリアテキスタイルのショップオーナーと組んでいたこともあるし、今は2人のミシン職人と一緒に店舗を構え、ウェディングドレスやフィギュアスケートの衣装を作っている。「大きな注文が入ったので広い作業場が必要」と言って、9月からは人形制作の工場へアトリエを移す。

彼女の人脈の広さ、行動力、人と協力して渡り合う力には頭が下がる。よく考えてみると、これはマーリットさんだけの話ではない。過去に一緒に販促活動をしていたデザイナーのイルマさんも、同業者と協力することで、より大きな成果をあげようと試みる人だった。「私がやればもっと早く片付くのに、なぜ頼みに来なかったのか」と言われたこともあった。

マーリットさんが縫製作業をし、出来上がった鳥のポケットバッグ

フィンランドの人は合理的だ。私がお願いするのを遠慮したり躊躇したりするたび、彼女たちの頭にはピョコンとハテナマークが出ているに違いない。近いうちにマーリットさんとのミーティングを持とうと思う。何か甘いものを携えて。変われ自分、と励ましている。

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