「わたし」指名で仕事が来る秘訣

Photo by Koichi Imai

料理研究家の和田明日香さんと、店舗を持たない魚屋ユニット「魚屋あさい」として活動する浅井有美さんの対談企画。母であり妻であるお二人は、「仕事」をどんなふうにとらえているのでしょうか。「夫婦ではたらくという選択」に続く2回目では、“自分だからこそできる仕事”について、話していただきました。

◇浅井◇
この対談の前に、編集部から「自分にしかできない仕事」というお題をもらって、私なりに考えてみたんです。世の中の仕事って、誰でもできる仕事のほうがやっぱり多いと思うけれど、その中で「自分にしかできない仕事」があるとしたら、「○○さんだから」と言って依頼してもらう仕事。

Photo by Koichi Imai

先ほど、和田さんと一緒に築地市場を歩きましたけど、場内には700軒の仲卸が軒を連ねているんですね。それだけ仲卸がある中で、一つの店に行く理由は、結局「人」なんですよね。

◆和田◆
うんうん、きっとそうですよね。

Photo by Koichi Imai

◇浅井◇
「この魚だから買う」じゃなくて、「この人がいいと言うから買う」という関係。テクノロジーが発達した時代ではあるけれど、築地ではそれが脈々と80年も続いている。それって700軒のそれぞれの仲卸さんにしかできない仕事だと思うんです。「浅井さんだからお願い」と言ってもらえる仕事は本当にありがたいですね。

◆和田◆
正直なところ私は、浅井さんみたいに「自分にできることはこれだ」っていうのがないんです。社会人経験がほとんどゼロの状態で母親になって、気がついたら今こうしている。義母(平野レミさん)や夫のおかげもあって仕事をもらっていますけど、自分の中に確固たるものがないから、何がいつ終わってしまうか全然わからないんです。

とはいえ、そうやってネガティブになっていてもいいことはないですよね。レミさんの仕事を手伝ってほしいと言われたときも、最初はすごく不安だった。でもやってみたら“アドレナリン”が出てきて、不安が全部プラスのマインドに変わってくのを感じたんです。そうやって新しい仕事を経験するたびに、「いいな、いいな」と思う気持ちを少しずつ積み重ねてきました。

和田明日香さん Photo by Koichi Imai / Thanks to Tamasushi Corporation

◇浅井◇
「プラスのマインドに変える力」は、和田さんの能力ですよ。和田さん指名でどんどん仕事がくるのは、見た人が「この人、いいな」と思うから。それはきっと、和田さんのブランド力なんです!

普通の親として伝えたい

和田さんは現在、コメンテーターとしても活躍中。TBSの情報バラエティ番組「ビビット」でビビットファミリーとして木曜日に出演するなど、活動の場を広げています。

◆和田◆
「ビビット」に出るようになって半年以上経ちますけど、「一人のお母さんとして、普通の一視聴者として向き合う」という気持ちがより強くなりました。子どもを大事に思う普通の親の視点で考えを伝えるようにしたくて。
たとえば保育園の問題をいちばん考えているのは親なのに、番組の中で、悩んでいる人に寄り添っていない議論になってしまうことがある。そんなとき、「子育てをしてると、こういうふうに見えるんですけどね」って、そよそよっと風を吹かせていけたらなあと思っています。

◇浅井◇
テレビで保育園問題を取り上げていても、専門家の方たちだけで話していると偏った議論になっていることがある。「私の悩んでるところはそこじゃない」と思うことって結構あります。

Photo by Koichi Imai

◆和田◆
保育園の話でいくと、預ける場所を増やすのも大事だけど、“はたらき方のバランス”についてももっと考えられるようになったらいいなと。私自身は、家が60%で仕事は40%ぐらいのバランスだけど、そういうはたらき方は会社員だとできないはず。保育園に入れないこと自体も辛いけど、勤務時間を9時から5時で申請しないといけない、という状況が苦しい人もたくさんいると思うんです。

◇浅井◇
私が時短勤務を選ばずに会社を辞めたのもそれが理由でした。時短を選ぶと“時短のキャリア”しか選べなくなると思って、それが私にはしっくりこなかった。会社に勤めていたとしても、はたらき方をもっと選べればいいですよね。

子育てはものすごくクリエイティブ

◆和田◆
自分にしかできない仕事って、やっぱり「お母さん」ですよね。

◇浅井◇
そうそう。自分にしかできない唯一と言うなら、うちの息子の母であること(笑)。

◆和田◆
究極であり絶対。そして、ものすごくクリエイティブな仕事。お母さんは何を見ても何を聞いても、子どもにどう伝えるか考えるというフィルターを通すけれど、それって実はすごく本質を見ることにもなる。はたらいている・いないにかかわらず、「お母さん」という仕事は偉大。こんなに意義のあること、人生においてなかなかできないですよ。

◇浅井◇
超大役ですよね。だからいつも「母」としての立場を先に考えてしまう。「夫がいる自分」にはたまに気付く、ぐらいの感じなんです。

◆和田◆
そう、ときどき「私、妻だったんだ」と(笑)。子育てしている限り、夫は相棒的な存在かなあ。

◇浅井◇
どうしても、子どもを介したコミュニケーションが多くなる。月に一度は夫婦でご飯を食べに行くことにしていて、そのときは子どもの話と仕事の話をしないって決めたものの、話題が乏しくて。「……」「一つだけ、子どもの話いい?」みたいになる(笑)

◆和田◆
言われてみれば、子ども以外の話題って難しい。「ここにできたニキビがさ」とか?(笑)。

◇浅井◇
「体がしんどい」を自慢し合ったり(笑)。でもやっぱり夫婦って家族の核だから、そこはずっと仲良しでないと。

◆和田◆
うちは、キッズスペースなんかがあるところに食べに行って、テラス席で夫と二人で飲んだりします。夫婦ごと、家族ごとに、合ったスタイルがきっとあるんでしょうね。

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