“夫婦ではたらく”という選択

Photo by Koichi Imai

オープン以来、ハレタルのアイコンとして活動してくださっている和田明日香さん(30)、店舗を持たない魚屋「魚屋あさい」で夫とともに活動する浅井有美さん(33)。お二人は、結婚・出産をきっかけに、仕事観や家族観が大きく変わったそうです。3回にわたる対談の第1回目では、さまざまな「はたらく」形についておしゃべりしていただきます。

◆和田◆
はじめまして。お会いできるのを楽しみにしてきました!

◇浅井◇
私も今日、楽しみにしてきました。

2歳のお子さんの母である浅井さんは、出産を機に「はたらき方」について考えるようになり、夫の仕事である魚屋を手伝うことに。専業主婦だった和田さんは6歳、4歳、3歳の3人の子どもたちを育てながら、仕事を始めました。

◇浅井◇
私はもともと広告代理店で、広告製作や営業の仕事をしていて、その後イベント企画の会社に転職したんです。子どもを出産し、育児休暇をとっているときに、続けていくのは現実的に無理だな、と考えて辞めることにしました。でも、いざ辞めたら赤ちゃんと二人、すごく鬱々(うつうつ)としてしまって……。

◆和田◆
すごくわかります。

Photo by Koichi Imai/ Thanks to Tamasushi Corporation

◇浅井◇
和田さんもそんなご経験があるんですか?

◆和田◆
あります、あります。一人目の子を出産したときは専業主婦だったのですが、いわゆるノイローゼみたいな状態になりました。土砂降りの中、ベランダに立って一人でボーッと立っていたこともあったなぁ。外に出かけたりいろいろなことができるはずなのに結局今日も家にいた、ということが重なって。

夫を応援できなくなった

◇浅井◇
私の場合、夫は、外で好きな仕事をしているのになぜ私だけ、という“アンフェア感”を抱くようになってしまったんです。「今日、一人で電車乗ったんだよね」なんていう、ささいなことでイライラしてしまって。

◆和田◆
私も、夫に「疲れた」と仕事の愚痴をこぼされて、「でも今日外でご飯食べたんだよね」と言ったりしていました。

◇浅井◇
彼の夢を100パーセント応援できなくなったことが嫌で、だったら自分も絡んじゃおう、と思って魚屋になりました(笑)。

◆和田◆
すごい!

「魚屋あさい」はケータリングや魚さばき教室などを専門とする、店舗を持たない魚屋。仲卸を経て魚の商社に勤めた経験を持つ夫の和浩さんは、魚のプロフェッショナル。浅井さんは前職を辞めて初めて、“魚屋”としての活動も始めました。

◆和田◆
(和浩さんに)「一緒にやらせて!」と言ったんですか?

魚さばき教室で受講者にアドバイスをする浅井有美さん Photo by Koichi Imai

◇浅井◇
子どものお昼寝の時間を使って、勝手に「魚屋あさい」のホームページを作り、PRをしてみたんです。そうしているうちに、知り合いでないお客さんからもどんどん問い合わせがくるようになって、今のスタイルに落ち着いたんです。

「魚そのものを売らずに魚の魅力をどう伝えるか」というのが私の役割。プロ並みの知識があるわけではないぶん、一般の人の目線になって企画ができるのが強みだと思っています。

◆和田◆
へえ……。浅井さんのすごいところは、自分の経験を生かして、仕事を作り上げていったところですよね。だからそれが魚でなくて肉でも野菜でも、“何屋”でも、仕事を作っていただろうなって思う。

◇浅井◇
“何屋”でも(笑)。

夫婦ではたらくメリット

◆和田◆
夫婦ではたらき始めてから、“アンフェア感”は減ったんですか?

◇浅井◇
すごく減りました。夫は、夫婦ユニットをすごく喜んでくれたので、夫婦で同じ方向を向けるようになったということが一つ。もう一つは、「魚屋あさい」の中に、仕事だけじゃなくて子育てや家事も入ってきたので、何か問題が起こったときには一緒に「どうしよう」と考えられるようになったこと。私はラッキーだったと思います。

◆和田◆
言葉にしてはないけど、妻が専業主婦になると、なんとなく夫と妻の役割が決まってきますよね。どうしても妻は、「夫は外にいてできないから私がやるしかないんだ」という考え方になる。それが、一緒に外に出て、お互いの大変さを嫌みなく理解できるようになると、「じゃあお互いにできることをやろう」ってなりますよね。

Photo by MARIA

私も職場が夫と同じなので、平日の日中は同じ空間にいることがわりとある。お互いの仕事の状況を共有していると、子育てや家事にかかわる困り事を、夫のほうから気付いてやってくれるようになりました。夫婦がお互いの状況を把握し合うってすごく大切なことだけど、簡単そうで難しいですよね。

◇浅井◇
そうですよね。和田さん夫婦やわが家のように、夫婦で共通の仕事をしているのは、実はすごくメリットが大きい気がする。

◆和田◆
「一日じゅう一緒にいるんでしょ?」なんて、たまに言われますけどね(笑)

◇浅井◇
そうそう。「大変でしょ? うちだったら離婚してるわよ」みたいな言い方をされることもあって(笑)、でも実はその逆。自然と家のことを分担できるのは、一緒の仕事をしている夫婦ならではだと思う。

さまざまなフィールドで活動されるようになった和田明日香さん。対談の後半では、和田さんが魚さばき教室に参加された様子もお伝えします。 Photo by Koichi Imai

◆和田◆
別の仕事をしていても、片方が専業主婦であっても、会話って大事ですよね。仕事がどうだとか、自分は今こんなふうに考えているとか、情報共有は日常的にしておくといいですよね。そうやってコミュニケーションを取っていると、お互いの仕事や家事のはたらきを尊重し合えるようになると思う。

もちろん今でも、上手に伝えられなくてイラッとしてしまうことはあるけれど、以前に比べたらすごく減りました。パパは言わないとわからないんですよね。

◇浅井◇
そうそう、最初は絶対わからないし、言ったってわからないこともある。ぶつかりながら、夫婦としても親としても成長させてもらっている、という感じです。

◆和田◆
ほんと、その通り!

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