終わりを思い描いてから始めると大切なことが見える

Photo by Fumishige Ogata

5児の母であり医師・研究者である吉田穂波さんのブックコラム。『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)は、子どもを持つお母さんにとっても学びが大きいといいます。「自分のための時間を作り出す」に続く2回目のコラムでは、価値観の見つけ方についてつづっていただきました。

医師として、多くの患者さんが亡くなる現場に立ち会ってきた。豪華な個室でひっそりと亡くなる人もいれば、多くの見舞い客が次から次へと訪れ、みんなに見守られながら息を引き取る人もいる。さまざまな別れの場面からは、その人がこれまでどのような生き方をしてきたかを感じることができた。

『7つの習慣』には、「終わりを思い描くことから始める」ことについて書かれている。自分の人生の終わりはどうあってほしいか。そんな人生の終着点を想像すれば、生きるうえで大切にしたい価値観がはっきりする。そして、自分が思い描く人生を送るために、「いま何をしたらいいのか」も見えてくるはずだ。

価値観を書き出してみる

自分はどのような生き方を目指していくか、どんな価値観を大切にしていきたいか、について書き出したものを、本では「ミッション・ステートメント」と呼んでいる。

皆さんも、このミッション・ステートメントの核になる「価値観」「自分の役割」を書き出してみることで、自分の中の「大きな石」が見えてくるかもしれない。私の場合は、家族や人間関係、人の役に立つなど、自分の価値観をできるだけたくさん書いたうえで、書き出した価値観をもとに自分の役割を考えてみた。

Photo by MARIA

私が最初に書いた価値観は「家族」だった。妻、母、そして両親にとっての子ども、嫁、姉など、自分の役割を書き出し、次に役割ごとに自分が家族を大切にするにはどうしたらいいか、どうあるべきか、何をしたらよいかを書いていった。自分のミッションを達成するためにどうあるべきかを一つの文章にまとめるのでもいいし、箇条書きにするのでもいい。普段なんとなく感じていることも、書き出してみることで頭の中は整理されていった。

ミッション・ステートメントは自分の人生のためのものだから、あくまで主体的に考えるのがポイントだ。たとえば母親として自分がしたいことの欄には、周りから期待されるからではなく、自分がどうありたいかを考えながら書いていくのがポイントとなる。

日々、刻々と状況は変わるものなので、ミッション・ステートメントもどんどん変化する。ハーバード大学に留学する前は、「人の役に立ちたい」というより、「もっと自分が認められたい」という気持ちが強かった。そのためか、この頃に書いたミッション・ステートメントは、留学するための決意に満ちあふれたものになっている。

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一方で、子どもの数が増えるにつれて、自分の力だけではどうにもならないことがあると思い知らされた。人に助けられる経験が増えれば増えるほど、「自分が認められたい」というより「私も誰かを助ける存在でありたい」という気持ちが強くなっていった。いまの私が書くミッション・ステートメントは、自分の活躍よりも、誰かに力を与えたい、仕事を通して子どもたちが生きていく社会の役に立ちたい、ということに力点が置かれたものになっている。

親でないとできないこと

ミッションを実行するためには、限られた中で時間を有効に使うことがとても大事になる。前回のコラム、「自分のための時間を作り出す」では、緊急度と重要度によって行動を分類する大切さを書いたが、重要度の低いことにかける時間や労力を減らせば、自分の時間に余裕が生まれる。

そこで私は、家庭内のことであれば、子どもの宿題に付き合う、学校での話を聞く、水筒のお茶を用意する、学校からのお便りをチェックして提出するものがないか確認する、といった親でないとできないことを優先することにした。その代わり、料理や掃除などはアウトソーシングして、家族と楽しく食事を囲む時間を作るようにした。

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家族はたくさん増えたけれど、その分、たくさんの人の手を借りるようになり、気持ちはとても楽になった。社会に役立つ仕事をしたい、“大きな石”を優先したいというミッション・ステートメントがあるから、後ろめたさを感じることなく、アウトソーシングできるようになったのだと思う。むしろ1人目の子どもが生まれた後、夫婦で何から何までやろうと必死だったときのほうが、自分は世界でいちばん大変だというような顔つきをしていたのではないだろうか。

私の手元にはいつもミッション・ステートメントがあり、何かの折には必ず見返すようにしている。これからも内容を発展させながら、終着点を意識した人生の歩みを進めていくつもりだ。

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