自分のための時間はこう作り出す

Photo by Fumishige Ogata

5児の母であり医師・研究者である吉田穂波さんのブックコラム。今回は、吉田さんが「バイブルのような存在」としてつねに手元に置いている『7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著)についてつづっていただきます。

5人の子どもを育てながら仕事を続けてきた私にとって、『7つの習慣』はバイブルのような存在だ。もしこの本に出合っていなければ、私はもやもやした気持ちを抱えながら、日々すべきことをこなすだけで疲れ果てている毎日だったかもしれない。

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初めて読んだのは2006年、ドイツから帰国し、2人目の子どもを出産したばかりの頃。忙しい職場だったので、育児休暇を取らずにすぐ仕事に復帰したけれど、2歳違いの子どもたちの育児はとにかく大変。時間外の勤務や残業が出来ない自分は、職場にとってお荷物ではないかと思うようにもなっていた。

もやもやした気持ちで、これからどうしたらいいんだろう、と思っていたとき、書店で『7つの習慣』に出合った。読み進めていくうちに、すっかり夢中になってしまった。赤線を引いたり、付せんを付けたりして何度も読み返した。人にあげたりもしたので、今私の手元にあるのは3冊目。英語での原著も読むほどの愛読書となった。

“砂”ばかりの毎日だった

2人の子育てで手いっぱいになっていた私にとっていちばん役に立ったのは「最優先事項を優先する」という「第3の習慣」だった。

Photo by MARIA

大きな石と小さな石、そして砂をバケツの中に入れるにはどうすればいいだろう?

バケツに大きな石(緊急ではないが自分の人生にとって大切な予定)から入れていけば、すき間に小さな石(細かい予定)や砂(とっさの会議や書類作成などの緊急だが重要でない予定)が入っていくけれど、その逆の順番だと大きな石が全く入らなくなってしまう。バケツを1週間にたとえれば、最初に大切なタスクを入れ、それ以外の仕事はすき間時間をうまく使っていくのがいい、ということになる。

当時の私は大きな石を入れるどころか、砂ばかりで毎日が終わっていた。本当は自分を高めるための勉強や留学のための試験勉強をしたいと思っていたのに、さほど重要ではないこまごまとした仕事に追われ、気づいたらあっという間に一日が終わっていた。これでは、自分の成長や進歩を感じ、自分で自分の人生をコントロールしているという気持ちになれるはずもなく、ただ受け身でこなしているだけの毎日だった。

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そんな自分を変えたいと強く思っていた私は、自分にとっての大きな石を意識して、スケジュールを考えるようにしてみた。当時はハーバード公衆衛生大学院への留学を目標にしていたので、受験のために必要な勉強や準備が、自分にとって一番大きな石と考え、まとまった時間に優先的に組み入れた。

そのおかげで、保育園に提出する書類作成や歯科健診の予約など小さな用事は、ちょっとした空き時間にあてればいいと考えられるようになった。このとき、「自分にとって重要事項かどうか」という基準で取捨選択していなければ、今の私はないし、こうしてコラムを書くこともなかっただろう。

緊急ではないが重要なこと

『7つの習慣』には「重要度」と「緊急度」によって活動の種類を分ける方法が書かれている。このうちいちばん大事だとされているのが「緊急ではないが重要なこと」。新しいことに挑戦するための準備や計画、人間関係を広げる活動、心身をリラックスさせる活動などがここに入る。

多くの人は「緊急だが重要ではない」とか「緊急でも重要でもない」ことに多くの時間をとられているから、自分を高め、体や環境をメンテナンスする時間を取ることが難しい。子育て中のお母さんは特にそうではないだろうか。でも、時間には限りがあり、一分一秒も無駄にできないと切羽詰っているお母さんたちこそ、時間の価値を知っている。

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たとえば、次々に舞い込むメールの返信は急いだ方がいいのかもしれないけれど、自分にとって本当に重要かどうかは別問題。自分が何を優先すべきか、を軸に考えていくことで、なかなか踏ん切りがつかない私でも、だんだん切り捨てられる力がつき、限られた時間をおのずと上手に使えるようになった。

子育て中は子どもの病気など「緊急で重要なこと」に意識が集中し、次から次へと沸き起こる問題に疲れ果ててしまっていることも多い。だからこそ、「緊急ではないが重要なこと」に早めに手を付け、気持ちの余裕を持ったり、何か起こったときの対応策を考えたりしておくことで、緊急事態に備えることができる。

もし毎日もやもやした気持ちで過ごしているならば、あなたにとっての大きな石は何か考えて、スケジュールの中に優先的に組み込んでみてほしい。

自分にしかできないこと、自分がずっと憧れてきたこと、生きているうちにいつか必ずしたい、と思っていることは何だろうか。「急いでいないけれど大切なこと」を最優先して、自分のために過ごす時間を作ってほしい。

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